News 2003年1月30日 09:47 PM 更新

東芝HDD&DVDレコーダ開発者に聞く(後編)――次の製品はどんなものになる?(2/2)


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 桑原氏が触れたのが「音質」だ。「RD-X3は、今のレコーダを買ってくれている人たちには、自信をもってお勧めできる製品です。しかし、(同社最高級のDVDプレーヤー「SD-9500」を買っているような)“ハイエンドのマニア”層を満足させられるかと言うと、まだまだでしょう」。

 ハイエンド向けのDVDプレーヤーを設計している桑原氏らしい発言には、片岡氏も「彼に本気でハイエンドモデルを作らせると、型番がまた変わって『RD-XX』とかになりそう」と苦笑する。ただ桑原氏は、「RDに“X”を付けるからといって、(DVDプレーヤーと同じレベルのハイエンド向けに)持っていかれてしまうとそれはそれで難しい」ともいう。

 「機械は、やっぱりバランスがありますから。まずは東芝が(HDD&DVDレコーダの)Xとして狙うところはどこなのか、それをどう定めるか、ですね。そこで枠組みができるでしょうから、その中で自分の思いを盛り込んでいきたい。RD-Styleのレコーダという観点でみると、もっともっといいものを作れる可能性があるんです」(桑原氏)。

 音質以外のハード面では、搭載ドライブの高速化が気になるところ。パイオニアなどすでに4倍速記録に対応した記録型DVDドライブを搭載しているところもあるからだ。この点については、「そろそろ手を打たないといけないですよね」と話していた。

 ただし、搭載するHDDのさらなる大容量化については、片岡氏、桑原氏ともあまり必要とは考えていない様子。それ以前に、RD-X3で160GバイトのHDDを搭載したこと自体、スペック競争を踏まえた営業的な意味合いが強いと考えているようだった。「開発者たちとよく話すのは、これまでの80Gバイトという容量がいかに適正だったかということですね。余りに大きくなると、ついHDDに貯めすぎて、今度は“DVDで残す”という作業が大変になる。そういう意味で、80Gバイトってちょうどいいんですよ」(片岡氏)。

 片岡氏は、だから、RD-Styleのいいところは、「“タイムシフト”という“〆切”があるところ」と笑う。「これでどんどん見させるという強制力が働く。このフォースが大事。その点、160Gバイトではフォースが効かない」。

 このHDDの大容量化を含め、今後は各社ともスペック競争になりそうだが、片岡氏は「個人的にはあまりエスカレートして欲しくないと思っています。人間の処理能力が付いていきませんからね。機械のスペックが上がったら、人間のほうも『片岡ネクストバージョン』といった具合に、バージョンアップできればよいんですが(笑)」。

ソフト面ではDVD-Video作成機能が面白い?

 一方のソフト面について、「やりたいことはいっぱいある」という片岡氏に一例を挙げてもらったところ、DVD-Videoのオーサリングという答えが返ってきた。これには片岡氏自身がオーサリングエンジニアをやっていたということもあるようだ。「個人的に見て(DVD-Videoオーサリング機能は)今回でスタートラインに立ったという感じなんです。まだまだ楽しいところはあるんで、その部分の進化に期待したいですね」。

 加えて、ネットワーク機能も、「せっかく付けたんだから、まだまだいろんなことをやりたい」と片岡氏。ただ、ネットワーク機能というと、一般的にはPCと絡めたストリーミングへいくのかと考えがち。しかし、それについては、「現時点ということでは、考えていない」と否定する。

 「LANは今のところ、あくまでRDの専用キーボードが欲しいというところから発想しています。LANを入れたのだからHDD単体のユニットやUSBキャプチャーカードと組み合わせていくといった考え方をする人もいるでしょうが、そうは考えていない。あくまでもRDとPCそれぞれの長所をいかして、PCをリモコン代わり、キーボード代わりにするというところでやっています」。

 X3登場で、ハイエンドと普及機の2シリーズになった点については、片岡氏は「(他社などの状況もあるので)先のことはわからない」としながらも、「もう時代的にラインナップにしないと商売にならないでしょう」と見ているようだ。

 ではどういう展開になるのだろうか。

 「Xシリーズは、続くでしょうね。ここまできたら、みんなの思い入れもありますし。XSシリーズは、スタンダード版のSなんで、Xシリーズをよりお求めやすくします。しかし、性能は妥協しない。だから、ソフトは一緒なんです。普通は下のモデルだと機能をわざと減らすじゃないですが、それはしたくない。XとXSの違いは(部品などの)ハードが違うということ。将来に渡ってそれが保持できるかどうかは保証できませんが、ポリシーとしては、アプリは一緒です」(片岡氏)。

 同氏は、以前ZDNetのインタビューに対して、現在の進捗状況を7分3から4ぐらいと話していた。次はそれが7分の4か5ぐらいになることだろう。ステップアップしたRD-Styleはどのような姿になるのか――さてその答えは、夏に出るのだろうか。それとも秋だろうか。

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[北川達也, ITmedia]

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