News 2002年12月12日 09:59 PM 更新

あなたのまわりに“Microsoft inside”――SPOTを“読む”(1/2)

さまざまな家電製品に“賢さ”を導入するというMicrosoftのSPOT。今のところ、その匂いしか嗅げない状態で、詳細は来年1月に開催されるCESの基調講演で明らかにされる。いったいどんなものになるのか、予想してみた

 COMDEXのBill Gates氏の基調講演で、ちょっとだけ紹介された「SPOT(Smart Personal Object Technology)」だが、COMDEXの直後に日本で行なわれたイベントでもMicrosoft米本社の副社長となった古川氏がもう少し詳しい紹介を行なっている(11月22日の記事参照)。

 このSPOTに関しては、いろいろなところで紹介されているが、ここでもう一度簡単にSPOTがどのようなものかまとめておこう。

 SPOTは、さまざまな家電製品にSmart(賢さ)を導入するためのチップセットだ。このチップを利用すれば、簡単にネットワークに接続して、さまざまな情報をLCDに表示することができる。単にネットワークに接続できるだけでなく、ネットワークを経由して、気の利いた機能を提供する。

 Microsoftでは、SPOT用のチップセットをNational Semiconductor社と共同で開発している。これは2つのチップで構成されており、CPUモジュールと周辺モジュールからなる。さらに、無線の通信機能を兼ね備えている。

 COMDEXのBill Gates氏のデモでは、目覚まし時計の例が紹介された。

 SPOTの機能を持った目覚まし時計は、旅行で全世界どこに持っていっても、自動的に時刻合わせをしてくれる。これは、ネットワークを経由して、インターネット上にある時刻サーバにアクセスし、自動的に時刻を合わせる。

 さらに、ユーザーのパソコン上にあるスケジュール帳にアクセスして、翌日のスケジュールを時計自体が調べて、スケジュールにあわせて、自動的に起床の時間をセットしてくれる(ユーザー自身が起きる時間をセットしなくてもいい)。例えば、翌日飛行機で出張する予定が入っていたときには、出発時間から移動時間や支度の時間を考えて、自動的にアラームの鳴る時間をセットする。

 Smartというゆえんは、これからの機能だ。もし、飛行機の出発時間が変更になったとしても、今までのシステムでは、ユーザーが起きて、当日Webサイトなどをチェックしないとわからなかった。SPOTを利用したシステムでは、ネット経由で出発時間をチェックして、もし時間が変更になれば、アラームが鳴る時間を変更したりする。また、車で空港まで移動する時に、高速道路が事故で混雑しているというのがわかれば、あらかじめ移動時間を余計に見てアラームを早くに鳴らすといったことができる。

 さらに目覚まし時計のLCDでは、空港までの道路状況を表示したり、ラジオの交通案内を自動的に流したりすることができる。

 もう1つの例として挙げられた“冷蔵庫にくっつけるマグネット(よくスーパーなどで売られているモノ。冷蔵庫にメモを貼り付けたり、何かを引っ掛けたりするときに利用する)”では、小さな液晶があって、そこにスーパーの特売情報や株価情報など、さまざまな情報を表示できるようになっている。マグネットには、センターからプログラムをダウンロードでき、あらかじめ決められた機能だけでなく、後からプログラムを追加することで、機能を追加することが可能だ。

 SPOT自体は、CPUと周辺などのハード、OSによって構成されるものであり、これを利用するデバイスは、時計やマグネット以外にキーホルダーなど、さまざまなモノが考えられるだろう。なによりもすごいのは、これだけの機能を提供できながら、価格に関しては当初100ドルで、普及期にはいれば30〜50ドルで提供できるということだ。

SPOTのCPU――2つの可能性

 SPOTの詳細に関しては、2003年1月にラスベガスで開催される家電展示会CES(Consumer Electronics Show)のビルゲイツ氏の基調講演で公開される予定だ。COMDEXではSPOTに関しては、ほんの数分話されただけだったが、CESの基調講演ではSPOTがどのようなハードとソフトで構成されているのかとか、どのような機能が提供されているかなど、その詳細が発表されるだろう。

 COMDEXで発表された資料(11月20日の記事)では、National Semiconductor社がSPOTのチップセットを担当し、MS社がSPOT用のOSなどのソフトウェアプラットフォームを開発することになっている。SPOTのチップセットは、National Semiconductor社から既に最初のシリコンがSPOTの開発を行っているMicrosoft Research(MSの研究所)に引き渡されているようだ。

 このSPOTのチップセット(CPU部分)については詳細は今のところ不明だが、可能性としては2つ考えられる。

 1つはコンサバティブな考え方で、National Semiconductor社が持っているCPUコアを使うというものだ。現在National Semiconductor社では、X86互換のGeode CPUを開発中だ。このCPUは、インフォメーション・アプライアンス(IA:情報家電製品)用に開発された32ビットCPUで、グラフィックコアなどを内蔵した統合型CPUだ。

 製品としても安定しており、慣れているCPUプラットフォームを利用するのであれば開発側のリスクもない。これに無線ネットワーク部分(たぶん近距離無線のBluetoothと予想される)を組み合わせたもの――というのは十分ありそうだ。

 ちなみにMicrosoftの古川氏は、SPOTのOSカーネルサイズは32KBと語っている。確かに、組み込み機器用のOSとして携帯電話やさまざまな家電で使われているμITRONなどでは、TCP/IPのプロトコルスタックなどを含めても100KB以下。このことを考えると、あながち実現できないものではないだろう。

 しかし、アプリケーションの開発がC++やアセンブラなどを使って行われるため、開発側に高度な知識が必要になる。これが問題だ。

[山本雅史, ITmedia]

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