News 2002年10月28日 11:19 AM 更新

プリンタの「写真画質」を使いこなす 第3回
デジカメ画像の印刷――ディスプレイで色合わせするためのノウハウ(1/4)

今回はディスプレイ表示を基準にして色味を合わせつつ、プリンタに出力するための基本ノウハウを紹介しよう。使うソフトは「Adobe Photoshop Elements 2.0」。各社のプリンタドライバに合わせるコツについても説明する

 先週予告した通り、今週は「Adobe Photoshop Elements 2.0」でデジタルカメラ画像をディスプレイを基準にして色味を合わせつつ、プリンタに出力するためのノウハウを紹介することにしよう。ただし、今回紹介する方法は最もシンプルな手法であるため、以下の点に注意してほしい。

  • sRGB外の色域データは失われる
  • 色味が合う度合いはプリンタの忠実度によって異なる
  • あらかじめディスプレイのキャリブレーションを行い、ガンマ値や色温度を調整するユーティリティが実行されている必要がある

 sRGB外の色域データが失われる点については、これまでにも実際のデジタルカメラ画像の中には、それほど多くの色域外データがあるわけではないと述べていたが、実際に鮮やかな海、空、森などを表現するためには、sRGB外の色も必要になってくる。

 しかしエプソン製、キヤノン製のプリンタには、sRGB画像を入力すると、上記のようなシーンでsRGB外の色で印刷されるようなチューニングが施されている(例:EPSON Natural Photo Color)。そこで今回は、ディスプレイでは確認できないsRGB外の色域を使わないことにした。

 またコンシューマー向けカラープリンタは、デフォルトでsRGBデータが入力されることを期待したチューニングになっているが、どれだけ忠実にsRGBを再現するかはプリンタによって異なる。例えばエプソン製ドライバには、デフォルトの [ドライバによる色調整] 以外にsRGBモードが設定されている。キヤノン製ドライバもsRGBを入力しても自動調整にするだけでは、トーンカーブがうまく合わない。これについてはプリンタメーカーごとに、合わせるためのコツがあるので、記事の最後で紹介することにしよう。

 最後にディスプレイのキャリブレーションだが、今回、作業の基本となるPhotoshop Elementsには「Adobe Gamma」というキャリブレートを行うためのユーティリティが付属しているので、それを利用するといいだろう。また2Dの色再現を重視したディスプレイカードの中には、キャリブレーションを行うユーティリティがあらかじめバンドルされている場合がある(例 : Matrox Perhelia)。

Photoshop Elementsのカラーモード

 Photoshop Elementsは1.0、2.0、双方ともに [編集] − [カラー設定...] から設定できる3つのカラーモードがある。1つは [カラーマネージメントを行わない] 、もう1つは [限定的なカラーマネジメント(Webに最適)] 、最後に [完全なカラーマネジメント(印刷に最適)] だ。それぞれのモードの違いをかいつまんで説明しよう。

  [カラーマネージメントを行わない] に設定すると、Photoshop Elementsは読み込んだ画像をそのまま画面上に出力する。このため、ディスプレイカードの信号が正しい状態であれば、画像を見ているディスプレイの色特性がそのまま画像の色特性となる。また印刷時にも色の変換は行われない。

 ディスプレイはおおむねsRGBに近い特性を持っているため、画面上で色味を見てそのまま出力すれば色が合うことになるが、先週述べたように“なんとなく”合うだけなので、ディスプレイの種類(CRTかLCDか)やメーカー、調整具合によってズレが生じる。

 Photoshop Elementsには、ディスプレイの色特性を持つ画像を色変換し、sRGBで出力する機能もあるが、将来的にディスプレイを買い換えるなどした場合に、せっかく調整した画像が新しいディスプレイで望むような色で見えない可能性がある。

  [印刷に最適] に設定すると、編集データの色空間はデフォルトで(ヘルプファイルには書かれていないが)Adobe RGBに設定される。画面表示はCMS(Color Matching Sysytem)エンジンを通してディスプレイの特性に変換され、正しい色味で表示される。また印刷時には同じくCMSエンジンを通し、指定した色特性(もちろんsRGBも含む)のデータへと変換可能だ。しかも、Adobe RGBは一般的なCMYKで表現できる色域をおおむねカバーする広さがあるため、印刷をきれいに行うには最適なモードというわけだ。

 しかし、ここには重要な落とし穴が一点だけある。

 このモードではICCプロファイルが埋め込まれた画像を読み込む場合、そのICCプロファイルに準ずる形で表示や印刷のプロセスが実行される(Adobe RGBに自動的に変換されることもなく、色も合う)が、プロファイルなしの画像を読み込むと確認を行わないままAdobe RGBの画像として扱ってしまう。ところがデジタルカメラの画像には一部プロ向けの機種を除き、ICCプロファイルなど添付されていない。多くのデジタルカメラはプロファイルなしsRGB画像なので、そのまま [印刷に最適] に設定した状態で読み込むと、本来の色よりもずっと派手な、正しくない色になってしまう。

  [印刷に最適] モードを活かす手法もあるが、基礎編では [Webに最適] モードで作業を進めることにしたい。

[本田雅一, ITmedia]

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