News 2003年3月12日 03:00 PM 更新

Centrino搭載ノート、各社の製品コンセプト
小型軽量化をさらに追求した東芝「dynabook SS S7」(1/2)

通常タイプのノートPCでは各社のCentrino搭載製品で最小サイズとなった東芝の「dynabook SS S7」。開発にあたって優先課題になったのは、意外なことにバッテリ持続時間ではなく、インタフェースレイアウトの継承性だったという

 東芝が今回投入するのは、A4ファイルサイズ3スピンドルのDynaBook V7とB5ファイルサイズ1.1キロ級のdynabook SS S7(以下S7)の2シリーズになる。ここでは、通常タイプのノートPC(VAIO U101はやや特殊な目的とフォルムといえるだろう)では今回最小サイズとなるdynabook SS S7に注目して、その設計コンセプトを追っていこう。


dynabook SS S7開発チーム 左から東芝 デジタルメディアデベロップセンター 坂本 圭氏(ソフトウェア開発取りまとめ)、同 中村 博氏(ハードウェア開発取りまとめ)、同 島本 肇氏(S7開発プロジェクトリーダー)

なぜ、S7で外付けビデオチップを搭載したか

 従来機種のDynaBook SS S6ではULV モバイルPentium III-M/866MHz。S7はPentium M/900MHz。クロックは上昇しているものの、わずが34MHzの差。「ULV モバイルPentium IIIより通常状態での消費電力は少なく、パフォーマンスはPentium 4並み。ポータブルに実に適している」(島本氏)と評価している東芝は、なぜ、ギガクラスのLV Pentium Mの採用に踏み切れなかったのか。

 「今回システム全体として見ると、通常利用では減少しているものの、ピーク時発熱量は逆にアップしている。ノートPCの熱設計はピーク時に合わせて行わなければらないので、冷却機構はS6よりも強化している」(同)。

 加えてS7は、わずかながらもS6よりきょう体が小型化している。当然、発熱に対してはいっそう厳しい状況なのであろう。となると、S7にはULV Pentium M/900MHzが搭載できる限界に近かったのかもしれない。

 このように厳しい条件のもとで、開発を強いられたS7であるが、一方でビデオコアに外付けチップを採用するなど、消費電力、発熱的に不利と思われるデザインを採用している。

 「確かに理想を言えばIntel 855GMが有利。しかし、開発段階ではIntel 855GMの開発スケジュールが見えてこなかった」(島本氏)。だが、それ以上に「一世代前のパフォーマンスではユーザーに訴求できない」(東芝PC事業部 PC商品企画部 原田健史氏)というマーケティング的な事情もあったようだ。

 「S7のきょう体サイズでは外付けビデオメモリのビデオチップは不可能。ビデオメモリ内蔵で、安定した供給が得られるチップとなると選択肢は限られてくる」(島本氏)という条件で採用されたのは、dynabook SSシリーズではおなじみのTrident製チップだった。

 ただし、S7で採用したXP4 m32 LPについて東芝は「3DMark2001(SecondEditionではない)でGeForce Ti4200並みのパフォーマンスを出している」(島本氏)と、興味深い評価をしている。

 XP4 m32 LPはDirect X8.1/9.0をサポートし、DDRメモリをビデオメモリとして採用した、Trident社の最新ビデオチップ。ただ、東芝の情報ではコアクロック200MHz、メモリクロック200MHzと従来のビデオチップとそれほど代わりはないので、GeForce Ti4200相当のパフォーマンスは、ちょっと信じがたいところだ(デスクトップバージョンのXP4ではT3でコアクロック300MHz、メモリクロック700MHzとなっている)。

 残念ながら記事作成時点でベンチマークが許可された量産品の評価ができていないが、まもなく入手できる見通しなので、実際に試してみた結果は、その際に紹介しよう。

バッテリより優先「S6インタフェースの継承」

 S7のスペックを眺めてみて一番気になるのが「2.5時間」というS6とほとんど変わらないバッテリ駆動時間だ。ほかのCentrinoノートPCがバッテリ駆動時間を4−6時間と伸ばしている状況で、Centrinoロゴをつけながら2.5時間というのは、かえって駆動時間の短さを印象付けてしまう。

 「CPU、チップセットは消費電力減となったものの、ビデオチップやメモリなど、システムトータルで見るとやや微増となっている」(島本氏)という事情はあるものの、(重量は増えるが)バッテリ容量などで対応できなかったのだろうか。

[長浜和也, ITmedia]

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