News | 2003年2月24日 11:59 PM 更新 |
日本アイ・ビー・エム(IBM)は2月24日、2002年12月期の連結決算を発表した。3期連続の減益になったことに加え、4期ぶりに減収となるなど、厳しい市場環境を反映したものになった。
2002年度の連結総売上高は1兆5834億3400万円(前年同期比7.3%減)。国内売り上げは1兆4601億1300万円(同0.1%減)とまずまずだったが、輸出高が1233億2000万円(同50.0%減)と半減したことが響いた。同社によれば、これは2001年に行った液晶事業と実装基板事業の再編による影響だという。連結営業利益は前年同期比7.5%減の1673億1100万円、連結経常利益は同3.6%減の1665億9400万円だった。
事業分野別に見ると、引き続き堅調なのがコンサルティングやアウトソーシングを行うサービス部門。11年連続の2桁増を達成し、中でもアウトソーシングは、30%増と高い伸びとなった。企業がリストラを進める中、アウトソーシングの採用が進んだことが寄与した。
一方、2桁減になったのが、ハードウェア、ソフトウェアの両部門で、ハードは前年同期比14%減、ソフトは15%減だった。ハード部門では、UNIXサーバやIAサーバの上位機種の売り上げが好調だったものの、PC&プリンタ事業が24%減と大幅減でカバーしきれなかった。
ただ、同社の大歳卓麻社長は「それでも(ハード・ソフト両部門は)すべて黒字になっている」ことを強調。落ち込みの厳しかったPC事業については「企業向けは堅調なものの、個人ユースはかなり厳しい」と見るが、「個人のホビー向けはIBMがフォーカスする事業ではないので、それほど深刻な状況ではない」と強気だった。
事業戦略、柱はLinuxとグリッドコンピューティング
では同社は今後、どういう方向に向かっていくのだろうか。決算説明会で同社が事業戦略のメインテーマとして掲げたのが「eビジネスオンデマンドオペレーション環境」の構築であり、そのための具体的な方策が「オープン化」と「(ビジネスの)仮想化」だ。
このうち「オープン化」の柱になるのは、言わずと知れたLinuxだ。同社は社内のLinuxスキル養成に力を入れており、2002年には1500人の技術者を養成したという。2003年度も新規投資は主にLinux関連のスキル養成に振り向ける予定だ。米欧に比べて日本国内の基幹システムにおけるLinux普及率はまだまだ低く、成長の余地が大きいというのが、同社の判断だ。
一方、「ビジネスの仮想化」を実現するソリューションとしてIBMが提案するのが「グリッドコンピューティング」。直近の業績にすぐに寄与するものではないが、ネットワークコンピューティングにおける次主力ソリューションとして力を入れており、科学計算分野だけでなく、ビジネス分野での商用利用も視野に入れているという。
業績回復のための環境は整いつつある
目先の業績では、ハイエンドサーバが好調なIBMにとって気になるのが、デルコンピュータやヒューレット・パッカードによる低価格IAサーバの攻勢だろう。これに対し、大歳社長は「日本IBMはサーバのコストをTCOとして考えている。ハードウェアはハイエンドパーツを搭載しているが、ソフトウェアは低価格で提供する。これらのトータルの価格で考えてほしい」と、ソフト、サービスを含めたトータルコストでは競合他社の低価格IAサーバに対する価格競争力を維持していくという考えを示した。
今後の展望については、「回復の条件は整ってきた」というのが同社の見方。2002年の情報関連投資は“絶不調”で、2003年に入っても景気が上向く気配はない。業界を取り巻く環境は依然として厳しいが、同社によれば「今年になってクライアントの設備投資意欲は高くなり」「ブロードバンドネットワークなど、eビジネスオンデマンドを展開するためのインフラも整ってきた」という。
回復の条件はそろいつつある。自分たちの考えるビジネスモデルを日本で広く普及させ、再びITビジネスが上昇気流に乗る日の布石にしよう――これが2003年における日本IBMの「戦略」というわけだ。
[長浜和也, ITmedia]
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