News 2002年9月13日 04:40 PM 更新

Tablet PCでオレもマンガ家デビュー!(1/3)

「Tablet PC、何に使うんだ?」と首をかしげてるそこのあなた、Tablet PCから誕生した傑作マンガ「ZDちゃん」を読めば考えが変わるかも!

 マイクロソフトの「Tablet PC」が11月上旬以降、日本でも発売される。「またペンコンピュータか」と無関心なアナタ、Tablet PCが無味乾燥な人生を一変させるかもしれません──天才Gates氏もたぶん考えが及ばなかったTablet PCの裏キラーアプリ、「マンガ」。超先端デバイスを日本のオタクがどう使うか、見せてやろうじゃないですか!


ソーテックのTablet PC試作機と、「また一歩、野望に近づいた!」の名文句でマンガ家志望者のバイブルとなった「サルでも描けるまんが教室」(小学館)

決定的な筆圧感知

 既に繰り返されている通り、新OS「Windows XP Tablet PC Edition」を搭載したTablet PCの最大の特徴は、液晶ディスプレイを使った手書き入力機能だ。手書き文字認識やノートソフト「Windows Journal」と組み合わせたメモ機能などは、ITを活用しているナレッジワーカーの生産性を高めるに違いない。

 しかしTablet PCに熱い視線を注いでるのはそんな「廊下ウォリアー」(マイクロソフトのガイドブックより)だけではないのだ。先日、Tablet PC日本語版の発表会が開かれたが、ここで対応を表明したソフト会社の名前──アドビシステムズ、コーレル、セルシス──にアンテナが反応した読者も多いだろう。「Photoshop」「Painter」「ComicStudio」。PCでマンガを描くITな作家にとってはなじみ深いソフトベンダーだ(ただしコーレルはPainterがTablet PCに正式対応するとは特に言っていない。procreateサイトにも情報がない)。

 Tablet PCとマンガに何の関係があるのか。両者を結びつけるのは、筆圧も感知する「電磁誘導式デジタイザ」だ。

 マンガの画材と言えば紙と黒インク、つけペンと決まっている。だがこれらをPCに完全リプレースする作家も増えてきている。この場合、ペンに当たるのはワコム製品に代表される筆圧感知式ペンタブレットだ。


ワコム製ペンタブレット「intuos2」。1024段階で筆圧を感知する

 普段は何気なく読んでいるマンガをよく見てほしい。例えば人物の髪の毛の線などは、始まりは細く、そして緩やかに幅を増し、最後にまた針のように細くなって終わっているのが分かるだろう。線の始まりは「入り」、終わりは「抜き」と呼ぶ。描き手であれば誰もがそこに心を砕く、線画の美しさを決定づける重要な要素のひとつなのだ。


入って抜く、基本中の基本

 PC上で「抜き」を考えた場合、例えば5ピクセルのブラシが、書き手が力を抜くに従って線が徐々に細くなり、終端は1ピクセルで終わる、といった具合になる。これを実現するには、入力デバイスが本物のペンと同じように描き手の筆圧を認識できなくてはならない。もちろんマウスでは「押した/押してない」としか認識できず、PCでマンガや絵を描くクリエイターにとって筆圧感知式ペンタブレットが不可欠なのはこのためだ。


筆圧で線が変化する。この当たり前の事実が文字に人間味を加えている

 ただ一般的なペンタブレットの場合、ディスプレイを見ながら手元のタブレットで絵を描くというスタイルになる。紙を見ながら描くという方法に子どもの頃から慣れきってしまっている以上、ペンタブレットを使うには頭の切り替えと熟練が必要となる。「慣れればこれが一番やりやすい」という描き手もいる一方、どうしても体に合わずにPCで絵を描くのをあきらめた人も多い。

 紙とペンを“完全に”PCに置き換える──この理想を実現するには、ディスプレイ表面に直接ペンデバイスで描ける機構があればいい。だが従来の感圧式タッチパネルで本格的な絵を描くのは難しかった。タッチパネルはマウスと同様、「押した/押してない」しか感知できず、筆圧は認識しないからだ。

 そしてワコムの「Cintiq」シリーズやソニー「バイオLX」に付属するディスプレイが、この理想を実現するほぼ唯一のデバイスとなる。Cintiqは液晶ディスプレイに512段階の筆圧感知式ペンタブレットが組み込まれたものと考えればいい。マンガと比べはるかにデジタル化が進んでいるアニメーション制作の現場で導入例が増えている。


15型のCintiq。1024×768ピクセル表示に対応し、512段階の筆圧感知機能を備える

 しかし一般ユーザーが液晶タブレットの導入を考える際、最大のネックとなるのはその価格だ。15型Cintiqのメーカー価格は19万8000円。実に一般的な15型ディスプレイの3台分以上だ。18型に至っては実売が40万円近くという“業務用”価格に跳ね上がる。

 そこに登場したのが、筆圧感知式液晶タブレットを装備したTablet PCだ。「従来のペンコンピュータと違う」というTablet PCのキモは筆圧感知機能。そしてこれはほとんどがワコム製なのだ。その分通常のノートPCと比べて高価になると予想されているが、「液晶タブレットを買うとノートPCも付いてくる」と考えれば、液晶タブレットの購入にちゅうちょしていたユーザーも踏ん切りがつきやすいだろう。またクリエイティブ環境がモバイル化されて持ち運べる点も魅力的だ。

 ではTablet PCの液晶タブレット部は本当に実用になるのだろうか? というか、これで本当にマンガが描けるの?──まずは疑問を解消すべく、編集部に届いたTablet PC試作機を使って挑戦してみた。

[小林伸也, ITmedia]

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