News 2002年10月31日 06:02 AM 更新

40インチで100ワットも視野に――プラズマディスプレイの「可能性」

大画面ディスプレイの本命とも言われるプラズマディスプレイ。課題は価格と消費電力にあるとされる。果たして近い将来、ブレークスルーは期待できるのだろうか

 「PDPは、昨年末から急激に市場が立ち上がり、ワールドカップでピークを迎え、販売台数が減るのではないかと言われた。しかし、その後も順調に出荷を伸ばしている。DVDを使ったホームシアターも売れている」。


「大型テレビ市場を高画質、高性能で先行し続けるカラーPDP」と題した講演を行ったパイオニア HEC ディスプレイ事業統括部 技術統括部 佐藤陽一氏

 「LCD/PDP International 2002」のセミナーで講演したパイオニアの佐藤陽一氏は、PDPの現状をこう話した。

 PDP(プラズマディスプレイ)は、40インチ以上の大画面と“高精細”な映像がユーザーに受け入れられ、昨年末から今年にかけて売れ行きを大きく伸ばした。もちろん、その背景には、ワールドカップ需要があったことは間違いない。しかし、ワールドカップ以降も順調に出荷台数を伸ばしているところを見ると、この需要は決して一時的なものではなかったようだ。

 佐藤氏によると「来年末には民生用で130万台ぐらいの販売が見込まれ、2003−4年にかけてヨーロッパでも市場が立ち上がるだろう」という。

 また、PDPがヒットした理由について、佐藤氏は「(ワールドカップの)店頭デモでPDPが使用され、ハイビジョン放送の臨場感をアピールできたからではないか」と分析。PDP市場の急激な立ち上がりが、「高精細、大画面というPDPの特徴がうまくアピールできたからだ」とする。

 確かに、日本は、視野角やコントラストなどの画質にこだわるユーザーが多い。PDP――特に初期の製品では、そういった画質に対する不満は多かった。しかし、各社では、その問題を世代を経るたびに克服。現在の製品では、40インチ以上の大画面の製品でも、満足のいく画質を実現していると言ってよい。

 パイオニアでも、PDPに適した画像処理エンジンを開発。ワッフルリブ/ディープワッフルリブ方式などの発光効率を向上させる技術や、擬似輪郭などの動画ノイズなどもクリア駆動/スムースクリア駆動などの技術も開発した。これらの技術を採用することによって画質の問題点などをクリアし、同時に消費電力も削減させてきている。同社によると、「発光効率は年率25%ぐらい向上し、消費電力は年率10%の低下。部品点数も初代の製品と比較すると40%ほど削減している」(佐藤氏)という。

「課題は消費電力と価格」は本当か?

 PDPは、実売価格で40インチクラスの製品が、70万円ぐらいしており、決して安価なものではない。加えて、消費電力が300ワット以上もある。このため、PDPというとどうしても課題は、価格と消費電力というイメージが強い。しかし、佐藤氏は、価格は別にして、消費電力は「単位面積あたりの消費電力は、すでに液晶と同レベル」と話す。

 実際、スペック表などを見比べてみると50インチのPDPの消費電力は380ワット(パイオニア製品の場合)。一方、30インチの液晶ディスプレイは135ワット程度である。これを表示面積あたりの消費電力に換算すると、50インチのPDPは1平方センチあたり「0.0558ワット」で、液晶ディスプレイは「0.0545ワット」となる。単位面積あたりの消費電力は、同程度まできているわけだ。しかし、PDPの場合、最終的な消費電力が大きいため、家庭で使用するには、やはり電気食いに見えてしまうのは事実だ。

 この点について佐藤氏は、「発光効率の向上などによって、“40型で100ワット”の超低消費電力の実現も視野に入ってきた」とし、消費電力削減のめども立っていると話す。また、実際の使用時では、PDPは、すべてを「白」で表示すると確かに高い消費電力が必要になるが、「黒」を表示する場合は、半分ぐらいの消費電力に落ちるという特性がある。このため、「常に同じ電力を消費する液晶ディスプレイよりも、動画平均では低くなる」ともいう。

 ただし、価格については、まだ課題も多いようだ。というのは、PDPは、売れてきているとはいっても、まだ、各社が手探りで開発を行っている段階。液晶ディスプレイのように製造方法が確立されているわけはない。このため、画質向上の手法なども各社よってさまざまなものが考案され、採用されているという状況だ。「液晶ディスプレイのように思い切って投資するということは、怖くてできない。当社でも、徐々にという感じで設備投資を行っている」(佐藤氏)。



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[北川達也, ITmedia]

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