News:アンカーデスク | 2003年3月7日 06:15 PM 更新 |
参加者は、入り口でヘッドセットを着ける。これにはカメラ(視線はだいたい目の方向とあっている)とマイクが付いていて画像と音声を取り込んでいる。でも、ディスプレイとかスピーカーといった人間に情報を与えてくれるデバイスは付いていない(*5)。
カメラの脇には赤外線トラッカーもあって、自分自身のIDを発信し続けると同時に、周囲で発信されているIDを拾っている。つまり、お互いに近所に誰がいるかをチェックしつづけているわけだ。
ヘッドセットは参加者のほかに展示の説明をする人も着けている。また、展示パネルの上のほうにも、ヘッドセットの形はしていないが、同じ内容のセットが設置されてる(大きさの制約がないから、カメラはいいものを使っている)。さらに、部屋の中央の天井近くにもセットがある(*6)。
各セットで撮られた画像と音声は、無線LANによってサーバマシンに送られ、どんどんストレージされていく(圧縮されているとはいえ、大容量だ)。このときに、赤外線トラッカーによって、どこにいたとき(正確には、近所に誰がいたとき)のものかという「タグ」が順次付けられていく。これが大事。
さて、参加者は、普通に歩いて展示を見て説明を聞けばいい。順路通りに回ってもいいし、空いているところから、回ったっていい。一回りしてくると、「わたしが展示を見てきたところ」っていうドキュメンタリーが自動生成されるのだ。
まず、自分のカメラによって、見てきた展示そのものの画像が撮られている。これはあたりまえ。さらに、説明員や展示パネルのカメラでは、自分自身の画像も撮られているのだ。ドキュメンタリーにはこの画像も時々使用される。
もっと面白いのは、誰かと話をしたときだ。説明員とでもいいし、他の参加者とでもいい。このときは、自分のカメラに映った相手の画像と、相手のカメラに映った自分の画像とが交互に使われるのだ。もっときちんと言うと、自分が発言しているときには、相手のカメラの画像+自分のマイクの音声が使われている。相手が発言するときにはその逆。
これによって、かなり変化に富み、かつ意味のあるドキュメンタリーができるというわけ。自動生成の計算に使われるデータは赤外線トラッカーのタグだけで、画像処理などはする必要がないから計算も非常に速い。
実はこのシステムは、このような会場内で、人がどう動くかとか人と人とがどう接しているかということを分析するためのデータを採取するためのものだったのだ。その時、ただ画像を撮っていたのでは、あとで分析する人は膨大な画像を見なきゃいけなくなってめちゃくちゃ大変だ。
そこでトラッカーでタグを付けておけば、作業はずっと楽になるね、ということから始まっているらしい。きっと、わたしがふらふらしていたデータも、なんかの研究に使われるのだろう。ドキュメンタリーができるのは副産物なのかもしれないんだけど、でもこれ結構面白い。
今回の展示ではヘッドセットは重いし、背中にはノートパソコン(こいつが画像を圧縮して無線LANでとばして、ということをやってる)とバッテリーの入ったパックを背負ってという、かなり人間に負担のかかるものになっていた(実際重かった)。
でも、これは専用機を設計すれば、「ネックバンド型ヘッドホンただし首の後ろがちょっと太い」程度の大きさになる見込みがあるのだそうだ。そうなったら、パーティみたいな、もっとふらふらする環境で実験できるようになりそうだ。
[こばやしゆたか, ITmedia]
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