News 2002年8月27日 11:59 PM 更新

っぽいかもしれない
ROBO-ONEでホビイストの底力を感じた(決勝編)(4/4)


前のページ

準決勝

【第1試合】R-BlueIV対Metallic Fighter

 両者とも、何度でも起き上がれるタイプのロボットだ。だから、もう最初から分かっていることなんだけど、どちらかにトラブルが発生しない限りは、この戦いには決着はつかない。0対0のまま審査に持ち込まれる――というのが必然である。

 この試合も、両者が礼をするところから始まる。美しい。


   第1ラウンド。R-BlueIVは勝手に転んでしまう(が起きる)。床が思ったより滑りやすいのだろうか。

 第2ラウンド。お互いにしゃがんだままでの攻撃になるが、決定打は奪えない。しびれを切らしたMetallic Fighterが立ち上がるが、前のめりに倒れる。Metallic Fighterは「自分で転べる」という“技”も持っているので、もしかすると“浴びせ倒し”を狙ったのかもしれないが、効果なく単独ダウン。しかしすぐに起き上がる。その後は決定打なく試合終了。


動画はこちら(2Mバイト)

 第3ラウンド。またもや、お互いにしゃがんでの攻撃。R-BlueIVはパンチの反動を利用して自分の向きを変えるという技を使って、有利なポジショニングをキープしつつ試合を運んだが、決定打はなし。Metallic Fighterは腕を広げての連続パンチ(いわゆる“だだっこ攻撃”だ)を繰り出すが、こちらもダウンは奪えない。


動画はこちら(664Kバイト)

 第4ラウンド。このラウンドは、お互いの攻撃が噛み合わない。Metallic Fighterは、いきなり試合中に片足立ちをするというパフォーマンスを見せる(操作ミスだろうけど)。R-BlueIVには絶好のチャンスだったのだが、ちょうどこのとき、R-BlueIVは後ろを向いてしまっていたため、攻撃が出せない。逆に背中から攻撃されてダウンしてしまう。もちろん起き上がるのだが。


動画はこちら(1.8Mバイト)

 第5ラウンド。R-BlueIVのサーボに微妙なトラブルがあったのかもしれない。自分で勝手に2度も転んでしまう。そのたびに起き上がるが、このラウンドも、両者あまり絡み合わないままラウンド終了。

 審査の結果は、3対2でMetallic Fighter。やはりR-BlueIVは転びすぎた。「打倒吉村」とまで言われたR-BlueIVだが、第1回大会に続いて準決勝で敗退。試合後に話を伺ったのだけど、今回は、起き上がるということに重点をかけた結果、身体が軽くなり、パンチなどのパワーが減少してしまったということだ。リングが滑ったこともあるけど、パンチを打っても相手が重たいと自分のほうが下がってしまうという状況も、確かに見られた。設計のバランスというのは難しいようだ。

【第2試合】HSWR-01対ガングー1

 久しぶりに、サイズの違うロボットの戦いだ。いくらガングー1のパンチがリーチがあるといっても、物理的にでかい相手だとやっぱり不利になる。しかも、HSWR-01が下向きに打つパンチがちょうどガングー1の頭にあたる高さになるのだ。

 しかし、ガングー1も高い機動力を活かして慎重に間合いをキープしながら、なかなか有効打を許さない。第1、第2ラウンドはドロー。そして第3ラウンド、意を決して飛び込んで行くところにHSWR-01のパンチが決まる。というより、相手の背後から手前に倒す“はたきこみ”のような形になる。ついにガングー1ダウンだ。


動画はこちら(616Kバイト)

 第4ラウンドは、ガングー1のパンチが相手の膝に絡みついてダウンを奪ったかに見えたのだけど、そのまま自分も一緒に倒れてしまいダブルノックアウト。


動画はこちら(468Kバイト)

 第5ラウンドはお互いに有効打がなく、ラウンド1対0、審査5対0でHSWR-01の勝利。やはり大きいのは有利か。

3位決定戦

R-BlueIV対ガングー1

 どうもR-BlueIVは調子が悪い。自分で勝手に転んでしまう場面がさらに目立つようになってきた。もちろん、大きな攻撃をしようとして失敗する場合もあるのだけど、そうではなくて勝手に転ぶケースも増えてくる。一方、ガングー1は安定している。R-BlueIVに間合いを詰めさせない。もっとも、有効な攻撃を相手に与えることもできないのだが。


動画はこちら(440Kバイト)

 ラウンド0対0のまま、審査に持ち込まれた。結果5対0でR-BlueIV。5対0というのはちょっと意外だった(わたしはガングー1有利と見ていたのだ)。おそらく、デモンストレーションがR-BlueIVのほうが派手だったことが大きかったのだろうが、ガングー1も堅実ないいロボットだったのだが(と、ちょっとひいき)。

^

決勝戦

Metallic Fighter対HSWR-01

 また、サイズの異なるマシン同士の戦いだ。といっても、Metallic Fighterはいくらでも起き上がれるマシンである。大きいだけで勝てる相手ではない。

 第1ラウンド。終了間際にMetallic Fighterがダウン。直後に終了のブザーがなる。今までだと、この場合には起き上がれるまで待っていたのだけど、今回レフェリーはここでタイムアップと判断。ドローにしてしまった。ちょっと整合性に欠けるやりかたになったけど、Metallic Fighterが起き上がれるということが、それだけみんなに知れわたっていたということかもしれない。

 第2ラウンドは様子をうかがうようなラウンド。お互い有効なパンチも出さないまま終了。

 そして、第3ラウンド。22秒にHSWR-01の左ストレートがMetallic Fighterの顎(あご)に入る。Metallic Fighterダウン。しかし、すぐに起き上がる。今度は40秒、Metallic Fighterが相手に身体をあずけるようにしてダウンを奪う。自分は倒れていない。後ろ向きに倒れるHSWR-01。こちらは起き上がる技はない。ついにMetallic Fighterがラウンドを奪った。


動画はこちら(1.5Mバイト)。ただ、この決定的な瞬間が微妙にフレームアウトしてしまった。すみません。わたしは試合に集中しちゃってたみたいだ

 第4ラウンドは再びこう着状態。HSWR-01には、心配されたダウンの影響もなさそうだ。

 そして運命の第5ラウンド。開始直後、HSWR-01は崩れるようにして倒れてしまう。


動画はこちら(276Kバイト)

 「何があったんだ?」といぶかしむ観客に、HSWR-01の中村さんの説明が入った。「バッテリー切れです」。

 STEP1など強敵との戦いを勝ち上がってきたHSWR-01には、もうバッテリーの残りがなかったのだ。もちろん、予備のバッテリーも用意してきたし充電器も持ってきた。それでも間に合わなくなるだけの熱戦をくぐりぬけてきたのだ。観客から大きな拍手が寄せられた。このとき、もう一度、力石徹の影が見えたような気がした。

 というわけで、ラウンド2対0、審査5対0でMetallic Fighterが勝利。第2回チャンピオンに輝いた。作者の森永さんがご自身のサイトでこう振り返っている。「やるだけやったら、結果がついてきた」。いい言葉である。おめでとうございます。

レベルの高さを再確認

 今回の大会を振り返ってみると、予選、決勝リーグを通じて、現場での調整時間というのがほとんどなかったということが印象的だった。第1回大会のときは、現場に来て、「動かないぞっ!」て慌てて調整するケースが見られたのだけど、今度はそれがほとんどなかった。見ている側からすれば、興奮が冷めることもなく、面白い大会だったに違いない。

 ヘビー級対決のSTEP1対HSWR-01こそ、さすがに調整時間が何回か取られたが、それは見ている側にも納得のいく状況だ。全体のレベルが上がってきているというのは、こういうところに表われるのだ。

 ルールについては、もはや現行ルールは、トレンドに合わなくなっていることがはっきりしてきた。R-BlueIV対Metallic Fighterのように、原理的に決着のつかない試合というのが出てきてしまったのだ。

 ダウンの回数に制限を設ける、あるいはダウンしている相手を起き上がれないようにすることもありにする(寝技だ)というような改革が必要だろう。

 また、ラウンドの時間も短すぎる。2台のロボットが両側から近寄って最初のパンチを繰り出すまでで、半分くらいの時間が使われてしまう。「ここから面白くなりそうなのに」というところで、終了ブザーが鳴るのはもったいない。ダウンなどが入るとさらにカウントの時間を費やしてしまうし。もっと長くしてほしい(でも、そうするとHSWR-01のようなバッテリーの悲劇がおきやすくなるという問題もある。痛し痒し)。

 第3回大会は、来年2月にまた日本科学未来館で開かれることが予定されてる。すでに、次の戦いは始まっているのだ。

関連記事
▼ っぽいかもしれない:ROBO-ONEでホビイストの底力を感じた(予選編)

[こばやしゆたか, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページ | 4/4 | 最初のページ