News 2003年4月9日 06:14 PM 更新

レスキューロボットの使命〜ロボットが世界を救う(3/4)


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野波:そこで、私は報告書をもって霞ヶ関とか議員会館とか、週に何回も回って、こういう問題に非常に関心のある国会議員の方ですとか、与党野党関係なく、とにかく手弁当でお願いしました。

 そうしたところ、世の中で、日本以外の国では、精力的に国家プロジェクトをやっているってことがだんだん分かっていただけたようです。それで、そろそろかな、と思ったところに、9.11の世界貿易センターのテロ事件が発生して。これが、ある種きっかけとなって、それから国は、一気に急いでやってほしいというようになりました。

田所:日本はODAとか、いろんな形で、発展途上国にお金を出しています。でも、日本は技術立国なんだから、ROBODEXで紹介されるようなこれだけの技術を持っているんだから、お金じゃなくて技術で国際貢献するというのが、本来あるべき姿だと思うんですね。

 そうなると、それができるような研究費を配るようなメカニズムとかをちゃんと整備してほしいというのが国に望むところになりますね。

 次に磯崎さんにおうかがいします。

 おそらく、原子力に対応するロボットというのは、ずっといろんな形で研究開発を進められてきたのだと思います。そういう一品もののようなロボットではなく、MARS-iのように製品として広く市販されるものを売っていきたいとお考えになったのは、どのようなところにあるのですか。

磯崎:三菱重工という会社は、加圧水型(PWR)(*2)という原子力発電所を、設計からアフターサービスまで一貫してやっている会社です。1970年の美浜一号機からずっと手がけております。

 原子力発電所というのは「メインテナンスをしようとすると放射線が高くて人が近づけない」という特殊環境でございますので、プラントの運転開始と同時にロボットを開発というのが続いております。

 そのような経緯から、MARS-iに行ったのは、先程も申し上げましたJCOの事故がいちばんの契機であります。われわれ原子力に携わっているものにとって、臨界事故を起こして人命を落とすというのは、痛恨の出来事でございます。あってはならないことです。なおかつ、状況が分からなかったために、消防士のかたが大量被曝されてしまった。これも痛恨の出来事でございます。

 そこで、このプロジェクトが立ち上がったわけですが、やはり一品ものの開発品という位置付けで作ってしまった部分がございまして、なかなか受け入れてもらえない。皆さんの広いニーズに基づいたものを作って、たくさん使っていただきたいというのが、ベースにございます。

 もうひとつ。私も、阪神・淡路大震災を経験いたしました。明石大橋のたもとに住んでおりまして、ちょうど震源地の真横で、いまも地鳴りが耳から離れません。そして、いちばん被害の多かった長田は、毎日通勤のたびに通っているところでありました。あの経験がありますので、会社としても個人としても、何かできることがあるのではないかという気持ちがあります。

田所:今作られているロボットというものを、実際に社会に普及させていく。例えば、消防で使っていただくとか、そういったことが必要になってくると思います。(三菱重工は)ROBODEXではパーソナルロボットという切り口で技術をご紹介いただいていますけど、それが、どうつながっていくのでしょう。

磯崎:そうですね。三菱重工は、アトムのところにマニピュレータとか、ホームユースロボットのWakamaruを展示しております。


ホームユースロボットのWakamaru

しかし、それらとこのMARS-iとは少し位置付けが違います。あちらは、とにかくいろいろ開発に入れて「新しいものを」というコンセプトですけれど、こちらは「とにかくいまある技術でいいんだ、その組み合わせだけでいいんだ」ということになります。

 私もいろいろな発電所でいろいろな工事をするんですが、とにかく「もの」がないとなにもできないんですね。MARS-iが皆さんのご要望に100点で応えられるとは思っていません。だけど、40点であっても、これを導入することで、もしかしたら人の命が救えるのではないか、そういう気持ちをこめて発売に踏み切っております。ただ、まだ受注はできておりません。


*2 原子力発電所の種類の一つ。このサイト など参照。

[こばやしゆたか, ITmedia]

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