News 2002年11月8日 01:36 PM 更新

松下電器に聞く「記録型DVD、今後の展開」(1/2)

高速化と多機能化に加え、実売価格も低下。いよいよ本格的な普及期に入りそうな記録型DVDドライブ。この分野でトップクラスの販売実績を持つ松下電器産業に、12月投入の新製品の特徴や、今後の展開についてうかがった

 PC用の記録型DVDドライブは、業界関係者の期待の大きさとは裏腹に伸び悩んできた。しかし、DVD-Multi規格やデュアル規格、実売3万円を切る安価な4倍速書き込み対応ドライブなどが登場。いずれも大きな話題を呼んでいる。記録型DVDのマーケットは冬のボーナス商戦を控え、まさにブレーク寸前と言えそうな状況だ。

 そんな中、松下電器産業は12月にDVD-Multi規格対応ドライブ「LD-D521JD」の出荷を始める。この製品の開発意図や今後の展開などについて、同社に話を聞いた。

「マルチ化することでお客様の混乱を緩和したい」

 松下電器産業が、12月に発売するPC用の記録型DVDドライブ「LF-D521JD」は、「DVD-BunnerII」や「RAMBO2」と呼ばれていたDVD-Multi規格対応の製品。DVD-RAMとDVD-Rは2倍速、DVD-RWは1倍速の速度で記録を行うことができ、“カートリッジ”付きのDVD-RAMメディアにも対応する。加えてCD-R/RW機能も搭載という“スーパーコンボドライブ”だ。


まもなく出荷が始まるスーパーコンボドライブ「LF-D521JD」(写真中央)。左は外付型の「LF-D560JD」

 この製品の企画意図について、同社ホームAVビジネスユニット DVD-RAMドライブカテゴリーのカテゴリーオーナーである岡崎之則参事は、「CD-R/RW機能を付けた製品が欲しいという要望が多かったこと。加えて、DVDフォーラムで決めたフォーマットを全部サポートすることで(複数規格林立による)お客様の混乱を少しでも緩和したかったことがある」と話す。

 確かに、現在の記録型DVDは、DVDフォーラムだけでDVD-R/RW/RAMの3種類。それにDVDアライアンスのDVD+R/RWを加えると、都合5種類もの規格がある。その上、国内の民生用のDVDレコーダの分野でも、DVD-RAM/RレコーダとDVD-R/RWレコーダの2種類が販売されている。ユーザーとしては、“規格の種類”が多いだけでなく、“製品の種類”まで多すぎ、購入時に迷ってしまいかねない。

 LF-D521JDのようなDVD-Multi規格対応ドライブの良さは、まさにこういった点にある。この製品なら、後からDVD-RAM/RまたはDVD-R/RWのいずれのレコーダを購入しても、リード/ライトの互換性が取れるからだ。後から、DVDレコーダを購入したいと考えているユーザーなら、どう転んでも“ハズレ”がないというわけだ。

 また、新たにサポートされたCD-R/RW機能については、同社では次のように説明する。「前作LF-D321JDは、すでにPCにCD-R/RWドライブが標準搭載されているという“前提”のもとに、それに追加するドライブという位置付けで設計した」(AVCネットワーク事業グループ 開発営業グループ 主事 長谷川正二氏)。しかし、CD-R/RWは、FDDの代わりとして使用されており、現在では“必須”の機能となっている。「特にPCメーカーからのCD-R/RW機能の実装に対する要望が多く寄せられた。今後は、DVD-Multiを含めCD-R/RW機能を組み込んだスーパーマルチを推進していく」(岡崎氏)。

「DVDレコーダとの連携で、AVとPCの融合を目指す」

 松下電器産業では、前作LF-D321JD発売以来、一貫して提案し続けていることがある。それは、PCとAVの“融合”だ。

 「我々としては、マルチを出すことで、PCでもAVでも一番使いやすい環境の商品を展開していきたい」と岡崎氏は話し、中でも、急成長している民生機のDVDレコーダとの連携をうまくやって、「より使いやすい環境をPCで提供していき、PCで作ったものが民生機でも使えるような環境を実現したい。今後も我々は、PC-AVの連携の中で、マルチを成長させて行きたい」(岡崎氏)という。

 加えて、岡崎氏は、PCの将来における使われ方とアプリケーション像を、次のように分析する。

 「PCは、今後もCPUスペックは上がり続け、メモリやHDDもどんどん大容量化する。そうなると従来のデータ中心のアプリケーションから動画中心のアプリケーションに移行していくはず。また、インターネットのブロードバンド環境がどんどん普及していくと、音楽なども入ってくる。そうした中で、(PCの中で閉じるのではなく)民生機との連携をとった形のPCでのアプリケーションが望まれてくるでしょう」。

 確かに、PCは家電に近付きつつある。最近では、TVチューナーキャプチャカードを搭載したPCも一般的になり、一部では、ハードウェアMPEG2キャプチャ機能を搭載するHDDレコーダ顔負けの製品まである。PCは、当初のビジネス中心のアプリケーションから、家庭で使用するホビー向けアプリケーションへと移行しているのだ。

 加えて、現在のPCに搭載されているCPUやHDD、メモリなどといった構成部品は、一般のビジネスアプリケーションでは、“オーバースペック”と言っても過言ではない域に達している。一般ユーザーであれば、MPEGエンコードや映像編集、ゲームなどの用途以外にこれほどのスペックは必要ないだろう。こういったことを考えても、PCは、岡崎氏の言うように今後は、PCと民生機(家電)との連携が重要になってくることは間違いない。

 LF-D521JDには、こうした構想のもと、「より使いやすくしたAV/PC連携のソフトウェアを付け、従来は入れてなかったようなアプリケーションなども付属する」(岡崎氏)という。

[北川達也, ITmedia]

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