News 2003年5月16日 06:16 PM 更新

Longhornにたどり着くまでの道のり――おさらい編(1/2)

Longhornなど、WinHECで示された将来的なWindows製品へのロードマップ。それを一度整理して、そのスケジュールの見通しや製品ポイントについて解説しよう

 Longhornは、WindowsのクライアントOSとしては、Windows XPと同じようなメジャーアップデートとなる。ただし、コアとなるNTカーネルという中核部分(スレッド管理、メモリ管理)に関しては、多少はチューンナップされるものの、現在のWindows XPとほぼ同じと見ていいだろう。

 またLonghornでは、Windows Server 2003と同じように、「OSのコンポーネント化」が進められる。OSのコア機能として採用されるのは、Windows XPをチューンナップしたものだ。CPUのプロセス管理やメモリ管理などのOSカーネルについても、WindowsXPをベースとしたもので、アーキテクチャが大幅に変わるということはないだろう。

 結局、Longhornで大きく変わるのはOSカーネルより上の部分のアーキテクチャというわけだ。

 このレイヤーでは、アーキテクチャが大幅に変わり、多くのプログラムがコンポーネント化される。これにより、WindowsXPと同様にLonghornでも多くの派生品OSがリリースされることになるはずだ。

 また、コンポーネント化により各コンポーネントのアップデートも容易になる。

 大きく変わるのは、カーネル以上の部分となるシステムサービス(Win32API群)と各種デバイスドライバだ。例えば、グラフィックユーザーインタフェース(GUI)を担当するAPIは、GDIからDirectX API(Desktop Composition Engine=DCE)へと進化していく。これにより、デスクトップのGUIとして3Dグラフィックやムービーなどの機能が取り込まれることになる(詳しくはLonghornの真実(1)――グラフィックとディスプレイ周り参照)。

 ドライバについては、WindowsXPリリース後にPCに標準採用されてきたデバイスがサポート(シリアルATAやUSB2.0、PCI Expressなど)され、さらにLonghornの機能強化のため、ドライバレベルに新しい機能――HOME NetworkでのQOSのサポート、DVDの各種フォーマットのサポート――が追加されている。

 それ以上に大きな変化があるのは、今までのWDMではなくWDMをも包含した新しいドライバ開発のプラットフォーム(Longhorn Driver Framework)を提供していることだ。これにより、サードパーティのドライバ開発のクオリティをアップさせ、システムのクラッシュを少なくさせる。


Longhornは、PCメーカーがいくつかのモジュールを選択してインストールすることができる。Tablet PC版、Media Center版もLonghorn派生品としてリリースされる。Windows Pre-Install Environment(WinPE)は、Windowsベースのブート環境。MSではPCのブートをMS-DOSからWinPEへと移行を進めたいため、PCメーカーにWinPEの採用を働きかけている

Longhornのリリースはいつになるのか?

 もっとも気になるのはLonghornのがいつわれわれの手に届くのかだが、リリースに関しては、2005年になるとのことがWinHECにおいて明言された。

 クライアントOSの開発を担当しているMicrosoft Windows Platforms Groupの上級副社長 Will Poole氏は「LonghornはゲームのAPIとして考えられてきたDirectXをGUIのエンジンとして使用することで、今まで得られなかった新しいユーザーエクスペリエンスを提供するようになるだろう。多くの開発者やユーザーがLonghornのリリースがいつになるかということを気にしていますが、リリースに関しては2005年になるでしょう」と語っている(Poole氏の講演記事)。

 Microsoft社が考えるLonghornのスケジュールでは、2003年中にαビルドのMilestone6(M6)とM7がリリースされる模様だ。10月末に行われる開発者セミナーのProfessional Developer Conference(PDC)ではプレβ版ともいえるM7が参加者に配布されることになるだろう。なお、今回のWinHECでデモされたLonghornは、M5(ビルド4015)だった。

 2004年に入るとβ1(春ごろ)、β2(夏〜秋)とベータ版のリリースが続く。2004年にリリースされるベータ版に関しては、数万単位のユーザーにベータ版が配布されることになるだろう(おそらくはβ2以降が対象となる)。

 そして、2005年にはLonghornがリリースされることになっているが、今までのMicrosoft社の開発スケジュールからいって、リリースは遅れ気味になるのではないだろうか。

 2005年のどのタイミングかというのは、今後のβ版がリリースされるスケジュールに左右される。Microsoft社の決算期を考えると、夏までにLonghornをリリースして、売り上げを伸ばしたいだろう。このため、4月−7月というのがベストなタイミングだ(米国での新学期が9月となるため、夏にはLonghornをプリインストールPCを市場に供給したいと考えるのが普通だ)。


 ただし、夏にプリインストールモデルを市場に供給するためには、PCメーカーにOSの最終版を手渡す時期を最短でもその2カ月前、できれば3カ月前ぐらいにしたい。このため、Longhornの最終版は4月頃には完成している必要がある。

[山本雅史, ITmedia]

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