News 2002年11月20日 05:33 AM 更新

“信頼性の実現”は、Microsoftの「10年計画」(1/2)

MicrosoftはCOMDEX開催中のラスベガスで海外プレス向けのラウンドテーブルを実施。その中で最も強調されたのは、「信頼性の高いコンピュータ環境」についての取り組みである。Palladiumなどのセキュリティの新技術は、同社の全体戦略の中でどう位置づけられているのだろうか

 Microsoftは米ラスベガスで開催中の「COMDEX/Fall 2002」に併せ、米国外のプレスを対象に一連のラウンドテーブルを実施している。そのテーマは多岐にわたっているが、中でも最も力を注いで紹介しているのが、Trustworthy Computing、すなわち信頼性の高いコンピュータ環境についての同社に取り組みについてである。

Trustworthy Computing構想の実現には10年の時が必要

 多くの技術者は現在のコンピュータが、さまざまな面で高い信頼性を得るために必要な要素をすべてカバーしていないと考えている。これは何もMicrosoftだけの話ではない。例えば、Trustworthyの1要素であるセキュリティに関して、WindowsがLinuxになったとしても、本質的にセキュリティ問題が起こる確率が変化するわけではないという報告が最近は目立つようになった(オープンソースOSに関しては、セキュリティそのものの高低よりも、問題発見後の対処方法の違いの方が、意味的には大きい)。

 Microsoft CTOのCraig Mundie氏は「Microsoftはこの問題に対して長期計画で取り組んでいる」と話す。Mundie氏のプレゼンテーションによると、MicrosoftがTrustworthy Computingに関して取り組みを始めたのは、Bill Gates氏がDigital Decadeビジョンを考えた2001年にさかのぼる。Gates氏が元になる考え方を起案し、腰を落ち着けて取り組みを開始。その成果はWindows XP SP1、Windows.NET Serverなどに反映され、今後の製品へと徐々に組み込まれていくという。この作業をMundie氏は、「Designed for Trust」と呼んでいた。つまり、個々の表層的な設計変更により、信頼性を高めようと言うアプローチである。


Microsoft CTOのCraig Mundie氏

 この取り組みは継続されるものの、その次段階としてOSレベルで信頼性向上に取り組んだ製品を登場させる。その最初のプロダクトが次世代Windows XPのLonghornであり、OSレベルでサポートされるデジタル著作権管理機能(DRM)や将来のWindowsに組み込まれるセキュリティ技術のPalladiumだ。Mundie氏はこれを「Architected for Trust」と呼ぶ。つまり、信頼性向上のための構造を組み込むアプローチということだ。

 これらすべてが揃い始めるのが2004年ぐらいのことで、徐々に新しい技術を投入していくことで、2010年までにはTrustworthy Computingを完全に実現させていきたいとしている。この時期(のセキュリティの状態)をMundie氏は「Invisible」と呼んでいる。つまり、信頼性にたいする問題をユーザーが意識しなくなってこそ、Trustworthy Computingの取り組みが成功した、と言えるわけだ。

便利さとTrustworthy Computing

 そもそもTrustworthy Computingに関して、これほどMicrosoftが真剣になるのはなぜなのだろうか? もちろん、それが必要なことだからだが、外部に対してこの機能を強くプロモートする理由は、同社のDigital Decade構想にとって非常に重要な役割を担っているからだ。

 コンピュータネットワークでのコミュニケーションを、より活発なものにし、家庭の中で行われている様々なことをデジタル技術で置き換えていくためには、ユーザーから(Invisibleになるほど)完全な信頼性を得る必要がある。これは企業向けでなく、個人や家庭での利用についても同じだ。またネットワークへの接続による危険性増大だけでなく、将来のPCの発展のためにも重要である。

 例えばセキュリティの確保されていないコンピュータを使って、大切な資産管理を行ったり、銀行口座へのアクセスを行ったりは誰もしたくない。また家庭でのデジタル技術の応用を考えると、コンテンツ提供者が安心して映像や音楽などのコンテンツを流通させるインフラを作らねばならない。現在のコンピュータは、多くの著作権保有者から「著作権を無視して複製を作り出す機械」と認識されている。そのような無秩序な世界では、コンテンツビジネスそのものが成り立たない

 現在流通している映像や音楽がコンピュータネットワークで流れるようになるためには、安心してデジタルコンテンツを流通させられるプラットフォームでなければならない。MicrosoftがTrustworthy Computingの取り組みの中で、DRM技術とセキュリティ技術をセットで話すのはそのためだろう。完全なセキュリティ技術を確立できれば、複製や視聴期間をコントロール可能で、それを破ることができない強固なDRMのインフラを構築できる。

[本田雅一, ITmedia]

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