News | 2002年12月19日 08:04 PM 更新 |
「実世界」のセッションでは、玉川大学の椎尾一郎教授による日用品コンピューティングが大変興味深かった。
アメリカ・ジョージア工科大学のAware Home Projectsという未来住宅の研究プロジェクトに客員研究員として参加していた椎尾教授は、ユビキタスコンピューティングをテーマとしたいくつかの研究発表を行った。
Digital Decorは、日用品になるコンピュータ(左)。その具体例として、考案されたのがカメラつきの収納家具だ
Digital Decorのイメージムービー(.mpg/19.9Mバイト)、ショートバージョン(.mpg/2.9Mバイト)
ユビキタスコンピューティングといっても、具体的な「もの」がないと、何を意味しているのかわかりにくく、想像しにくい。ユビキタスコンピューティングでは、コンピュータが、日常生活のなかに溶け込んで使われるようになるという想定がされている。そのときに、コンピュータはキーボードとディスプレイとマウスを持つ、現在のような形ではなく、もっと違う形をしているのではないか、と考えられている。では、具体的にどんなものなのか、という実例が示されたのである。
家具、調度品、小形の家電製品、小物などを総称してdecorと呼ぶ。椎尾教授の日用品コンピューティングには、「Digital Decor」という総称がつけられている。
具体的に制作された「Digital Decor」は、引き出しのモチーフを使ったものであった。
引き出しの中にコンピュータとデジタルカメラとディスプレイ、センサーなどの機器を組み込むことで、画像で検索できる「引き出し」を作り上げたのである。
第1弾の「Digital Decor」は、「Timestamp Drawers」である。
「Timestamp Drawers」は、棚や引き出しが、アクセスした時刻を覚えていてくれたら、その記録を元にどこを探索すべきかが明らかになるだろう、というコンセプトで作られた10段の引き出しを持つ透明の収納である。一見すると、OA家具や書斎用の書類入れなどで使われるワゴンタイプの家具だ。
異なる点は、引き出しの最上部に、ノートPCが設置されていること。これは、結構違って見えるが、実は、内部にはもっと隠された仕掛けがある。それぞれの引き出しに、センサーが組み込まれていて、引き出しの開け閉めをした時刻を自動的に記録しているのである。開閉時には、音声認識機能(IBMのViaVoice)を使って、メモを残すこともできる。これによって、時間軸をたどりながら、探し物のある引き出しを探すことができるのだという。
次に作られた引き出しシステムが、「Strata Drawer」だ。
「Strata Drawer」では、引き出しの機能が、タイムスタンプだけでなく、実際に入れた書類じたいがどうなっているのかを、画像で見ることができるように進化し改良された。
[美崎薫, ITmedia]
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