News 2002年12月10日 11:44 PM 更新

“ロボット研究所”が成果を公開――産総研「オープンハウス2002」(1/3)

産業技術総合研究所の知能研究部門が研究成果の展示会を実施。“肉体労働系パトレイバー”や癒しロボット“パロ”などが紹介された

 産業技術総合研究所(産総研)は12月10日、茨城県つくば市の研究拠点「つくばセンター」で日頃の研究成果を紹介する展示会「オープンハウス2002」を開催した。

 今回、最新の研究成果を展示したのは、産総研の知能システム研究部門。この部門は国家プロジェクトや産官学連携で、ヒューマノイドや人間共存型ロボット、防災ロボット、ウェアラブルインタフェース、ITシステムの知能化といった研究を進めている。つまり、ある意味「国家公認の“ロボット研究所”」的存在なのだ。

 産総研は、旧通産省(経済産業省)の傘下で研究を進めていた施設が省庁再編に伴って集結し、2001年4月から「独立行政法人」として設立した。そのため、経済産業行政を支える国の研究開発プロジェクトとともに、独立行政法人の立場から産官学共同研究を推進し、企業への技術移転や受託研究を積極的に進めている。

“肉体労働系パトレイバー”の最終成果機は「ウイングがポイント」

 今回の展示会の目玉は、昨日発表されたヒューマノイド型ロボット「HRP-2“Promet”」。経済産業省の「人間協調・共存型ロボットシステムの研究開発」に基づき、川田工業と産総研などが共同で開発した産官連携のプロジェクトだ。今年3月にプロトタイプが発表されていたが、今回発表のものは軽量化や歩行機能の強化などが図られた「最終成果機」となっている。


川田工業と共同開発したヒューマノイド型ロボット「HRP-2」(右)とプロトタイプ(左)。中央奥に見えるのは、壱号機(HRP-1)

 ヒューマノイド型ロボットでは、本田技研工業の「ASIMO」の知名度が高いが、ASIMOが“人間のパートナー”という位置付けなのに対して、HRP-2は人間との屋外共同作業などを行う“肉体労働系”ロボットを目指しているのが特徴。展示会では、川田工業本社で昨日公開されたのと同様に、建築資材を運んで建てつけるまでを人間と共同で作業するデモンストレーションが行われた。


人間と共同で肉体労働作業を行うHRP-2。後ろのハンガーは倒れた時の安全対策で、つながれているのはただのヒモ。実際には自分の足だけで歩行可能

 ASIMOとの大きな違いは、そのスタイルだ。ASIMOが背中に機器を内蔵した“大きなランドセル”を背負っているのに対して、HRP-2は高密度実装技術を駆使して人間型のボディにバッテリーを含むすべての機器を収めている。

 さらに、今回の最終成果機は、「パトレイバー」のメカニカルデザインで知られる出渕裕氏をデザイナーに起用。見事に出渕ワールドが表現されている。「頭部に取り付けられたウイングは、出渕氏のデザインの“こだわり”で、機能上はあまり意味のないもの。だが、このウイング1つでスマートなイメージになるから不思議だ」(産総研)。


最終成果機は「パトレイバー」のメカニカルデザインで知られる出渕裕氏を起用

 ASIMOにできなくてHRP-2ができることには、倒れた状態から起き上がれる動作がある。今回はビデオでしか見られなかったが、転んでも起き上がれることが人間との共同作業では重要という。


今回はビデオ上映だけだった起き上がり動作

 「ASIMOのようにランドセルを背負っていると、後ろに倒れた時に“裏返されたカメ”のようになって起き上がれなくなる。ボディ内に機器を収めることは作業をする上でも重要」(川田工業)。

[西坂真人, ITmedia]

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