News:アンカーデスク | 2003年2月28日 07:43 PM 更新 |
PC業界において2003年最初の重要イベントといえる「IDF Spring」が終了した。今回はCentrinoやPCI Expressなど、普及に時間を必要とするテーマが中心だったためか、“2003年の”というよりは、中−長期的(3年程度)の技術トレンドが多く示されたように思える。
その詳細はIDF特集を見ていただきたいが、IDFは基本的に、Intel自身と同社が重要視するパートナーが、技術的なトレンドについて講演を行うというスタイルになっている。そのため、PC業界で重要と思われる技術があっても、そのすべてがフォローされているわけではない(もちろんIntelが議題にする技術イコール、PC業界にとって重要とされる技術のほとんどになる、というのが業界の現状だが……)。
筆者がこう感じるのは、実は今回、何らかの情報があると期待していたにもかかわらず、ほとんど何の情報も出てこなかったことに驚いた技術が、ひとつあるからだ。
それは、IEEE 1394bだ。
1394bのメリットは大きい。ホットプラグ・ホットスワップへの対応や、接続の容易さといったIEEE 1394の特徴をほぼ失うことなく、転送速度を2倍の800Mbps(=100MB/秒)まで高速化している。ただし、コネクタが変更されてしまったため、従来の1394機器を接続するためには、変換ケーブルなどが必要となる(規格的には上位互換だ)。
新規格で問題となる対応機器も、速度的なメリットが大きい点と、なによりAppleがPowerbook G4などで標準搭載採用した点などにより、徐々に増加するだろうと見られている。
こうした状況から、IDFでもなんらかのコミットはあるのではないかと思われたのだが、Texas Instrumentsがブース内で1394bの光接続のデモンストレーションをしていた以外、大きな動きはなかったようだ。
1394bの“道”は示されなかった
実はこの1394bは、現在の一般的なPCでは、取り扱いの難しいデバイスなのである。32ビット/33MHzのPCIバスでは、バスの方がボトルネックとなる可能性が大きいからだ。
とはいえ、こうした“インタフェース側の方が速い”デバイスは、1394bが初めてではない。高級マザーボードで普及しているギガビットイーサネットやSerial ATAのRAIDコントローラといった例がすでにある。
これらのデバイスは、理論上は完全にPCIバス側が飽和するものの、これまでは32ビット/33MHzのPCIバスに接続されてきた。これは(理論上ではなく)実効の帯域では32ビット/33MHzのPCIバスでなんとかカバーできることや、マザーボードメーカーで激しい機能向上競争が行われてきたことによって、いわば“確信犯的”に搭載されてきたのである。
皮肉なことに、今回のIDFでは、1394bを除くこれらのデバイスについて、Intelがどう扱うかが示されている。Serial ATA RAIDはSpringdaleチップセットなどの“ICH5-R”と専用ドライバで対応し(つまりチップセット内蔵となる)、ギガビットイーサネットは専用ポート「CSA」で接続される――という構図だ。
こうしたこともあり、筆者は1394bもSerial ATAなどと同じように、IDFでなんらかの方針が示されるものと考えていた。しかし、その期待は大きく外れてしまった。
これは何を意味しているのだろうか? Intelが(少なくとも)現段階ではコミットメントを出していないということは、2003年のチップセットでは、1394bの取り扱いに関して積極的な考慮をしていない。そういうことになるのではないだろうか?
また、1394aをチップセットに内蔵していたSiSも、新たに内蔵したNVIDIAも、現状では1394bに関し、製品ロードマップ上ではコミットメントを行っていない。
しばらくは暫定的対応か?
となると、当面、1394bがPCに搭載される場合は、どういった形になるのだろうか?
まず考えられるのは単体の拡張カードだが、これはまず間違いなく登場するだろう。ただし、32ビットPCIで提供されるかどうかが問題だ。Mac用としては、いくつかのサードパーティから拡張ボードでの提供も予定されているが、性能を生かすために64ビットPCIとなるようだ。これはMacならではの事情なので、PCでは参考にはならない。
実際には、Serial ATAなどと同じく、32ビットPCIによる暫定的な接続となるのだろう。しかしチップセットへの内蔵が予定されていない以上、PCにおける1394bの扱いは微妙な位置に立たされることとなるだろう。
ワーストケースでは、PCI Expressが登場するまで、PCでは1394bは盛り上がりを欠いたままの状態になってしまうのかもしれない。
筆者としては、これが杞憂であることを祈りたいのだが……。
[橋本新義, ITmedia]
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