News:アンカーデスク 2003年5月13日 12:54 PM 更新

期限切れドメイン取得――その“けもの道”(1/3)

ドメイン名の取得といえば、空いているドメインを早い者勝ちで狙うのが正攻法だ。しかし、一度は他人が取得したドメイン名を取得できることもある。違法なことをするわけではない。更新する気のないドメインを探しだし、期限切れのスキを狙ってゲットするのだ

 かつて、ドメイン名を取得するにはそれなりの手間とお金がかかったものである。

 はじめて私がドメイン名というものを取得したのは、比較的「.com」や「.net」を取ることがポピュラーになりつつあった1996年頃のことだったように記憶しているが、それでもけっこう費用と手間がかかったものである(当時は日本のドメイン名は、制限が多いので取得しにくかった)。

 確か、2年で100ドルほどのドメイン維持費用(これは当時、InterNICへ支払う)の他に、年間数十ドルほどのドメイン名保管料が必要で、初期費用はトータルで200ドル近かったように思う。

 ドメイン名保管料が必要だったのは、当時の日本では、個人がまだ気軽にサーバを持てるような回線環境でもなかったので、個人でドメイン名を使うにはネームサーバや転送などを提供してくれるサービスが必要だったからである。

 その後、1998年に米商務省が「インターネットの名前及びアドレスの技術的管理の改善についての提案」という、いわゆる「グリーンペーパー」と呼ばれる提案書を発表。この中でドメイン名登録料が引き下げられることが提案され、ドメイン名の維持費用は年間35ドルとなった。

ドメイン獲得狂騒の“夢の跡”

 グリーンペーパーの中ではドメイン名に競争原理を導入することも提案されていて、1999年より、この方針に則ってcomやnet、orgのいわゆるgTLDについては、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers=ドメイン名やIPアドレスを全世界的に管理する組織)と契約したレジストラがドメイン名を登録できるようになった。

 レジストラ乱立時代の始まりである。

 そうして雨後のたけのこのごとくレジストラができると、目論見どおり価格競争も行われるようになった。年間35ドルだったドメイン名維持費用は、急速に下落。安いところでは10ドル台のレジストラまで登場するようになった。

 さて、この頃にITブームも頂点を迎えるわけだが、安くなったドメイン名が、一方で先行取得したものが有利であることが知れ渡るのにもさして時間はかからなかった。

 ドメイン名はある種の財産とも言える。そしてITブームは無限に続くように思われた。人々はこぞって使えそうなドメインを取得しまくった。もちろん、この中には転売をもくろむ人も少なからずいたのである。

 実際、有名人にちなんだドメイン名を巡る紛争や、驚くほど高額でドメイン名が買い取られたという話は、ニュースなどでも報道されたから、覚えている人も多いだろう。

 750万ドルという途方もない金額でbusiness.comが売れたのは有名な話だが、一方で3800万ドルという破格の条件を提示されたにもかかわらず、首をタテに振らなかった人もいる。

 他の事業化計画があったために条件に合わなかったのが原因となっているが、このサイトの現在の姿を見る限り、他人事ながら「売ってしまえば良かったのに」と思うのは、私ばかりではあるまい。

 話が横にそれたが、取得費用が安くなったとはいえ、ドメイン名の維持は無料ではない。数多くのドメイン名を保持していれば、それだけ費用がかさむのは当然だ。その上、いくらなんでも「1234567891234567….com」なんていうドメイン名が売れるはずもない(取った本人は売れると思っていたのだろうが)。

 つまり、調子に乗ってドメイン名を取りまくったものの、これらを保持するためにかなりの維持費用を払い続けなければならなくなった人がかなりいるわけである。維持の費用はレジストラによっても違うが、1ドメイン名あたり、年間でおよそ数〜数十ドルといったところである。

 早い者勝ちとはいえ、その権利はあくまでも「料金を払って更新し続けている限り」という条件が付く。ITブームが終焉した現在では、更新費用を支払えない人も当然出てくる。更新しなければ、ドメイン名は期限切れとなる。

 では、ドメイン名の有効期限が切れたらどうなるのだろうか? 当然の疑問がわいてくるはずだ。

[河野寿, ITmedia]

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