News 2003年4月9日 06:14 PM 更新

レスキューロボットの使命〜ロボットが世界を救う(1/4)

ROBODEX2003で「レスキューロボットの使命〜ロボットが世界を救う」と題するセッションが開催された。今回のROBODEXはロボットの一般への広がりを感じさせた一方、妙に「媚びた」ところも見え、ちょっと“痛い”印象を抱かされた。だが、このセッションに登場した研究者たちの情熱を見て、まだまだ大丈夫だと感じさせられた

 ROBODEX2003では、展示のほかに「ロボットと暮らす新しい社会、始まる」をメインテーマとしたフォーラムも開催されていた。そして、4月4日には「レスキューロボットの使命〜ロボットが世界を救う。レスキューロボット開発から人道的活動へ〜」と銘打ったセッションが開催された。

 パネリストは、NPO国際レスキューシステム研究機構神戸ラボラトリー所長で神戸大学の助教授である田所諭(たどころさとし)氏、千葉大学工学部教授の野波健蔵(のなみけんぞう)氏、三菱重工神戸造船所の磯崎芳史(いそざきよしふみ)氏の3人。

 前半は、それぞれの方が研究なさっているものについて、その背景を含めての紹介だ。

 まず、田所氏。阪神・淡路大震災のあと、このままではいけないとい立ち上がったのが文部科学省の「大都市大震災軽減化特別プロジェクト(大大特プロジェクト)」だ。

 これは「大震災における緊急災害対応(人命救助等)のための人体検索・情報 収集・配信等を支援することを目的とした、ロボット・インテリジェントセンサ・携帯端末・ヒューマンインターフェース等の研究開発を行う」というもの。

 ロボットのみならず、携帯電話などを災害時にどのように役立てるか、あるいは(ちょうど、会場にも備えつけられていた)監視カメラのようなものも使えるようにできないか、というようなことを研究している。国際レスキューシステム研究機構というのは、そのためのコア組織であり、神戸と川崎にラボラトリーがある。田所氏はその神戸ラボラトリー所長であると同時に、機構そのものの会長でもある。

 同氏は、現在、いくつもの大学で研究されているレスキューロボットを紹介した。例えばガレキの間を縫うように進めるヘビ型ロボット、その上をジャンプで飛び越えるロボット(*1)、空中から見回す飛行船型のロボットなどいったものだ。

 これらはみな、カメラやマイクロホンを使って、生き埋めになっている被災者を探し出すことが目的。このような人たちは、大声で助けを求めているものなのだそうだが、ガレキの山の中からでは、なかなか外に声が届かないのだそうだ。でも、ヘビなどである程度のところまで近づければ、声を拾うことができる。

 野波氏の研究は地雷処理のためのロボットだ。現在、地球上には1億個の地雷が埋められていると推定されている。そして、日常的にそれに脅かされている人々がたくさんいる。この負の遺産を、先端的なロボティクスを使って、人道的な立場から処理しようというのが、人間の安全保障支援ロボティックスだ。


地雷のいろいろ

 危険環境で使われるロボットには、極限作業ロボットというものもある。これは、宇宙開発、惑星探査、あるいは海洋開発といったもので、「どちらかというと先進国が使うロボット」(野波氏)である。

 一方、人間の安全保障支援ロボティックスは、「いま、こういうフォーラムをやっている間にも命がなくなっていく。それをなんとか救うというような観点のロボット」であり、根本的なところで大きな違いがある。


この図で赤で示されたのが地雷で汚染されている国だ

 このような問題に対して、日本政府は「ようやく積極的に取り組もう」としており、文部科学省、経済産業省、外務省がいろんなプロジェクトを立ち上げている。全部合わせれば100億円弱の予算規模だ。

 野波氏自身は、千葉大学で、クモのような形をした多足型ロボットを開発している。触覚のように突き出したセンサーで、地雷を探知し、これを見つけるとGPSによって得られたその位置情報をホストコンピュータに送信するとともに、そこの地面にスプレーでペイントする。


*1 東京工業大学塚越秀行助教授による。詳しくはこのサイトを参照のこと。ジャンプする動画は必見だ。

[こばやしゆたか, ITmedia]

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