News 2003年1月22日 10:25 PM 更新

銀塩フィルムのメカニズムで“白とび”防止――第4世代「スーパーCCDハニカム」

富士写真フイルムが「第4世代スーパーCCDハニカム」を発表。1/1.7型CCDで有効635万画素を実現した「HR」と、ダイナミックレンジを大幅に向上した「SR」の2バージョンが用意された。SRは2種類の異なる性質の画素を組み合わせるなど、銀塩フィルムのメカニズムが取り入れられている

 富士写真フイルムは1月22日、同社独自のスーパーCCDハニカムを進化させた「第4世代スーパーCCDハニカム」を発表。同日都内で、この新デバイスの技術説明が行われた。


第4世代スーパーCCDハニカム

 1999年に同社が開発した独自の高画質技術「スーパーCCDハニカム」は、撮像素子の配列を従来型CCDの正方格子配列から45度回転させ、さらに形状を受光面積が大きくなる8角形にすることで“ハニカム(Honey-comb=蜂の巣)構造”に配列した、CCDと独自信号処理回路のトータルシステムだ。


8角形のハニカム構造CCDで高画質を実現した「スーパーCCDハニカム」

 2001年には、さらなる多画素化とノイズ低減によってシャープな画質を実現した「第2世代スーパーCCDハニカム」を市場に投入。また昨年1月には、画素加算信号処理とCCD内の水平/垂直画素混合によって、ISO1600の高感度撮影とVGAサイズで毎秒30フレームの動画撮影を可能にした「第3世代スーパーCCDハニカム」を開発している。

 4世代目となった新スーパーCCDハニカムは、性質の異なる2つのバージョンが用意された。1つは、同社独自の微細化技術によって1/1.7型のCCDで有効画素数635万画素(総画素数663万画素)を実現した「スーパーCCDハニカム HR」だ。

 HRは、高度な微細化技術によって第3世代に比べて画素数が約2倍となり、1/1.7型CCDで有効635万画素(総画素数663万画素)を実現した。スーパーCCDハニカムは、実際に撮像素子として機能するCCD画素数(有効画素数)よりも約2倍もの記録画素数が得られるため、HRを使ったデジカメでは最大で4048×3040ピクセル(1230万画素)の“超”高解像度画像を撮ることができる。「コンパクトタイプのデジカメで世界最高水準の高解像度が可能になる。1230万という記録画素数は、銀塩フィルムに匹敵する解像度」(同社)。

 ただし、同じCCDサイズ(1/1.7型)で2倍の画素数になると、1画素あたりの撮像素子面積は半分となる。画素面積の減少は、感度の低下につながる。そこでHRでは、デバイス自体の性能を向上させ、信号処理技術の改良を施すことによって、1画素の面積が半分ながらも第3世代スーパーCCDハニカムと同等の感度をキープした。

広いダイナミックレンジの秘密は、銀塩フィルムのメカニズム

 もう1つのバージョンが、第3世代に比べて約4倍のダイナミックレンジを実現した「スーパーCCDハニカム SR」だ。

 解像度競争を繰り広げている近年のデジカメは、同一CCDサイズの中により多くの画素を作りこむことで高解像度化を図ってきた。その結果、解像力は向上したものの1画素あたりの撮像素子はどんどん小さくなり、感度、S/N比、ダイナミックレンジなどが低下するという弊害を生じていた。

 「ダイナミックレンジの低下によって、明るい部分(ハイライト)が白くつぶれてしまう“白とび”という現象が発生する。このダイナミックレンジの低さが、デジカメの画像が銀塩フィルムに劣ると言われる大きな要因だった」(同社)。

 SRは、このダイナミックレンジの向上を図るために、スーパーCCDハニカムに新規構造を採用。「銀塩フィルムのメカニズムを取り入れた」(同社)という、そのユニークな画素構造とはこうだ。

 銀塩フィルムには、感光素子としてハロゲン化銀が塗布されている。銀塩フィルムの“銀塩”は、このハロゲン化銀のことだ。この感光素子の粒子面積が大きいほど感度が向上するが、大きな粒子ばかりだと光量が多い時に白くつぶれてしまう。そのため銀塩フィルムには、高感度の大きな粒子と、光量が多い時に感光する小さな粒子という2種類のハロゲン化銀粒子が塗布されている。


銀塩フィルムには大小2種類のハロゲン化銀粒子が塗布されている

 SRは、銀塩フィルムが有するこのような機能分担の構造を応用。感度の高い「S画素」と、ダイナミックレンジが広い「R画素」という2種類の性質の異なる画素を用意し、2つの画素信号を最適に加算する事によって、感度とダイナミックレンジの両方を向上させた。


SRは銀塩フィルムの機能分担構造を応用し、2種類の画素を組み合わせた

 「ダイナミックレンジの大幅な向上により、明るい部分から暗い部分までなめらかな描写が可能になった。階調の豊かさは銀塩フィルムの領域に近づいた」(同社)。

 今回の第4世代スーパーCCDハニカムを搭載したデジカメは、近日中に発表される予定。新CCD搭載デジカメの予想スペックは以下の通り。

スーパーCCDハニカム HR搭載機種スーパーCCDハニカム SR搭載機種
撮像素子1/1.7型スーパーCCDハニカム HR(原色フィルター)1/1.7型スーパーCCDハニカム SR(原色フィルター)
有効画素数635万画素620万画素(S画素310万、R画素310万)
記録画素数最大4048×3040ピクセル(1230万画素)最大2832×2128ピクセル(603万画素)
感度ISO200−1600(ISO1600時は記録画素数1280×960ピクセル)
A/D変換ビット数12−14ビット14ビット
ダイナミックレンジ第3世代と同等第3世代比約4倍
動画性能30フレーム/秒(VGA)

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[西坂真人, ITmedia]

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