News 2002年12月5日 05:08 PM 更新

どうなる次世代光ディスク 第4回
NECは、なぜ東芝と“組んだ”のか?(2/3)


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 福地氏は、NECの当時の次世代光ディスクへの取り組みについてこう話す。実は、NECの光ディスクの研究はかなり以前より行われており、赤色レーザーを使用した研究も長く続けられていた。

 その1つが、NECが以前提唱したDVDと同じ波長650ナノメートルの赤色レーザーを使用したMMVFである。MMVFは、対応レコーダも発売され、DVDよりも記録容量が多いことから、発表時には話題になったことを覚えている方も多いはずだ。同社はその後も研究を続け、「1999年頃には、赤でも10Gバイトの記録容量が実現できることを確認していた」(福地氏)という。

 これは、NECが、交換機などを手がける大手通信機器メーカーという側面ももち、“信号処理”というテクノロジーに長けたメーカーであったからだ。

 「NECでは“信号処理”技術を10年以上前から相当強化していました。これを光ディスクに使用することで、赤でも10Gバイト行くはずだといって、実際にドライブを作りそれを実証しました。当然、(青紫色レーザーに変更すれば)20Gバイト以上ができることは分かっていました」(福地氏)。

 福地氏が言うように、DVDと同じ赤色レーザーで10Gバイトの記録容量が実現できれば、青紫色レーザーという、より短い波長のレーザーを使用するだけで、記録マークの微細化によって約2.5倍の容量を稼ぎ出すことが可能だ。

 一方で、NECでは、対物レンズの開口数が0.85の研究も行っていた。「1999年にソニーが0.85という流れを作っていますから、これについても検討していました。当社では、0.85なら30Gバイトは間違いなくいく、35Gバイトもできるということを確認しました」(福地氏)。

 ここまでくれば、当然、後はこれをどうするかという議論が出てくる。「この2つをどういう形にするか。やはり、基本的にはいずれか1つにしたいなと考えていました」(福地氏)。

NECはなぜ対物レンズ「0.65」を選んだのか

 「2月にBlu-ray Discが発表され、レコーダを0.85でやるという話が出たとき、私たちがまず思ったのは、『え、レコーダーだけ?』ということでした。私たちの視点から言うと、世の中、もうそういう時代じゃないんじゃないかと」。

 福地氏によれば、これが、NECが対物レンズに「0.65」を採用した規格を東芝とDVDフォーラムに共同提案した理由の1つだったという。これは、いうまでもなく、次世代光ディスクの使い方が、AV用レコーダという1つの領域にとどまらないことが既に分かっていたからだ。

 「ベータとVHSが戦っていた1970年代は、パソコン市場はなく、AVしかありませんでした。しかし、現時点でみたら、パソコンの市場は1億数千万台。一方のAVは、ワールドワイドでみても5000万台ぐらい。過去においては、確かにテープしかなかったが、今は“テープ”がある、“HDD”がある、“光ディスク”がある。そういう時代です。なぜ、レコーダだけなんでしょう?」(福地氏)。

 当然だが、NECでは、色々な議論がなされたという。

[北川達也, ITmedia]

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