News 2002年11月28日 11:46 AM 更新

「顔」認識の可能性――NEC研究者に聞く(1/2)

顔認識は既に普及している指紋認証に比べ、現状では精度の点で劣る。にもかかわらず、各社が顔認識システムの開発を積極的に進めているのはなぜか。顔認識にはどんな可能性があり、その普及にはどんな課題があるのだろうか?

 本人認証に人間の身体的特徴を使う生体認証は、本人へのなりすましが困難なことから、より確実なセキュリティ手段として最近注目を集めている。この生体認証の手段として現時点で最も普及しているのは指紋認証だが、最近各社が力を入れているのが顔認識だ(11月27日の記事参照)。

 しかし、「万人不同」「終生不変」とされる指紋認識に対し、顔認識は識別の難しさに加え、年による変化などもあり、認証手段としては決して扱いやすいものではない。先月NECが発表した顔認識システム「NeoFace(ネオフェイス)」は、PCで利用できるレベルの顔認識システムとしては、最も高いクラスのマッチング精度を実現しているが、それでもイコールエラーレート(EER)は「1%」。つまり、100人に1人は間違えてしまう(等しくならない)計算だ(10月17日の記事参照

 顔認識は、認証精度の面では、少なくとも現状では指紋にかなわない。にもかかわらず、顔認証システムの開発を積極的に進めているのはなぜか。メーカーの研究者はそこにどんな可能性を見出そうとしているのだろうか。

ユーザーの負担の低さ、がメリット

 NeoFaceを開発したNEC マルチメディア研究所の佐藤敦氏(メディア情報 主任研究員、理学博士)が顔を使うメリットとして挙げるのは、「非接触」であることだ。「指紋は薄くなって機械に通らないという人もいる。このため、性能はよいが、使えないこともある。その点、顔は非接触なのでユーザーに負担をかけない。本人に悟られることなく取ることができるというメリットもある」。

 その上、日本人には「指紋の採取=犯罪者」というイメージがあるためか、指紋の採取(指の接触)自体に嫌悪感を示す人まである。一般の人を対象にした個人認証に使うには、こうした点から難しい。

 これに対し、NeoFaceの場合、CCDカメラで撮影した「顔画像」を認識に使うので、情報を取る側、取られる側双方にとって負担が小さい。また、データベースから“似た顔”の人の候補を検索するといった、本人認証以外の使い方もでき、幅広い用途での利用が考えられるという。


NeoFaceを開発したNEC マルチメディア研究所の佐藤敦氏

10年ぐらい前から研究していた顔認識システム

 佐藤氏によると、NECでは顔認識システムの研究は「10年ぐらい前から研究所でやっていた」という。ただし、その際使っていたのは「2D/3D」と呼ばれる方式。

 この2D/3Dという方式は、2次元の画像同士を照合するNeoFaceと違い、3次元で照合を行うのが特徴だった。これは2次元では照合精度の問題があったからだ。「指紋なら、押してしまえば2次元ですが、顔は3次元。照明や姿勢が変わることによっていろいろ画像が変化します。単なる(2次元の)画像でのマッチングは(照合精度をあげることが)難しいという課題があることがわかっていました」(佐藤氏)。

 2D/3Dでは人の顔の3次元形状を測定する「レンジファインダー」と呼ばれる専用の機器を使用、人の顔を本当に“3次元”で測定した。「顔の表面状で、照明などによってどういうふうに画素が変化するかというのを検証することによって、かなり高い(認識)性能を出すことができた」という。

 だが問題もあった。2D/3D方式では、レンジファインダーという特別な機器が必要で、普通のカメラは使えなかったからだ。そこで、「普通のカメラで撮影しても使える顔照合は作れないかということで、2D/2Dの画像ベースのマッチングを行うNaoFaceの開発を1年ぐらい前から立ち上げた」(佐藤氏)。

 言い換えればNeoFaceは約1年という短期間で開発できたことになるが、これはもちろん「2D/3Dの開発によって蓄積されたノウハウなどがあった」(同氏)からだ。だが、その開発は簡単だったわけではない。

 「当初は2D/3Dをどこまで使うかというのはあまり考えず、画像ベースでどこまでできるかということを考えました。しかし、やってみるとどうしても環境の変動に弱い。なかなか性能が上がりませんでした。そこで、画像を分割してマッチングするとか、3次元の情報を組み込んだ。これでやっと性能があがってきました」(佐藤氏)。

 この話からも分かるように、NeoFaceには2D/3Dの技術が応用されている。「NaoFaceは、画像対画像なんですが、顔向きに強くする、つまり、顔がどっちに向いているかによらない認証をするために、2D/3Dの技術をある程度使用してます」(同氏)。2次元の画像をある程度、3次元的に処理。内部でエミューレートして正面ではない顔を作ったりして照合精度を上げているのだという。

画像対画像でどうやって認識を行うか

 当然の話だが、画像はたくさんあればあるだけ、情報量が増えるので、精度も向上する。だが、「そうしなくても、1枚の画像でも精度が上げられないか」という方向で開発していると佐藤氏は話す。そのためには、システムでは非常に高度な処理が必要になる。

[北川達也, ITmedia]

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