News 2003年4月15日 07:22 PM 更新

そろそろ買いどき? 三菱、フロントガラスに張れる1万円台の小型ETC

三菱電機が、国内初のフロントガラス張り付けタイプや国内最小タイプの廉価版などETC車載器の新製品3機種を発表。3機種すべてが2万円を切るなど、コストパフォーマンスの高さも魅力だ。あらためて、ETCのメリットを料金面から考察してみた

 三菱電機は4月15日、ETC車載器の新製品として、アンテナ内蔵型「EP-222」と、アンテナ/スピーカー分離型「EP-422」「EP-402」の3機種を4月25日から発売すると発表した。「EP-222は国内初のフロントガラス張り付けタイプ、EP-400シリーズは、アンテナ/スピーカー分離型で国内最小サイズを実現した」(同社)。価格はEP-222が1万6800円、EP-402が1万7800円、EP-422が1万9800円と、3機種すべてが2万円を切るなど、コストパフォーマンスも高めた。


ETC車載器の新製品3機種。アンテナ内蔵型「EP-222」と、アンテナ/スピーカー分離型「EP-402」「EP-422」

 2001年3月からサービスが開始された料金自動支払いシステム「ETC(Electronic Toll Collection System)」で使うETC車載器は、ETC信号を受信するためのアンテナを本体に内蔵した「アンテナ内蔵型」と、本体とアンテナ/音声ユニットなどが別になった「アンテナ分離型」があるが、今回は両タイプで新製品が用意された。

 アンテナ内蔵型のEP-222は、電子回路の高密度化や表示機能の簡略化などで本体サイズを小型/軽量化し、タバコの箱よりも1回り小さい75(幅)×16(高さ)×103(奥行き)で重さ80グラムの薄型コンパクトボディを実現。ルームミラー裏側のフロントガラス面に張り付けることが可能となった。「ダッシュボードの上に設置していた従来品に比べて視界を妨げずに済む。ユーザーアンケートでもダッシュボード上には極力設置したくないという意見が多かった」(同社)。


アンテナ内蔵型のEP-222は、ルームミラー裏側のフロントガラス面に張り付けることが可能

 アンテナ/スピーカー分離型「EP-422」「EP-402」は、昨年4月に発表した日本最小のETC車載器「E-400」シリーズの廉価版。70(幅)×15(高さ)×115(奥行き)という日本最小サイズは維持しながら、専用部品の開発や電子回路の高密度化によって、3万円前後した従来品から1万円以上もコストダウンを図った。


従来品から1万円以上もコストダウンを図った「EP-422」

 EP-422は、本体/アンテナ/音声ユニットがセットになったもの。本体を薄型にして車内での設置自由度を高めたほか、視点移動が少なくて済む音声ガイドが利用できる。オプションのナビ接続コードを使えば、カーナビゲーションシステムから表示と音声で料金案内を受けることも可能。EP-402は同社カーナビゲーションシステム専用機種で、音声ユニットを省略したモデルだ。

今年はETC普及元年になる?

 道路システム高度化推進機構(ORSE)によると、ETC車載器のセットアップ件数は今年3月末で81万1534件と累計80万件を突破。さらに3月単月では9万5206件と過去最高の伸びとなった。

 三菱電機 自動車機器事業本部副本部長の上田敦氏は「ETCの普及は遅れているとのイメージがこれまではあった。だが、今年度中にすべての料金所にETCを設置するなど3カ年計画を1年に前倒しした施策や、ETC前払割引サービス、リース制度の設置などで、今年は“ETC普及元年”になるのではとみている。新製品では、フロントガラスに張り付けられるといった新提案や、大幅なコストダウンを図っている。トップメーカーとして、要素技術から最終製品までトータルでサポートし、市場シェア30%を確保したい」と意気込みを語る。


同社自動車機器事業本部副本部長の上田敦氏

ETC vs 高速回数券、勝者は……

 これまでETCサービスが思うように普及しなかった理由は、決して安くないETC車載器をわざわざ設置するだけのメリットを、ユーザーに与えられなかったことにある。その1つが「料金」だ。

 ETCサービスでは昨年7月から、事前に一定額の料金を前払いすることで、割り引き相当額を含めた分まで利用可能な「ETC前払割引サービス」をスタートしている。前払い料金は5万円と1万円の2種類から選択でき、5万円で5万8000円分(8000円お得、割引率約14%)、1万円で1万500円分(500円お得、同約5%)が利用可能だ。

 一見するとお得に見えるこのサービスだが、その割引率はプリペイドカード形式の「ハイウェイカード(ハイカ)」と同じ。2001年3月のETC運用開始から1年以上経って、ようやくハイカと肩を並べただけなのだ。これでは、ETC普及が遅々として進まないのも当然だ。

 ただし2万円と5万円の高額ハイカは、偽造が多発したことから今年2月までで販売が中止となり、これまでに発行された分も2004年3月(予定)には利用できなくなる。これによって、5万円前払い時に8000円分がお得になるというETC前払割引サービスの優位性が注目され出した。ハイカ偽造問題によってやっとETCが脚光を浴び始めたとは、なんとも皮肉な結果だ。

 だがこれも、回数券が利用できる区間になると、話は別だ。

 例えば、現金では700円かかる首都高速(東京線)料金も、回数券(100回券)を利用すれば1枚あたりの単価は約570円となる。さらに金券ショップでは、この価格で1枚からバラで購入することが可能だ。このケースでの割引率は、ETC前払割引サービス(約14%)を上回る約18%となる。他の有料道路の回数券も、おおむね18−20%引きで購入できる。つまり、現状の割引サービスでは、料金面でユーザーにETCサービスをアピールするには弱いのだ。

 国土交通省が打ち出した平成15年度の道路政策では、有料道路の有効活用を推進するために、ETC限定の長距離/夜間割引サービスの実施といった施策が盛り込まれた。また、ハイウェイカードや回数券は早期に廃止して、ETCに集約することも明示している。

 ETC車載器の取り付け工賃はショップによって差があるものの、だいたい国産車で3000−5000円といったところ。これに車載器へ車検証・車両情報などを書き込むセットアップ代が約3000円ほどかかる。本体料金を含めたトータルの設置コストは、コストダウンを図った今回の新製品をもってしても2万5000円前後となるのだ。これをETC前払割引サービスだけでペイしようとすると、15万円以上も有料道路を使わなくてはいけない。

 “使うメリット”をユーザーが認識した「カーナビゲーションシステム」は、すでに1000万台を突破している。ETC専用レーンによって料金所の通過時間が大幅にスピードアップし、それが高速道路の渋滞緩和につながる――。この、料金面以外でのETCの優位性に、ユーザーが“使うメリット”を感じた時、本当の意味で“ETC普及元年”が訪れるのかもしれない。

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[西坂真人, ITmedia]

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