News 2003年3月13日 01:41 AM 更新

開発責任者が語る、Centrinoの現在・過去・未来(1/3)

Pentium Mを設計した“イスラエル設計チーム”を率いるDadi Perlmutter副社長が発表に合わせて来日。ZDNetとのインタビューに応じた。同社の中でもコンパクトや省電力といった分野で高い能力を持つとされる同チームの責任者から見たCentrino/Pentium Mの意味、そして今後の展望は?

 Intelはモバイル専用に設計された新しいプロセッサPentium M、およびワイヤレス機能を備えたノートPCのブランドCentrinoを発表した。そのPentium Mを設計した“イスラエル設計チーム”を率いるDadi Perlmutter副社長兼ジェネラルマネージャに、Pentium Mとその可能性についてインタビューする機会を得た。

 Intelのプロセッサ設計チームは複数存在するが、中でもイスラエルのチームはコンパクトな設計や省電力のテクニックにおいてユニークな能力を持つと評判の部署である。実際にBanias設計の現場を指揮したイスラエル設計チームのリーダーMooly Eden氏はPerlmutter氏の部下に当たる。(聞き手・構成:本田雅一)

――ZDNet:イスラエルの設計チームは、自分たちで設計ツールを改良し、独自のセルライブラリを駆使して、小さく、省電力なプロセッサを開発するテクニックに長けていると聞いています。なぜ、他のチームより小さく、省電力で、かつ高速なデザインを行えるのでしょう。

Perlmutter: いや、Intelには非常に優れたデザインチームがいくつもあります。われわれだけが特に優れた技術を持っているわけではありません。IntelにはCAD開発専門の部隊もありますし、すべての開発チームは同じようなツールを使っています。


 しかし、そうした中でわれわれのチームがユニークと言われるのであれば、他人とは違う、少し変わったことをやってみようという気持ちがあるということでしょうか。コンサバティブな設計をするのではなく、多少のリスクを背負ってでも、性能が上がることをやろうと。

 ですが、Intelには他にも良いチームがありますよ。われわれだけではない。

――ZDNet:イスラエル設計チームはTimna(GMCHを統合した、発売されなかった小型デスクトップPC向けPentium III)も担当していました。Timnaはコンパクトさとパフォーマンス、低発熱など、評判が非常に良いプロセッサでしたが、その経験がPentium Mにも活かされているのでしょうか?

Perlmutter:TimnaではPentium IIIにさまざまな機能を統合するため、コンパクト化や省電力化などが求められました。その時に、ダイサイズの縮小や消費電力をいかに抑えるかといったデザイン面でのテクニックをいくつもトライしています。

 Pentium Mは同じチームで開発していますから、もちろんその時の経験は活かされています。しかし、TimnaとPentium Mではビジネスの目標が全く異なるものです。したがって、Timnaの延長線上にPentium Mがあるわけではありません」

――ZDNet:Pentium Mについて、細かなマイクロアーキテクチャの構成は、未だに公開していません。何か特別な意図があるのでしょうか?

Perlmutter:マイクロアーキテクチャを細かく話していないのは、それ以外に関心を持って欲しいところがあり、それを強調する意図がありました。われわれはプロセッサのアーキテクチャよりも、ユーザーが新製品でどのような結果を得られるのかの方がより重要だと考えたのです。

 アーキテクチャを改善しても、ユーザーにベネフィットがなければ意味がありません。逆にユーザーにベネフィットがあれば、細かなマイクロアーキテクチャが何であってもかまわないでしょう。

――ZDNet:Pentium Mは平均消費電力は下がりましたが、TDP(熱設計電力)の観点から見るとモバイルPentium IIIとほぼ同じです。これは、パフォーマンスとTDPのバランスを見た時、それが一番良い組み合わせだと考えたからでしょうか?

Perlmutter:ベストのチョイスは、そのときに使える半導体技術などよって変化するものです。改善の余地は常に存在しますから、今後のことまではわかりません。しかし、現状ではPentim-Mが1つの解答になっていると思います。

 実は他にも、省電力という観点から改善が図れるのではと考えているアイデアがいくつかあるんですよ。

――ZDNet:そのアイデアとは、より低いTDPを実現するためのアイデアということでしょうか?

[本田雅一, ITmedia]

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