News | 2002年10月25日 11:59 PM 更新 |
ブロードバンド環境の普及が目覚しいが、一方でその高速インフラを有効に生かしたリッチコンテンツは少なく、またコンテンツビジネス自体も未成熟だ。
10月25日に行われたビジュアリゼーションカンファレンスで、デジタルハリウッド研究所の深野暁雄氏が、Web3Dを中心としたリッチコンテンツの事例や今後の展望を語った。
「12Mbpsのブロードバンドサービスが3000円台で提供されている日本は、世界的に見てもインフラが整っている方なのだが、肝心のユーザーがリッチコンテンツの必要性を感じていない。圧倒的なメリットが見えない現状では、今後、サービス解約といったの恐れもあるのでは」と深野氏は警鐘を鳴らす。
リッチコンテンツのニーズがない原因の1つには、ブロードバンドの切り札と言われながら利用者が増えない動画コンテンツの問題があると深野氏は指摘する。
「現在のインフラでは、アクセスが集中した場合の動画の品質維持が難しい。また、PC画面という動画を閲覧するには窮屈な環境では、ユーザーの集中力は15分ぐらいしかもたない。そのほか、コンテンツ製作者の支援制度が確立されていない点や著作権をどうするかなど、問題は山積している」(深野氏)。
動画コンテンツが低迷する中、Web3Dを使ったコンテンツは今年に入って大きく増加し、ビジネスモデルとしても確立しつつある。Web3Dとは、Webブラウザ上で3Dオブジェクトをインタラクティブに利用する技術で、表示されたオブジェクトを自由に回転・拡大・縮小させたり、アニメーションにすることができる。
深野氏はWeb3Dのメリットとして、「立体での視点移動による分かりやすさ」「特殊なサーバが必要なく、動画に比べて圧倒的に軽い」「バイナリー化した3Dオブジェクトによってコンテンツを暗号化でき、著作権問題がクリアしやすい」などを挙げる。
「Web3Dを活用してAIBO購入時のカラーバリエーションが選べるというカスタマイズサービスが始まるなど、BTOというWeb3Dならではの企画も始まった。1999年には1ケタだったWeb3Dのコンテンツが、今年に入って毎週2-3コンテンツというペースになっている。また、Web3Dの世界は、掲載する企業、プラグインメーカー、Web3D制作プロダクションという3者によるライセンスビジネスが確立しているのも魅力」(深野氏)。
Web3Dは今後、どのように進化・発展していくのだろうか。
深野氏は、AIBOやSNOOPYといった最近発表された3Dエージェントの例を挙げ、「Web3Dによるキャラクターエージェントが、インターネット上の氾濫する情報をサポートしてくれる時代になる。今後は、このようなキャラクタWeb3Dに注目して欲しい」と語る。
このようなリッチコンテンツがビジネスとして成り立つためには、課金システム作りが重要となる。深野氏は「コンテンツ課金の仕組みは韓国に学べ」と訴える。
「韓国では、大統領の政策として失業者のネットカフェ(PC房)利用援助や安価な国民向けPCの販売、学校と親が一体になってのIT教育、ITベンチャーへの支援などを行っている。課金システムでは、電話料金にコンテンツ代を上乗せするARS入金が一般的になっている。ユーザーは韓国版住基ネット(国民登録番号)を使って個人認証を行い、コンテンツ決済を行っている。日本でも、住基ネットをコンテンツ課金に利用できるようなシステム作りを行政に望む」(深野氏)。
[西坂真人, ITmedia]
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