News 2002年6月25日 08:21 PM 更新

最強の「妖怪データベース」が登場

1万3000以上の「怪異・妖怪伝承」に関する情報を扱うデータベースが公開された。古くは「カッパ」「天狗」から、現代の「口避け女」や「トイレの花子さん」までさまざまな資料が蓄積されている

 妖怪研究の第一人者として知られる小松和彦教授の監修による「怪異・妖怪伝承データベース」が国際日本文化研究センターのWebサイト上で公開された。「世界の研究者や一般市民に向けて広く情報を公開することが目的。将来的には怪異・妖怪伝承の数量的な把握に基づく分析・研究の活発化が期待される」(同センター)。


怪異・妖怪伝承データベースのトップページ


「カード」形式の検索結果

 このデータベースは、国内各地に伝わる妖怪や怪異現象に関する民族学的情報を集めたもので、登録されている事例は1万3000件以上。小松教授らによる研究成果に加え、竹田旦編の民俗学関係雑誌文献総覧」(国書刊行会、1978)や「日本随筆大成第1期〜第3期」(吉川弘文館、1975-78)などからもデータを採集しており、日本国際文化研究センターでは、「近世から現代の怪異伝承の事例を、幅広く集めることができるのではないか」と話している。なお、小松教授は国際日本文化研究センターの「怪異・妖怪伝承データベース作成委員会」の委員長を努めている。

 怪異・妖怪伝承データベースでは、全文検索、地域別検索、呼称検索、ならびに代表的な怪異・妖怪についてはディレクトリ検索が利用可能。検索結果は、「カード」として表示される。カードには、論文名や話者(引用文献)、ならびにどういった怪異・妖怪なのかについて記載されている。

 例えば、「トイレ 花子さん」で全文検索した場合、論文名は「高校生が知っている不思議な話」、話者は「女子高生」、地域は「栃木県宇都宮市」、ならびに「学校のトイレのドアを開けたまま『花子さん、花子さん、花子さん』と3回呼んで、ロール紙を切って便器に落とし、トイレに水を3回流すと、便器の中から手が出るという」といった要約文が出てくる。なお、データはすべてテキストベースであり、絵画資料は扱っていない(ディレクトリをたどっていくと、妖怪の画像が表示されるがこれは単なるイメージ図)。

 ただ、検索精度については、まだチューンアップの余地がありそうだ(検索システムにはnamazuを使用している)。「砂かけばばあ」で検索してみると、検索結果はゼロ。「砂&ばばあ」でも同様だ。試しに「砂」だけで検索してみると、39件がヒット。その中に、「砂かけばばあー」というのが見つかった。また、「トイレの花子さん」の場合も、「花子さん」で登録されているため、「トイレの花子さん」で検索しても、正しく結果が表示されない。検索結果がゼロでも、すぐに諦めずに、いろいろなパターンを試してみたほうがいいだろう。

 小松教授はこのデータベースについて、Webサイト上で「データは、民俗学関係の雑誌と民俗誌に近い性格をもった随筆類から、体験談もしくは体験談の集積として形成されたと思われる伝承、すなわち“どこそこには妖怪が出る(と伝えられている)”という伝承を拾い集めた。しかしながら、昔話のように、明らかにフィクションと思われる話は除いてあります。昔話のなかの「怪異・妖怪」現象・存在については、このデータべースとは別途に作成する必要がある」と解説している。

関連リンク
▼ 怪異・妖怪伝承データベース

[中村琢磨, ITmedia]

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