News 2003年4月18日 11:59 PM 更新

「多機能高品質でなければGIGABYTE製品ではない」-日本ギガバイトインタビュー

今年1月に日本ギガバイト社長に就任した林宏宇氏に、日本市場でのこれからの方針についてインタビュー。その中で、林氏は「GIGABYTEがnForce2搭載マザーを検討中」であることを明らかにした

 これまで、日本ギガバイトのトップは、台湾本社、もしくは外部から招聘(しょうへい)されるのが恒例であったが、林氏は長年、日本で長年マーケティングに携わってきた「日本ギガバイトのたたき上げ」。GIGABYTEで日本のPC事情を最も把握している彼の舵取りで、これからのGIGABAITEはどのように変化していくのだろうか。林氏の考える日本市場の現状とこれからの製品展開について伺った。


日本GIGABYTE代表取締役 社長 林宏宇氏。「経世済民」「将在外君命有所不従」など、故事漢文を駆使して説明する彼の趣味は「歴史」。「老子」に関する造詣も深い、らしい

自作ユーザーに誘導されるPCパーツ売れ筋トレンド

 「GIGABYTE Expo SPRING2003 in 秋葉原」開催に先立って行われた報道向け製品説明会で、林氏は「GIGABYTEの製品は購入した人が幸せになれる、高機能高品質でなければならない」と語っている。

 この言葉の裏側に、ベーシックスペックの低価格マザーボードに対する批判を嗅ぎ取った読者は少なからずいただろう。

 実際、日本市場における「多機能高価格マザー」と「基本機能低価格マザー」の選択は、マザーボードベンダーやPCパーツショップにとって、常に悩みの種であった。

 もっとも従来は、メジャーマザーボードベンダーの多機能高価格路線に、ベンチャーベンダーが最小限の機能を持った低価格製品で対抗するという構図だった。

 ところが最近では、高機能マザーをラインアップに持っているベンダーが日本市場にはベーシックマザーだけを出荷したり、メジャーベンダーのASUSTeK COMPUTERが低価格でシンプルな構成のX-Seriesを投入するなど、日本市場の流れは「低価格なベーシックマザー」路線にシフトしつつある印象がある。

 この状況でGIGABYTEが高機能路線を推進する理由が「ユーザーが持っているGIGABYTEのイメージを守るため」(林氏)である。

 林氏によれば、GIGABYTEが多機能路線を進むようになったのは、自ら「自作PCマニアだった」林氏が「自分で欲しいと思った機能を、GIGABYTE製品に盛り込むように台湾本社に要求した」のがきっかけだった。

 その林氏は、海外ベンダーが口をそろえる「日本のPCパーツの特殊性」の形成には、「日本のPCパーツ市場が、自作を趣味として楽しむユーザーにリードされている」事情が大きく影響していると見ている。  「PC市場をリードするユーザーは、実用性よりも自作そのものを楽しむことを大事にする。そして彼らの意見は、口コミやネットで多くのユーザーに多大な影響を与えている。そうなると、PCパーツショップは彼らのリクエストに応えるために、ベンダーに自作を楽しむためのパーツを要求してくる」というのが、林氏の考える「日本の特殊性」が形成される過程だ。

 「そんな自作重視ユーザーがGIGABYTEにイメージするのは、DualBIOSや、Xpress、充実したインタフェースという高機能マザー。そのイメージを壊すような製品はGIGABYTEでは許されない」(林氏)と、これからも高機能路線を推進していくことを強調した。

 ちなみに、台湾のPC事情はどうなのか。林氏によると「台湾のPCパーツ市場規模は日本の2倍。これは高校生や大学生のほとんどが自分でPCを自作するため。彼らの授業ではPCが必須なので、できるだけ安く作ろうとする。だから、最低限の価格で必要な機能を満たす実用本位のパーツが主流になっている」という。

オーバークロックビジネスは今後見直しの予定

 林氏は日本市場の特殊性として「製品が長く使えることを重視する」ことも挙げている。この要求に応えた典型的な例が、最近話題になった「オーバークロックビジネス」ともいうべき、GA-GE800を始めとする製品だ(ただし、この手の製品はGIGABYTEだけでなく、ほかのベンダーからも販売されている)。

 これについて、林氏は「たしかに、いいビジネスではなかった」と、この種の製品戦略について見直していることを明らかにした。GIGABYTE社内では、FSB800MHzのCPUとDDR400メモリを使って動作検証を行っているが、これからも「FSB800MHzの動作については保証しない」(林氏)としている。

nForce2搭載マザーを現在検討中

 Intel 875P搭載マザーが発表され、まもなくSpringdale-Gチップセットの登場も控えている。そして、GIGABYTEはApollo KT400Aを搭載したマザーボードも発売した。しかし、この先のチップセットロードマップを見てみると、DDR2メモリが実用化される2004年まで登場しない見通し。AMD製次期主力CPU「Athlon 64」用チップセットも登場は今年後半と予想されている。

 新しいチップセットの登場に合わせて、製品ラインアップを更新していくマザーボードビジネスにとって、この空白は足かせになるのではないだろうか。

 林氏は「残念ながら、マザーボードビジネスのスケジュールは、インテルなりAMDなりチップベンダーに支配されてしまう」と述べた上で、「ただ、すべてのマザーボードベンダーとってこの問題は共通である」と、ベンダー間の競争においてはそれほど深刻な影響にはならないとしている。

 また、林氏は、Pentium 4のシステムバスに関するライセンスの問題を解決したVIA technologiesも、これから本格的に製品を投入してくる可能性を示唆した。

 気になるのは、AMD製CPU向けマザーボード。Apollo KT400Aが登場したものの、Apollo KT400のマイナーバージョンアップという感はぬぐえない。また、市場の流れはデュアルメモリをサポートしたnForce2にシフトしている。

 このあたりの事情について、林氏は「現在、GIGABYTEはnForce2の評価を行っている。このチップセットを搭載した製品が登場する可能性もゼロではない」と、GIGABYTEがnForce2搭載マザーを検討中であることを明らかにした。

IT部門の統合で法人市場を拡大する

 台湾GIGABYTEは4月14日に大きな組織改変を行い、これまで分かれていた、マザーボードやビデオカードのセールス部隊と、ネットワークやシステムのセールス部隊が統合された。これに伴ない、マザーボードやビデオカードのセールス部隊に所属していた日本ギガバイトは、法人に対するシステムビジネスも本格的に開始することになる。ミッションの拡大ともに人員の拡大も予定されているなど、2003年は日本ギガバイトにとって、大きな変化が求められる一年になる。

 日本に精通した新しい指揮官のもと、未知の領域にどのように挑んでいくのか。しばし停滞するマザーボードビジネスに引きずられるか。それとも法人ビジネスで躍進するのか。このあたりの成否が彼らの命運を左右するだろう。

関連記事
▼ 週末のIntel 875PマザーはGIGABYTEとMSIが狙いめ
▼ GIGABYTEのCanterwoodマザー、お得意の“多機能路線”で登場

関連リンク
▼ 日本ギガバイト

[長浜和也, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.