News 2002年8月1日 11:53 PM 更新

富士写が新メディアを出す理由

富士写真フイルムが発表したデジタルカメラFinePixシリーズの新製品に、先日発表した注目の新メディア「xD-Picture Card」が採用された。さまざまな規格が競合するデジカメ用小型メモリカード市場に、新しいメディアを投入する理由とは?

 富士写真フイルムは8月1日、デジタルカメラFinePixシリーズの新製品「FinePix A202」「同A303」「同S304」を発表した(スペックの詳細は別記事を参照)。注目は、先日発表した「xD-Picture Card」をメディアに採用している点だ。


新メディア「xD-Picture Card」

 既報の通り、xD-Picture Cardは、同社とオリンパス光学工業が共同で開発したデジタルカメラ用小型メモリカード。20×25×1.7ミリで重さ2グラムと、デジタルカメラ用記録メディアとしては最小サイズだ。切手サイズで売り出したSDメモリーカードよりも、さらに一回り小さい。


SDメモリーカードよりも、さらに一回り小さい


 同社はデジタルカメラ用メモリカードにスマートメディアを採用してきた。対応デジカメの第1弾は、1996年7月に発売した“クリップ・イット”「DS-7」。電子映像事業部営業部長の青木良和氏は当時を振り返り、「DS-7が発売した時のスマートメディアの価格は、2Mバイトで5800円だったが、現在では128Mバイトが8000円ちょっとで買える。この6年でメディアの価格は1/30になった」と語る。

 現在スマートメディアをメインに使用している主なデジカメメーカーは、同社とオリンパス光学工業ぐらいだ。しかし、デジカメ販売台数トップ3の常連であるこの2社で、国内シェアは4割近くになる。コストも順調に下がり、デジカメの3台に1台は使用しているという“普及メディア”を、なぜ今になって変えようというのか。

 「デジカメ本体の小型化の流れに、スマートメディアがついていけなかった」と青木氏は語る。

 スマートメディアの大きさは45×37×0.76ミリ。厚さは、デジカメ用記録メディアの中で最も薄いのだが、表面積の広さはそのままメディアスロットの大きさに反映してしまう。手のひらサイズのコンパクトデジカメが売れ筋となっている現在では、いくら薄くてもメディアスロットが大きくなってしまうのは致命的なのだ。

 「デジカメの小型化とともに、メディアスロットはデジカメ本体の中でも大きな面積を占めるパーツになっていた。スマートメディアに、デジカメ小型化の限界を感じた」(青木氏)。


メディアスロットの大きさの違い

 ただ、表面積の小さな小型メディアには、SDメモリーカード(MMC)やメモリースティック(Duo)がある。これら既出のメディアを選ばずに、あえて新メディアを立ち上げたのはなぜだろうか。

 「他のメディアも候補に上がったが、これまでスマートメディアが求め続けたコスト面のメリットが見出せなかった。コスト最優先で考えた結果、新メディアを作ることになった。xD-Picture Cardは、スマートメディアと同様のコストで生産できる」(青木氏)。

 同社では、昨年の秋からxD-Picture Cardの開発を始めた。新メディアは、サイズが小さいだけでなく、読み出し毎秒5Mバイト/書き込み毎秒3Mバイト(64Mバイトタイプ以上)とデータ転送速度も確保。消費電力も25ミリワットと省電力設計で、多層化技術の採用により、ギガバイトクラスまで大容量化できるという。スマートメディアは、その薄さから多層構造での大容量化に限界があった。

 xD-Picture Cardは、まず16Mバイト、32Mバイト、64Mバイト、128Mバイトの4タイプを発売。今年12月に256Mバイト、2002年度(2003年3月末)までに512Mバイトを予定している。「2004年以降にギガバイト化を行う。将来的には8Gバイトタイプまで大容量化が可能」(同社)。


xD-Picture Cardの容量ロードマップ

 大幅なサイズダウンと大容量化を実現したxD-Picture Cardだが、基本的な構造はスマートメディアと同じだ。コントローラを持たず、セキュリティ機能はメディアに記録されたID情報のみで、他の小型メディアのような著作権保護機能もない。ただ、そのシンプルな構造ゆえに、コストダウンも他メディアより容易に行える。

 「厳重な著作権保護機能やセキュリティ機能を付加して価格を上げてしまうよりも、その分できるだけメディア価格を安くしようとした」(同社)。つまり、同社が考える小型メディアは、あくまでも「デジカメの記録媒体」なのだ。そのため、せっかく切手サイズ以下の小ささにしても、メモリースティックDuoのように携帯電話のメディアとしての使い方は「現在のところ、検討していない」(同社)という。

 新メディアの投入により、スマートメディアはその役割を終える。メディアの移行期は両方のメディアを出していくが、将来的には新メディアに統一していく構えだ。

 もっとも、いささか心配なことも。今回の新製品発表は、デジカメよりも新メディアに注目が集まっていた。にもかかわらず、約1時間に及んだ発表会のうち、目新しいトピックスがあまりないデジカメの機能紹介に50分を費やし、肝心の新メディアについては、青木氏からの5分ほどの説明で終わってしまったのだ。当然、記者たちからの質問は、新メディアに集中したが、そのQ&Aセッションもわずか5分で終了してしまった。これでは「本当に新メディアを普及させる気があるのだろうか」という疑問を持たれても、仕方ないのではないだろうか。

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[西坂真人, ITmedia]

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