News 2002年7月26日 11:59 PM 更新

パイオニアに聞く――「Blu-ray Disc」互換の追記型ディスク

次世代大容量光ディスク規格として期待される「Blu-ray Disc」。これまでの技術開発は、書き換え型が中心だったが、パイオニアとTDKが、Blu-ray Disc互換の「追記型ディスク」を開発したと発表した。 パイオニアの開発者に、追記型ディスクの詳細や開発経緯を聞いた

 パイオニアとTDKが、次世代大容量光ディスク規格「Blu-ray Disc」と互換性の高い追記型ディスクを開発したと発表した。 埼玉県鶴ヶ島市にあるパイオニア総合研究所を訪ね、Blu-ray Disc互換追記型ディスクの詳細や開発経緯などについて話を聞いた。

 Blu-ray Disc規格では、CD-RWやDVD-RWのような書き換え型(リライタブル)」の方式が先行して発表された。6月に開示されたBlu-ray Discの規格書でも、書き換え型ディスクを基本としている。CDやDVDなどこれまでの光ディスク方式では、まず再生専用のROMから始まって、追記型、書き換え型と発展していった。それだけに、書き換え型が先行しているBlu-ray Discの流れは、興味深いところだ。

 同社研究開発本部・開発統括部長の横川文彦氏は「書き換え型が先行したのには、2つの理由がある」と語る。


追記型ディスクの開発メンバー。左から開発統括部長の横川文彦氏、第二開発室長の飯田哲哉氏、第二開発室主事の山口政孝氏

 「1つは、技術的に書き換え型が作れる環境にあったということ。CDやDVDの時は、初期段階で書き換え可能なハイパワーのレーザーが開発されていなかったため、ローパワーのレーザーで作れる再生専用機から始まった。一方、Blu-Ray Discは、材料が高温で焼成するということもあって、早い段階で書き換え可能なハイパワーのレーザーを作ることができた」(横川氏)。

 もう1つの理由は、BSデジタルのハイビジョン放送を記録する次世代ビデオ記録メディアの早急な開発が求められていたという背景だ。「BSデジタル放送の記録する場合、送信されてきたデジタルデータをストリームで記録するため、20Gバイト以上の書き換え可能な大容量メディアがどうしても必要だった」(横川氏)。

 来年にも発売されるといわれている第1世代のBlu-ray Disc対応機器は、書き換え型から登場すると見られている。「しかし、第2世代では、Blu-ray Disc対応機器にHDDが搭載され、そこで編集したものをディスクに残したいというニーズがでてくる。そのときは、書き換え型ではなく、追記型が中心になる」(横川氏)。

 メディアのコスト面でも、CDやDVDと同様に追記型が有利だ。

 ディスク開発グループ第二開発室長の飯田哲哉氏は、「追記型の場合、ディスクを形成する層の数が少なくて済むという製造プロセス面のメリットのほかに、複数回の書き込みに耐えなければならない書き換え型に比べて、1回の書き込み(ライトワンス)に対応できればいいため、メディア性能も書き換え型ほどは求められない」と、追記型のコストメリットを語る。

 Blu-ray Discのメディア価格は、今のところ明らかにされていないが、飯田氏によると「現在の記録型DVDと層の数が同じなので、製造工程も同様になり、普及が進めば記録型DVDとほぼ同じぐらいのコストにはできるのでは」とのこと。さらに、Blue-ray Discでの書き換え型と追記型の価格差は、現在のDVD-RWとDVD-Rの関係と同じぐらいになるという。つまり普及が進めば、現在のDVD-Rメディアのように数百円でBlu-ray Discの追記型メディアが手に入る可能性もあるというわけだ。

環境に優しい材料

 一方、開発に当たっては、追記型ディスクならではの使い方を考慮した部分も多いとか。その中でも特に同社が力を注いだのは「環境に優しい材料の選択」だったという。

 「書き換え型メディアには、アンチモン−テルル(Sb−Te)という少々有害な金属が含まれている。これはBlu-ray Discだけでなく、DVD-RAMやDVD-RWも同じ。何度も使える書き換え型は、あまり捨てられることがないためいいのだが、ライトワンスの追記型メディアは、廃棄される可能性が高い。有害な物質を含まない材料を記録層に使うことが、追記型メディアの課題だった」(ディスク開発グループ第二開発室主事の山口政孝氏)。

 今回、同社が発表した追記型ディスクは、有害性のある化学物質の排出を規制する日本の化学物質管理(PRTR)法(=特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)で指定された有害物質を含まない材料(Bi-Ge)で記録層を構成したというのが最大の特徴。「書き込みに失敗しても、安心して捨てられる材料です(笑)」(山口氏)。


追記型ディスクの構造

 他社でも同様の材料でトライしていたが、記録層の組成にたどり着いたメーカーはこれまでなかったという。なぜ同社で実現できたのだろうか。

 「企業秘密ではっきりとはいえないが、これまでDVD-RWで長年培ってきた材料の評価技術によるところが大きい。ある程度いい特性が出た時に、それをもっと伸ばす評価システムが確立している」(山口氏)。

 今回の追記型ディスクは、7月7日に米国ハワイ州で開催された光ディスクの国際学会「ISOM/ODS2002」で発表され、好評を博した。

 「これまで書き込み型中心だったBlu-ray Discの中で、“互換性がある追記型が、もうここまで開発が進んでいるのか”という反応が多かった。ちょうどファミリー規格を作らなければという気運の時期に、こうして発表ができたことは、タイミングとしても良かった。学会レベルで発表できたということは、データ的にもしっかりと裏づけがとれている証拠になり、他メーカーへのアピール度も高い。追記型は今年中にも、規格化への方向性が見えてくるだろう」(横川氏)。

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[西坂真人, ITmedia]

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