News 2003年4月16日 12:37 PM 更新

記録型DVDは「全規格対応」ドライブで決まりか(2/2)


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 「確かに手間がかかるのは事実です。でも全フォーマットに対応したことで、市場の全てがターゲットになりますから、その分、ビジネスチャンスは増えます。われわれとしても、従来3チップ構成だった回路を2チップにしてコストダウンを図るようなことは当然やっていますが、結局はドライブの数を売ることが一番効果あるんです」(西村氏)。

 事実、GSA-4040Bの生産台数は月50万台を計画しているという。DVD MultiのGMA-4020Bは月10万台だから実に5倍の生産規模である。

 「われわれの認識では、記録型DVDドライブの市場規模は昨年が500万台くらいで、今年はその3倍強になると見ています。ですから月産50万台も妥当な数字だと思っています」(西村氏)。

 日立LGはOEM専業メーカーのため、実際にOEM先から出荷されるドライブすべてが全規格対応になるかは分からないが、日立LGがこれだけの需要を見込んでいるのは事実だ。また西村氏は、DVD Multiを+Rや+RWに対応させるのと、デュアルドライブをDVD-RAMに対応させるのとでは、困難さの度合いがまったく異なるという。

 「プラスのメディアは、基本的にマイナスと同じですが、DVD-RAMはメディアの構造や性質が全く異なります。われわれが例えばデュアルドライブをやっていて、今回新たにDVD-RAMをサポートしたなら相当苦しんだかもしれませんが、すでにDVD Multiというベースがありましたので、そこにプラスのメディアを加えることはそれほど困難ではありませんでした」(西村氏)。

 今回の全規格対応ドライブでは、キーコンポーネントであるピックアップを新たに開発しているが、実際はDVD Multiのピックアップをブラッシュアップする程度で済んだという。つまり、すでにDVD Multiを世に出している日立LGからすれば、プラスとマイナスのメディアがよく似ているため、検証の手間こそ増えるものの全規格対応ドライブの開発コストそのものはさほど高くなかったというわけだ。

 さて、ユーザーが最も気になるのは全規格対応ドライブの販売価格だろう。2003年4月現在、内蔵型DVD Multiドライブの販売価格は2万5000円−3万円程度である。全規格対応ドライブもその価格帯プラスα程度に収まるのだろうか?

 「(全規格対応ドライブという)世界初のドライブですから、数カ月間はプレミア価格で売りたいのはもちろんですが、シングルフォーマットのドライブと十分戦っていけるような価格設定にしないといけないのも事実です。ドライブメーカーは倍速競争をやりながら、裏では価格競争をやっていますから、OEMメーカーとしては(ある程度安くしないと)なかなか受け入れられない現実もあります」(西村氏)。

一部サポートしていないメディアも

 GSA-4040Bは“全規格対応”ドライブをうたうが、正確にはサポートしていないメディアも存在する。それは、カートリッジ付きのDVD-RAMメディアと、昨年末に規格化された4倍速DVD+RWメディアだ。

 なぜこの2つのメディアがサポートされなかったのか? そのあたりの事情を尋ねてみた。

 「現行のDVD Multi(GMA-4020B)もカートリッジ付きメディアに対応していなかったので、そのような反応は当然ありました。ただユーザーは、メディアの外見が異なることに対して抵抗が大きいんです。『どうして同じリライタブルメディアなのにDVD-RAMにだけカートリッジがあるの』と。また基本的にPCメーカーもカートリッジ付きを嫌いますので、今回もサポートしませんでした」。


対応しているのはDVD-R/-RW/-RAM(カートリッジなし)とDVD+R/+RWの5種類。カートリッジ付きのDVD-RAMと4倍速DVD+RWだけが未対応

 一方、DVD+RWの4倍速書き込みをサポートしなかった理由についてはどうなのだろう。

 「実際、プラスのメディアはDVD+Rが使われることが多くて、DVD+RWを頻繁に使うことは、比較的少ないんじゃないかと考えています。また、DVD-RW側はまだ4倍速になっていませんから、焦ってDVD+RW側を4倍速にするよりは商品としてのバランスを優先しました」。

アフターマーケット重視でブランドの認知を目指す

 全規格対応ドライブの出荷開始は6月とアナウンスされている。

 DVD MultiドライブのGMA-4020Bでは、5月に出荷を開始したものの秋頃まで品薄状態が続き、なかなかコンシューマー向けのアフターマーケットには製品が出回らなかった。今回は大丈夫なのだろうか?

 「DVD Multiの時は、OEM先への出荷数が予想以上に増えたりして、なかなかアフターマーケットにモノを回せませんでした。でも、一般ユーザーにアピールするのはやはりアフターマーケットです。このマーケットにも十分に製品を出荷して“日立LGここにありき”といわれるようにしたい。そして、記録型DVDドライブ売り場の一角を占められるような状況に持っていきたいと考えています」(西村氏)。

 西村氏によれば、すでに全規格対応ドライブは国内PCメーカーからオファーがあり、「全規格対応」のままドライブを出荷することが決まっているという。順調にいけば、全規格対応ドライブを搭載したパソコンが夏モデルとしてお目見えすることになりそうだ。

 デスクトップ用ハーフハイトのドライブで全ての規格に対応してしまった後は、ノートパソコンで使える全規格対応ドライブなども気になるところだ。最後にポータブル製品の予定なども聞いてみた。

 「ポータブルをやらないことはないんですが、まずはハーフハイトの方をきっちり押さえたいと考えています。われわれは、ハーフハイトの市場は3倍以上伸びると認識しているので、この市場を優先順位を上げてやっていきたいと考えています」。

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▼ 日立製作所

[浜野高正, ITmedia]

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