News 2002年6月26日 03:48 PM 更新

Microsoftの描く「Tablet PC」導入シナリオは?――TechXNY現地レポート

Tablet PCで何が変わるのだろうか。Microsoft副社長のJeff Raikes氏はTechXNYの基調講演で、Tablet PCがもたらす2000年代のコンピューティング環境と、それに対応したハード・ソフトの一例を紹介した

 11月7日リリースと正式発表されたTablet PCだが、Microsoft副社長のJeff Raikes氏は25日(現地時間)から始まったTechXNYの基調講演で、完成度が高まってきているTablet PCのハードウェアおよびソフトウェアを紹介した。

 正式な発表日を控え、Tablet PCは最終的な仕上げの段階に入っているようだ。同氏の基調講演でも、富士通製のTablet PC「Stylistic ST4000」を用い、大々的に完成度の高さをアピールする予定だったというほどだ。ところが、Tablet PCを完成させていない、ある大手PCベンダーの横やりで、各社横並びの紹介にとどまったのだという。しかし、富士通の関係者によるとハードウェア的には「明日にでも出せる状態」。ちなみに、このStylistic ST4000の開発は、LOOXや薄型ノートPCの開発を担当する日本の部署が担当しているそうだ。


ずらりと並んだTablet PCの中で基調講演を行うMicrosoft副社長、Jeff Raikes氏

2000年代に求められるコンピューティング環境

 Raikes氏はこのTablet PCの導入シナリオについて、同社チーフソフトウェアアーキテクトのBill Gates氏の話す「デジタルディケイド」のストーリーに合わせ、次のように話した。

 「1980年代に個人の生産性向上を目指してパーソナルコンピューティングが始まり、90年代にはネットワークやネットワークアプリケーションの発達で、企業レベルで生産性を向上させる取り組みが行われてきた。これからの新しい時代では、一部のデバイスにデータが孤立しないようにして、基幹業務に直結させるための手段を用意することが必要だ。それには効果的なコラボレーションの手法や、溢れかえる情報と電子メールに疲弊しない、自然なコミュニケーションのための技術開発が求められる」(Raikes氏)。同氏はさらに、複数デバイスを適材適所で使い分けていくために、デバイスや用途ごとに最適化したユーザーインタフェースが必要であることにも言及した。

 また、オフィス環境の変化についても触れ、「企業システムはXML準拠へと急速に移り変わりつつあり、様々な情報を標準的な手法で受け渡すことが可能になってきた。構造化された文書もXMLなら簡単に残せるようになり、オフィスでのペーパーレスも進んでいる。Office XPに付属するSharePoint Team Serviceのような、新しいコラボレーションの形態も形になってきた。個人に必要とされる情報を、きちんと管理・整理して閲覧する環境もある。来年の夏に投入を予定している次期Microsoft Office(Office 11)でも、様々な変化が起こるだろう」と話した。

 現行のOfficeはアドオンパックでTablet PCに対応するが、Office 11ではTablet PCを意識した機能も搭載される。その中に含まれる次期Outlookでは、様々な情報やドキュメントを自動的に整理・分類して表示する機能が組み込まれる。


Office 11の新Outlook。検索機能などが強化されるほか、メッセージ表示などのレイアウトも大きく変わる

 たとえば受信トレイは日付などのパラメータで分類され、返信の必要性に応じてマークが付与されるといったように、メッセージやスケジュールのより進んだ検索や内容要約の機能が提供される。メッセージ表示も、従来のようなテキストエディタやワープロのようなレイアウトではなく、電子ブックリーダのようなイメージで行われるという。

紙と電話は、別のデジタル製品に置き換わる

 Microsoftが言うところのインフォメーションワーカー、つまり情報を元に仕事を進める人たちは「紙とPC画面と電話で仕事をしている。メモを取ったり、紙文書へ直接書き込んだり、手帳に様々な情報をまとめておいたりだ。新しいオフィス環境では、これが別のものに変化していくだろう。そのための新しいプラットフォームがTablet PCだ」(Raikes氏)。

 Tablet PCは一般に、ペンコンピュータそのものを指し示すと考えられがちだが、Raikes氏は用途によって様々な新しい形のPCが考えられることを強調している。例えば、ディスプレイ部にPCを統合し、デスクトップPCのように利用しつつ単体でも機能したり、ノートPCのディスプレイ部を裏返しにしてタブレット型にしたりといった“コンバーチブルタイプ”。あるいは、通常のノートPCディスプレイにデジタイザを付加してタブレット機能も利用可能にするタイプといった具合。フォームファクタにかかわらず、様々な場面でTablet PCの技術を活用できるというわけだ。

 基調講演ではTablet PC対応のアプリケーションソフトについても触れ、昨日紹介したFranklin Coveysのほか、Adobe、Corel、SAP、AutoDeskなどのソフトウェア開発パートナーを紹介した。

 例えばMicrosoft自身の製品では、電子メールに手書きメモを埋め込めるほか、電子ブックリーダの中で手書きのメモをサポートしたり、Internet Explorerで表示中のWebページにメモを書き込んだりといったことができる。また、メモした部分をペンで指定した範囲から切り出し、Webページの中身と一緒にメモを電子メールで配れる。

 またAcrobat用プラグインが提供され、Acrobatのページにタブレットを用いて書き込みを行えるようになる。たとえばPDFで作成されたフォームに対して、手書き認識機能で適切な位置へと必要事項を書き込める。このほか、文書アノテーションツールなども紹介された。


Internet Explorerで表示中のWebページに、手書きでメモを書き込んだところ

[本田雅一, ITmedia]

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