News 2002年9月5日 11:59 PM 更新

次世代光ディスクの現状 第2回
青紫色レーザーも問題ない? 製品化に向け進むBlu-ray Disc

ライセンス供与も間もなく始まるBlu-ray Disc。課題とされる青紫色レーザーの開発も実用上、問題のないレベルに来ているという。ソニー・BD開発部門3部 統括部長の山上保氏に話を聞いた

 既に規格化の終わった「Blu-ray Disc」は、6月14日からInformation Agreement契約に基づく規格の開示が始まり、ライセンスの供与も近く始まる予定だ。また、7月に開催された光ディスクおよび光メモリの国際会議「ISOM/ODS 2002」で、再生専用ディスク用の量産技術をターゲットとしたとみられる研究成果や、ライトワンスディスク、高速化などの発表が相次ぐなど、次のステップへと移行を始めているようだ。

 このBlu-ray Disc規格について、ソニー・AV/IT開発本部 BD開発部門3部 統括部長の山上保氏は次のように語る。「各社が自分たちはこんなことをやりたいといって、それをどんどん押し出していくと、色々なフォーマットが生まれ、ユーザーメリットとは反対の方向に行ってしまう。そのことはみんながよく分かっている。だから、ベースとなるものがほとんど同じなら、一緒にやりましょう、というのが、各社が集まってこの規格を開発した動機だ」。

 今回規格化が行われた書き換え型のフォーマット(規格書の表紙には、「Blu-ray Disc Rewritable Format」と記載されているようだ)では、規格はDVD規格同様に、物理フォーマット、論理(ファイルシステム)フォーマット、アプリケーション(Audio Visual)フォーマットの3つのブックに分けられ、コピーコントロール技術についても別途規定されている。

 その特長の一端について、コアメンバーの1社であるソニーでは、「モチベーション的には、規格を混乱させないようにして、互換性を含めユーザーにとって使いやすくしようというのが根底にある。それから、ディスクの特性を全面的に生かしたものを設計しようという点もある。たとえば、書き換え型という点もそうだし、編集性やアクセス性などについてもディスクの良いところを全面的に押し出すようにした」と話す。

 また、実際に使用されるアプリケーションについても、「DVD-RWやDVD-RAMでは、ファイルシステムを含めビデオフォーマットやビデオレコーディングフォーマットなどいろいろなものできてしまい混乱した。もちろん、今回は(その学習を踏まえ)そういったことを招かないようにしている」(山上氏)という。

 DVD規格は、CD規格のように1つの幹から枝葉上に様々な規格が追加されていない分、確かにすっきりした規格となっている。しかし、再生専用の規格が策定された後に追加されたアプリケーションフォーマットは採用するファイルシステムが異なったり、同じ映像用のアプリケーションフォーマットでも、再生用と録画用で仕様が異なったりするなど、ユーザーからみると分かりにくい点が多いのも事実だ。加えてDVD+RW/R規格まで登場したことが、それをいっそう難しいものにしてしまっている。Blu-ray Discでは、こういった反省点を生かし、より便利で分かりやすいものを設計したというわけだ。

 さらにもう1点、Blu-ray Discでは、著作権保護機能にユニークなIDを使用することが公表されている。それについて山上氏は、「ユニークなIDとは、『背番号』のようなものと考えてほしい」という。「著作権保護の仕組みとしては、これを使った今までにないものを考えた。もちろん、それによって、現状のものより高度な著作権保護ができる。また、それ以外にこの仕組みはアプリケーションに利用することもできる。例えば、機器とメディアの両方がこれを持っていれば、互いに認証しあっていろいろなことができるかもしれない」(同氏)。

 メディアやドライブにIDを使用するものには、現状でもDVD-Audioで採用されたCPPM(Content Protection for Prerecorded Media)や、記録型DVDで採用されたCPRM(Content Protection for Recordable Media)などのコピーコントロール技術がある。ID付きスマートメディアやSDカードなどのメモリーカードなどでも同じような仕組みが採用されている。だが、これらは、いずれも基本的な用途はコピーコントロールを行うためのものであったし、実際にそれ以外の目的では、ほとんど使用されていない。

 Blu-ray Discでは、当初から、メディアだけでなくドライブに1つ1つ異なるユニークなIDを採用し、これを著作権保護以外にも積極的に利用できるようになっているわけだ。もちろん実際にこの機能が使用されるかどうかは現時点では分からない。だが、それを利用できる仕組みが準備されている以上、使用するアプリケーション次第で様々な機能やサービスを実装できることは間違いない。

青紫色レーザーも実用上問題ない?

 「青紫色レーザーは、現状では、赤のハイパワーレーザーが出てきたよりもスペック的にはもつはずだ。壊れるというのは、ハンドリングの問題。きちんと扱えば、赤と同じようにちゃんと扱える」(山上氏)。

 次世代光ディスク規格では、青紫色レーザーの開発の遅れが問題視されることが多い。しかし、製品の開発を行っているソニーでは、レーザーの寿命も問題ないレベルにきているという。レーザーも製品化に向け急ピッチで開発が進んでいるという状況と考えても間違いないようだ。

 また、青紫色レーザーの開発という点については、日亜化学が、自社ですべての開発/提供を行うという当初の路線に修正を加え、ライセンスを他のメーカーに提供するようになったという点も追い風になる。ライセンス提供によって、1社で開発するよりも、開発のスピードが速くなるだけでなく、製品の安定供給という点についても大きなメリットが得られるからだ。日亜化学にまず安定してレーザーを作ってもらい、特許等の条件が整った段階で自社製のレーザーを使っていくというのが同社の戦略のようだ。

 ISOM/ODSでは、さらに次のステップ向けての研究成果も多く発表されている。例えば、再生専用ディスク向けにも使用することができるマスタリング技術などである。

 ソニーでは、従来では高いクリーン度を要求されるEBマスタリング(エレクトロンビームマスタリング)において、「局部的」な真空状態でディスクのカッティングできるものや、青紫色レーザーと開口数0.95の対物レンズを使用し、特殊なフォトレジストを使ってマスタリングを行う技術なども発表している。もちろん、これは、Blu-ray Discでも使用できるもので、いずれも再生専用メディアのマスタリング向けの技術である。

 他のメーカーからは、Blu-ray Discと同じ405nmの青紫色レーザーを使用した2層記録における研究成果や書き換え型のメディアによる高速書き込みの研究成果、ライトワンスディスクによる書き込みの研究成果なども各社から発表された。ソニーでは、次世代向けの小型ピックアップの開発成果も発表されている。Blu-ray Discは、まさに製品化に向け着々と準備を整えつつあるようだ。



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[北川達也, ITmedia]

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