News 2003年4月7日 06:01 PM 更新

「燃料電池」で広がる“アトムの世界”(2/2)


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 開発を担当した同社技術研究所の菅原雄介氏は、燃料電池の搭載について「単純にガードロボを長時間動かしたかっただけ」と説明する。

 「最長2時間しかバッテリが持たない今のC4でも、自動充電機能によって24時間動けるのだが、充電している間はドッキングステーションに待機していなければならない。警備ロボットとしては、動けない時間をなくしたかった」(菅原氏)。


泥棒を発見して知らせるガードロボC4。警備ロボットとしては24時間いつでも動けなければならない

 搭載された燃料電池は自社開発ではなく、ユアサコーポレーション製のダイレクトメタノール方式モデルを採用。同社では発電部や燃料タンクのスペースを確保するために、搭載する制御用コンピュータは燃料電池専用の小型タイプを新たに開発。コンピュータ自体の省電力化も図り、消費電力を3分の1に減らした。


燃料電池はYUASA製。制御用コンピュータは小型タイプを新開発

 「現在売られている燃料電池でも、既存のバッテリの場所に十分入る小型サイズになっている。メタノールを燃料とするため扱いやすく、出力も十分実用範囲。現在は非常に薄い5.8%のメタノールを使っているため、連続走行時間は40分と短いが、法規制上でも使いやすい50%の高濃度メタノールを希釈して使うことで、同じ5リットルのタンクで12時間の連続稼動が行える。さらに効率が上がれば24時間連続稼動も不可能ではない」(菅原氏)。

 課題は高濃度のメタノールを希釈する方法と、電気生成の効率アップ。そして意外なところでは、発生する水の処理の問題だ。現在は蒸発させているものの“加湿器状態”となるため、走っている時はともかく待機時にどのような影響があるかを検証中という。

 「ここ1−2年でさらに小型化・高出力化が期待できる燃料電池は、もはや“夢のような”ではなく“実用的”なもの。小さくても出力が大きい点や、充電時間を気にせずに燃料補給によって使いたい時に使える点は、ロボットのエネルギー源として最適。2−3年先には、ロボット電源の主流になるのでは」(菅原氏)。

ホンダやソニーも、燃料電池には“前向き”

 ヒューマノイド型のパートナーロボット開発では、他社の追随を許さない本田技研工業とソニー。ASIMOやSDRへの燃料電池搭載は、当然視野に入っていることだろう。ROBODEX2003の会場で、担当者に聞いてみた。

 「ASIMOに搭載するニッケル水素バッテリは、フル充電で1時間弱しかもたない。長時間駆動させるため、違う電源方式を検討しており、その中には燃料電池も含まれる。当社では、すでに自動車で燃料電池搭載モデルを開発している。自動車用がそのままロボットに使えるわけではないが、基礎技術は応用できる」(本田技研工業)。


自動車では燃料電池を実用化させているホンダ。燃料電池で動くASIMOの登場も近い?

 「燃料電池は非常に魅力的。次期バッテリの候補の中に、燃料電池は含まれている。現在SDR-4X IIでは、リチウムイオン充電池への充電を、イスに見立てたクレードルで“疲れたから座って休む”という人間的な演出にしている。これが燃料電池なら“おなかが空いたから燃料を食べる”となり、より人間的な演出になる。アルコール(エタノール)を分解して水(おしっこ)や水蒸気(おなら)になるというのも、人間っぽくていい」(ソニー)。


イスに見立てた充電クレードルで“座って休む”SDR-4X II。燃料電池ならば“おなかが空いたら食べる”となり、より人間的な演出に

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[西坂真人, ITmedia]

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