News:ニュース速報 2002年9月6日 09:15 PM 更新

「地上波デジタルへの国費投入に反対」 識者が表明

2003年の開始を予定している地上波デジタル放送について、約1800億円に上る国費の投入に識者が反対する声明をネット上で発表、賛同者を募っている

 2003年の開始を予定している地上波デジタル放送について、約1800億円に上る国費の投入に識者が反対する声明をネット上で発表、賛同者を募っている。

 声明を発表したのは、独立行政法人の経済産業研究所の池田信夫・上席研究員と東京大学大学院経済学研究科の奥野正寛教授、スタンフォード大学日本センターの安延申教授、アスキー元社長で尚美学園大学教授の西和彦氏ら。

 声明では以下のように主張している。

(1) 先行スタートしたBSデジタル放送の低迷からも分かるように、デジタル放送には需要がない

(2) 携帯電話や無線インターネットの進歩で電波の帯域不足が深刻化する中、デジタル放送を優遇した上で国費で営業補償をするのは法の下の平等に反する

(3) 投入する国費の財源は主として携帯電話ユーザーから徴収する電波利用料であり、不公正

(4) 銀行への公的資金注入を強く批判した新聞・TVが国費投入について論評しないのは、自ら政府に補助を求める立場だからだ。政府によるNHK・民放への事実上の出資は、放送法が定めた放送の不偏不党原則に反し、民主主義の根幹を揺るがす

(5) HDTV放送を全国一律に行う必要はなく、アナアナ変換しなくてもデジタル化は可能

 また数万円で済む高速無線LAN基地局から高品質な動画を配信できるまでに技術が進歩しており、巨額の国費を投入してまでデジタル放送化する必要はないとも主張。放送事業者が自力でデジタル放送に移行することは不可能ではなく、「自己責任で事業化できないなら、地上波デジタル放送はやめるべき」としている。

 地上波デジタル放送は2003年のスタートが計画されているが、放送に使用する電波がUHF帯に移行する。UHF帯は一部地方で密集しており、デジタル化に備えて既存局の周波数を変更してデジタル放送のために周波数を空ける必要がある。

 アナログからアナログへ変換するため「アナアナ変換」と呼ばれており、対象となる視聴者宅のアンテナの方向やTVの設定変更の作業を国費で負担する。当初は約700億円を見込んでいたが、今年7月になって試算額が約1800億円にふくらんだ。総務省は全額負担する方針を表明している。

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