News:アンカーデスク 2003年2月17日 06:28 PM 更新

迷走するデジタルビデオレコーダ(1/2)

DVDやHDDにデジタル記録するデジタルビデオレコーダの普及が急速に進んでいる。だが、家電とPCの境界領域にあるこれらの製品は、それゆえの意外な難しさを抱えている。今後、AVサーバなどが登場してくると、この問題はさらに“難度”を増しそうだ
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 われわれが想像しているよりも早く、日本では「HDD録画、DVD保存」という文化が定着しそうだ。筆者の知人宅でもDVD+HDDのハイブリッドレコーダを導入したそうだが、家族はその構造や原理については全く理解できないものの、テープメディアにはない録画形態のメリットにすぐに気づき、日々驚きながらも便利に使っているという。

 DVDやHDDにデジタル記録するレコーダを総称して、仮にここではDVR(デジタルビデオレコーダ)と言うことにするが、これらの製品がここまですんなり家庭に入り込めた理由の1つは、テープ録画のメタファーをうまいこと取り込んだことだろう。

 「録画」ボタンがDVDライティングソフトのように「書き込み」などと書いてあったら、それだけで普通の人は「ビデオとは似て非なるもの」と捉えたに違いない。ビデオと同じ操作でいいんですよ、でももっと便利なんですよ――家電を大量に扱う量販店内でこんなセールストークが通用するから売れるのだ。

 しかしこれらDVRを、家電として捉えられることに対するメーカーの反応はさまざまだ。

家電じゃないんです……

 東芝では自社のRDシリーズに対し、家電ではなくデジタルAV機器という新ジャンルであるという立場を、一貫して取り続けている。イメージは家電でも、少なくともDVDやHDDを搭載した時点で、これらDVRの基本構造はパソコンと同じである。機能限定のパソコン、それがDVRの実態だ。

 単純に普及しているかという観点から見れば、平成13年度でのパソコンの世帯保有率58%という数字(内閣府調査による)は、りっぱな家電だと言っていい。しかしパソコンを家電だと思う人はまずいない。

 一方でビデオデッキの普及率はだいたい98%と言われている。あきらかに普及率93%の「茶だんす」とかよりも普及しているのである(まあ茶だんすは家電じゃないが)。DVRがビデオデッキのリプレースとして成立する市場であるならば、DVRは家電でなければ困る、というのがユーザーの意見であろう。

 この認識のズレがもっとも顕著に表われるのが、サポートである。例えばビデオデッキに不具合が出たら、普通はメーカー修理を考える。同じような家電として見られてしまうDVRでも、不具合が出たら技術者が一件一件お宅にお邪魔してパッチを当てて回るようなサービスを期待される。あるいは本体を回収してパッチを当てて返送、ということになろう。これがパソコンならば、アップデータを当ててください、で済むところだ。

 これはものすごいコストと手間である。パソコンよりも価格の安いDVRでこんなことをやったら、あっという間に破綻してしまう。しかし実はこのような例は表面には現われてこないが、少なくない。発売日ぎりぎりになって出荷延期になるというケースはまだいいほうで、実際に無償点検・修理を行なった例もかなりある。各メーカーとも、この件に関しては同じぐらいスネに傷持つ身なのである。

 そこで多くのDVR製品では、ネットに接続できる機能を搭載する方向で動いている。ネット接続機能を付ければ、パソコンと連携できたり、リモート予約が可能になったりといったユーザー側のメリットがある。しかしメーカーにとって大きいのが、“サポートが大幅に簡略化できる”ことだ。本体内に「アップデートメニュー」を設け、そこを押せば自動的にアップデートされるという仕組みを作れば、ハードウェアの不良以外は対策可能だ。

 数あるDVRのうち、このサポート機能をもっとも前面に押し出しているのがソニーの“CoCoon”こと「CSV-E77」だ。

 「NET」ボタンを押すと、E77から専用のサポートページに接続される。このモデルに搭載されたポートは10BaseTで、最初から映像データをやりとりするという目的以外の理由で設けられたものであることは明白だ。元々ソニーの放送機器では、各所に納品されている自社の機材をリモートで監視するというシステムを早くから実践してきた。経験もあり、その効果についても実証済みというわけだ。

 しかしネットでサポートが可能と言うことは、ネット越しになんらかのプログラムを送ることが可能で、しかも内部で起動させられるということである。

[小寺信良, ITmedia]

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