News 2002年7月5日 03:49 PM 更新

デザインと性能は「二律背反」ではない――morph3開発者インタビュー(2/3)


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研究プラットフォーム

古田:受け身をとるときなんかは、この手は0.3秒で収納できる。


この話のときの写真を撮りわすれてしまった。仕方ないので、全身写真から切り抜いたもの。見づらくてごめんなさい。左が収納した状態、右が伸ばした状態

山中:実は、ロボットの手のデザインってのは結構むずかしくて。

 ASIMOなんかには、こういう(自分の指を曲げ伸ばししながら)指がありますよね。だからASIMOは、腕を前でクロスさせるような動作はしない。せいぜいが「拍手」ってこうする(両手をぶつけるところまではいかない)くらい。しない理由は簡単で、うっかりぶつけると折れちゃうから。

ZDNet:(拍手が空振りするポーズで、親指を反対の手の小指にぶつけながら)これで?

山中:そう。そのくらい繊細なんです。でも、そのくらいに作っても何か作業ができるわけじゃない。

 morphは、せめて何かがつかめるようにはしたかったんだけど、でも指を作ると折れちゃう。じゃぁどうしよう。クレーンみたいなぶっとい指にする手もあるけど、そうしなかった。つかめる繊細な指が出て、とっさには握りこめるようにしようと考えた。人間の指は複雑な動きができるから、とっさにグーにできるんだけど、それをするのはそう簡単ではないので、シンプルな握りこみのシステムとして、これを考えた。

古田:(胸の丸いパーツをさして)ここもデザインにみえて、(そのパーツをひねりながら)実はスイッチ。これでメインCPUオン、これでサブCPUオン。もう一回カッチャってやるとモーターまで入っちゃう。

ZDNet:(スイッチを入れると、各関節の辺りが白くゆっくり明滅する。それを見ながら)その光は……

古田:高輝度白色LED。

山中:これがモータの動作状態を示している。こうやってボーっと明滅するのは、正常な動作状態。

古田:つまり、これ(白いプラスチック)は力センサでもありカバーでもあり、そしてインジケータでもある。

ZDNet:素材は何なんですか?

古田:透明なABS(ってものが世の中に存在するんです)に彩色。

山中:実は、もう一色あるんですよ。半透明のライムグリーン。

ZDNet:「Mac Sage」みたいな色?

山中:近いかもしれない。でも、あんなに緑じゃないかな*6

古田:ほかには、これが赤外線の送受信。送受信できるんで、距離がわかったりとか。TVのリモコンになったりとか。


山中:目は、いちおう人工網膜チップっていう名前で売られているモジュールなんですけど、それを左右独立に動けるようにしている。

古田:左右独立だから、左目だけとか動かせる。関節の自由度はこれも含めて全部で30。

 関節っていえば、可動範囲も、morph2より広いんですよ。(手で動かして見ながら)ほら。ほら。ほら。

山中:モータそのものをこれように形を設計したことで自由度があがっているんですね。

古田:ほら。ほら。こんなになっちゃった。


動画のBGMは、あとで出てくるmorphのテーマミュージック。DAJI.Takeuchi氏による「morph is Breathing」だ。

山中:morphのひとつの目標として、「身体のいろんな動きを研究するためのプラットフォームにしたかった」ってのがある。morphをたくさんの研究者に供給して、いろんな動きを研究してもらいたい。だから、研究者が「こうやりたい」って思ったときに、「その動きはちょっとできません」っていうのは、とにかくなくそうと。

古田:ロボットがどこまで動くかということを追求していきたかったんですよね。

山中:およそ人間ができることはなんでもできるようにしたい、って考えていったら、人間ができることよりもできるようになっちゃったんですけど。


*6山中さんは、PowerBook G4を広げて話をされていた。さすがにiMacを例に出しても、すぐにわかってくれた。

[こばやしゆたか, ITmedia]

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