News 2002年10月16日 05:13 PM 更新

記録型DVDの「マルチ化」は本当に必要なのか?(1/2)

DVD Multi規格に対応したドライブや、DVD-R/RWとDVD+R/RWに対応したデュアル規格ドライブが登場し話題になっている。とりあえず便利なのは間違いない。しかし、ユーザーが必要としているのは、本当にこうしたドライブなのだろうか?

 記録型DVDの規格は、DVD-R/RW/RAMとDVD+R/RWの計5種類もの規格があり、激烈な主導権争いを繰り広げている。どの規格が主流になるのか――という点については、まだ先が見えていない。

 このため、各社ではDVD Multi規格への対応やDVD-R/RWとDVD+R/RWの両規格への対応など、できるだけ多くの規格に対応する“マルチ化”が1つのトレンドになりつつある。

 言うまでもなくこれは、ユーザーの利便性を向上させ、その安心感を引き出すためだ。

 例えば、DVD Multi対応ドライブなら、DVD-R/RW/RAMのDVDフォーラムで規格化されたすべての記録型DVD規格に対応する。これによって、少なくとも国内で市販されている民生用のDVDレコーダのすべてに対応できる。つまり、DVD Multi対応ドライブなら、レコーダで記録した映像をPC上で編集し、DVD-Videoを作成するといった「PCとレコーダの連携」を簡単に実現できるのだ。

 また、DVD-R/RWとDVD+R/RWの4つの規格に対応するドライブは、DVD-RAM以外のすべてに対応する。これは、特にオーサリングを主な用途としているユーザーには、魅力的な製品になるだろう。互換性が高いDVD-R/+Rのライトワンスメディアと、より汎用的に使用できるDVD-RW/+RWのリライタブルメディアの中から、価格や書き込みスピード、利便性などの点で自分に適したメディア(規格)を、ユーザーは選択する「自由」が得られるからだ。加えて、DVDフォーラムとDVD+RWアライアンスの推す規格のどちらが主流になっても大丈夫という安心感がある。

 しかし、実際にマルチ化されたドライブを使用していると、あらゆるユーザーにとって本当に便利な製品なのか、と考えさせられることも少なくない。それは次のような点からだ。

規格のしがらみがかえってあだになる

 いろいろある記録型DVDの規格だが、その特性からみると、市販のDVDとの互換性を追及したオーサリング用途向けの“DVD-R/+R”、その汎用性を高め、何度も書き換え可能なバージョンとして使用できる“DVD-RW/+RW”、ランダムアクセスライトに優れ、本格的なストレージとして設計された“DVD-RAM”――の3種類しか存在していない。

 そして、これが重要なのだが、DVD-RとDVD+R、DVD-RWとDVD+RWは、大変よく似ているばかりか、機能的にほぼ同じことが実現できる。つまり、DVD-R/RWでできることは、DVD+R/RWでもできるし、その逆も言えるのだ。

 これは、DVD規格が、物理、論理、アプリケーションの3つの規格から成り立っていることにも由来する。いわゆる記録型DVDの規格は、この点からみると、あくまで“物理的”な規格であって、論理/アプリケーションフォーマットではない。

 このため、ドライブの機能から言えば、DVD+RWに「DVD-Video Recording Format」を実装可能だし、逆にDVD-RWに「DVD+Video Recording Format」を実装することもできる。物理規格がどうのと言わなければ、やろうと思えば同じアプリケーションを実装することだってできるのだ。

 ここで問題となるのが、DVDレコーダだ。例えば、ソニーはDVD-RW/+RW両対応のレコーダの販売を予定しているが、この製品は、DVD-RWメディアを使用した場合は、DVD-VideoまたはDVD-Video Recording Formatで記録でき、DVD+RWメディアを使用した場合は、DVD+Video Recording Formatのみが使用できる、といった具合になると見られている。

 これは果たして便利なのだろうか。……と言うのは、こういう機能の実装をしてしまうと、ユーザーはほとんど同じような機能を持つDVD-RWとDVD+RWという2種類のメディアの特性を理解し、使い分ける必要が出てきてしまうからだ。さもないと、DVD-Video互換を保ったまま編集できると思って入れたメディアが、実は編集できなかったりする、ということが起きてしまう可能性がある。

 その上、DVD-RWとDVD+RWのメディアは、見た目上はほとんど同じだ。レーベルを良く見ない限り、見た目でパッと判断することはできない。実使用上、これが混乱を引き起こす可能性は否定できないだろう。

ソフトの対応の遅れが混乱に拍車をかける?

 同じような問題が、マルチ化されたPC用の記録型DVDドライブでも起きる。

[北川達也, ITmedia]

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