News 2002年7月24日 11:15 PM 更新

自動車の42ボルト化――そのメリットと課題

自動車の電源電圧を42ボルトに上げることで電源不足の解消や省燃費化、高電圧駆動の新機能を付加させようとするトレンドがある。42ボルト化のメリットと課題とは?

 パシフィコ横浜で開催している「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展」で、車両システム電圧の42ボルト化を紹介した「42Vフォーラムコーナー」が話題を集めている。

 1920〜1950年代までは、車載バッテリの電圧は6ボルトだった。この時代の自動車には電装品が少なく、バッテリの用途はヘッドライトやウインカー、始動時のイグニッション用ぐらいだったからだ。しかし、自動車の便利さや快適さ、安全性を追求するに従って電力を使ったパーツ(補機類)が多くなり、1950年代後半から12ボルトへの移行が始まった。それから現在まで50年ほどの間、自動車の電圧は12ボルトで定着している。

 しかし、カーオーディオやカーナビなど電装品はますます増え、ABSなど電子制御システムも標準で装備されるようになった。今や自動車の内部は慢性的な電源不足に陥っている。今後も、自動車のエレクトロニクス化はますます進み、EV(電気自動車)や燃料電池車など次世代自動車では、電力への要求はさらに高まる。

 このような背景から、自動車の電源電圧を現在よりも高くすることが世界各国で研究されてきた。そして安全面などを考慮し、現在の3倍というところで各国のコンセンサスが得られ、車両システム電圧の42ボルト化が動き出したのである。

 ここで「現在の電圧(12ボルト)の3倍なら、36ボルトになるのでは?」と疑問を持たれた読者も多いことだろう。確かに、現在の自動車に搭載されているバッテリの電圧は12ボルトだが、オルタネーター(発電機)から発生する電圧は、実は14ボルトとなっているのだ。そのため、車両の電装システムはすべて14ボルトを基準に作られている。14ボルトの3倍だから「42ボルト」というわけだ。つまり、42ボルト車のバッテリ電圧は36ボルトとなる。


42ボルト車のバッテリ電圧は36ボルト

 42Vフォーラムコーナーのブース担当者に42ボルト化のメリットを聞いた。

 「電圧が高くなれば、これまでエンジンで回転させていたコンプレッサをモーターで回すことができ、省燃費につながるほか、エンジン停止中もエアコンが使えるようになる。また、エンジンのバルブ(弁)を電動で制御できるため、これも省燃費に貢献する。フロントガラスの霜取りも、一瞬に行える。電圧が3倍になれば、オームの法則に従って電流は1/3になるため、モーター類も小型化できる。そのほか、電動ブレーキや電動4輪駆動といったパワーが必要なシステムの実現にも、42ボルト化は必須となる」(ブース担当者)。

 同コーナーでは、さまざまな42ボルト対応部品とともに、トヨタ自動車が昨年8月に発売した世界初の42ボルト車「クラウン マイルド ハイブリッド」が紹介されていた。


世界初の42ボルト車「クラウン マイルド ハイブリッド」

 現在では、42ボルト対応部品がほとんどなく、すべて42ボルト系に置き換えるには、かなりの期間とコストが必要になる。そこでクラウン マイルド ハイブリッドでは、42ボルト化部分を限定して価格上昇を10数万円に抑えながら、約15%の燃費向上やエンジン停止中のエアコン使用など、42ボルト化でユーザーが享受するメリットのいくつかを実現した。従来の14ボルトで駆動する部品も多く残っているため、バッテリは12ボルトタイプと36ボルトタイプの2つを搭載したハイブリッド方式を採用。42ボルト電源から14ボルト電圧を作り出すDC/DCコンバータも装備している。


42ボルト化部分を限定して価格上昇を抑えながら、省燃費やエンジン停止時のエアコン使用などを実現

 42ボルト車は、今後5年以内に普及するといわれているが、トヨタ自動車以外のメーカーは様子見というところが多い。今回出展した自動車メーカーに聞いても「42ボルト対応は検討中」「研究は行っているが実用化は未定」という答えがほとんどだ。メーカーが42ボルト化に消極的な最大の理由は、部品コストの高さ。42ボルト対応の部品が少ない現在は、そのメリットは分かっていてもなかなか踏み切れないというのが現状らしい。また、電圧が上がることによってノイズやアーク放電による火花が発生しやすくなるなど、解決しなければいけない課題も多い。


矢崎総業が出展した、ノイズやアークに強いワイヤハーネス

 「50年に一度の大変革」といわれる車両システム電圧の42ボルト化。これまでの14ボルト系電装品の置き換えで、部品業界の活性化も期待される。また今後、自動車への環境規制が強化されることからも、省燃費につながるこのトレンドは、ゆっくりながらも着実に進んでいくだろう。

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[西坂真人, ITmedia]

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