News 2003年1月20日 07:24 PM 更新

ec2003レポート
Walkmanの次はCosTune〜装着型楽器による「行きずりセッション」

ec2003を沸かせたのが、ウェアラブルな鍵盤楽器「CosTune」だ。行きずりの人々が音楽を奏で始め、それがうねりとなって周囲を巻き込んでいく。そこにエンターテインメントの原点があるのかもしれない

 「エンターテインメントコンピューティング2003」(ec2003)2日目の「音」のセッションでは、JAIST/ATR/さきがけ研究21の西本一志氏によるCosTuneが面白かった。

 このCosTuneは、「Walkmanの次に来る音楽文化の創造」を目指して作られたシステムで、コスチューム(Costume)とTuneの造語である。写真で見るように、チョッキ型の鍵盤楽器で、着込んで演奏に使用する。


左がCosTuneを装着した西本一志氏。胸についた鍵盤で演奏する


音楽文化を創造するCosTune。コンピュータ音楽の父、Max Mathews教授も使った!

 イブニングセッションの「ミュージックナイト」では、CosTuneのほか、ウェアラブルPCに歌詞カードを表示した大阪大学の塚本助教授、テルミンの菊池誠教授、大阪大学サイバーメディアセンターの寺田努氏らによる「ツカモトバンド」の演奏が、参加者を大いに湧かせた。


大阪大学大学院の塚本昌彦助教授。ヘッドマウントディスプレイに堂々と歌詞のカンペを表示して歌っているが、だれにも見えない! 右は2台のPDAでベースを実現し、気持ちよく演奏する大阪大学サイバーメディアセンターの寺田努氏。“歌って踊れる研究者”として知られている


芸達者のそろった「ツカモトバンド」による行きずりセッション。テルミンも見える。ちなみに、このテルミンは、旧ソ連の科学者Theremin氏が1920年に発明した世界最初の電子楽器で、最近はMIDI対応もしたのだとか。

 寺田氏のPDAベースは、ふたつのPDAをシリアルクロスケーブルで直結し、ベースのフラット部分(左手)と弦部分(右手)を再現したシステムである。フラットに相当するPDAでコードを押さえ、弦に相当するPDAで弦を弾いて演奏する。

 ちなみに、このようなウェアラブル楽器での行きずりセッションについては、初日のUGA(United Game Artist)の水口哲也氏の講演にもアフリカのケニアでの行きずりセッションの話題が取り上げられていた。酒場で人びとが音楽を奏で始め、それが次第にうねりになってまわりを巻き込んでいくというのである。

 ゲームが進化していくのだとすれば、身体性を重視し、相手と実空間で互いにやりとりしあうシステムというのも、十分予想されるのであって、ゲームの実作者と研究者がともに「行きずりセッション」をキーワードにしているのが、たいへん興味深く感じられた。


能動性、身体性を重視したCosTune

 それにしても、音楽というのは、人間の共通言語なのだ、ということを改めて感じる瞬間でもある。携帯電話への実装が進んだりすると、かなりリアルな状態で使われるようになるかもしれない。

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▼ 特集:Entertainment Computing 2003

[美崎薫, ITmedia]

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