News 2002年11月22日 10:03 AM 更新

次世代Crusoeのパフォーマンスは本物か(1/2)

Transmetaが次世代256ビットCrusoe“Astro”のデモを行っている。これを見る限り、Astroのパフォーマンスは、Pentium 4も目じゃないというほどの驚異的なものだ。ここまで高速化された理由は?

 TransmetaがCOMDEX/Fall 2002会場近くのホテルにおいて、次世代の256ビットCrusoe、コードネーム「Astro」、製品名「TM8000」のデモンストレーションを行っている(11月20日の発表記事)。

 試作機は撮影も禁止され、細かいコンフィギュレーションも明かされていない。だが、ひとつだけ言えることがある。公式の出荷時期が来年の第3四半期であるにも関わらず、現時点でも期待を超えるパフォーマンスを発揮していることだ。

 実はダブルブッキングで時間調整が行えず、社長兼CEOのPerry氏とCTOのDitzel氏のインタビューを行えなかったが、「インタビューの時間が合わなくても、デモだけは見て欲しい」とTransmetaの担当者に引き留められた。「それだけ絶対の自信があるから」というのがその理由だ。

モバイルPentium 4/1.8GHz-Mとの競争にも圧勝

 TM8000搭載のデモ用試作機は、ソニー製のVAIOノートGR(モバイルPentium 4/1.8GHz-M)と並べられ、アプリケーションの起動速度や実際の動作レスポンスを実際に比較できるようになっていた。

 デモ用に数MバイトのWordファイルを開くテストや、6MバイトのPowerPointファイルを開き、それをサムネイル表示するテストなどが行われたが、TM8000はすべてのテストで圧倒的な勝利を収める。少しばかり高速というのではなく、体感的には2倍以上の速度で動作するのだ(特にPowerPointのサムネイル表示は速く感じる)。

 もちろん、こうしたテストは何らかのカラクリがあることも懸念しなければならない。たとえばハードディスクやグラフィックチップに大きな差があるとか、メモリ容量の差や特別なクロック周波数で動かしている可能性などだ。

 ところが、比較対象のVAIOノートGRには512Mバイトのメモリが搭載されているのに対して、TM8000試作機のは256Mバイトしか搭載されていない。また、試作機に使われているTM8000はファーストシリコンから取れたもので、しかも、製造パートナーのTSMCはIntelよりもずっとクロック周波数の低いチップしか作った経験がない。加えて、ファーストシリコンということで、CMS(Code Morphing Software : x86コードをCrusoeネイティブの命令に翻訳するエミュレーションソフトウェア)のチューニングも進められていない。

 そんな悪条件の中で、あきらかに高速に動作するのだから、来年の第3四半期に登場する時、かなり高いパフォーマンスを得られるようになることは間違いなさそうだ。

 なにしろ、体感的にはデスクトップPC向けのオーバー2GHzのPentium 4よりも速いと、その場にいた記者3人全員が感じるほどのパフォーマンスなのだ。体感速度が即ベンチマーク結果に反映されるわけではない(Crusoeは原理的にベンチマークが遅くなりがち)が、今回のデモで使われたTM8000試作機が登場すれば、熱くならないがパフォーマンスは不十分というCrusoeの市場でのイメージは一新されるだろう。

まだまだパフォーマンスは上がる?

 高速化された理由は現時点では想像するほかないが、単にVLIW命令が4命令分の128ビットから8命令分の256ビットになったこと以上に、様々な工夫がされているようだ。数字の上では、最大の同時並列実行命令数が2倍にしかなっていない。常識的にはせいぜい1.5倍ほど命令が流れてくれれば成功と言える。ところが(クロック周波数が不明とは言え)TM8000試作機は明らかにそれよりも速い。

 命令語長が2倍になったことに伴い、キャッシュメモリが少なくとも2倍程度にはなっていると考えられることや、メモリコントローラ周りの改善、HyperTransportの採用など、プロセッサコア以外に改善されていると推測されるポイントがいくつもある。

 しかし、元々のプロセッサコアのアーキテクチャやCMSの設計に、相当な手が加わっていなければ、ここまでうまく速度は向上しないだろう。

[本田雅一, ITmedia]

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