News:アンカーデスク 2003年5月19日 09:29 AM 更新

ちょっとした騒音から逃げる方法(2/2)


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 現在NC10は既に“ディスコン”で、後継機としてNC11が出ている。ドライブユニットが小型になり、挿入部分も3種類のサイズが付属するため、耳の穴の奥までズコッと入るようになった。

 前モデルのぎっちり感がなく遮音性は多少減少したが、フィット感はずっとよくなり、長時間の使用にも耐えられるようになった。飛行機などに乗るときはNC10のほうが快適だが、それ以外はNC11でも十分だ。


NC10から大幅に小型化されたNC11

 遮音という意味では、耳全体をすっぽり覆ってしまう密閉型のヘッドフォンも同じような効果がある。しかし基本的に筆者は、オーバーヘッド型、特に密閉式のものは使わない。常時眼鏡をかけているせいか、どうも左右からの締め付けで頭が痛くなっちゃうのである。インナーイヤータイプで遮音できるから、ノイズキャンセリングヘッドフォンが好きなのだ。

 オレは頭痛くならないよ、と反論する方もいるだろう。しかしこの事情を納得して貰うためには、今まで自分でも言及を避けてきた事実に直面せざるを得ない。どうも筆者は、人より頭がデカいみたいなんである。ちきしょうオマエら、とうとうオレにココまで言わせたな(オレが勝手に言いました)。

 だがそれを押してでも使いたいノイズキャンセリングヘッドフォンが出てきた。SennheiserのPXC 250である。初めて音を聴いたのは今年始めのInternational CES 2003会場だが、先月あたりから国内でも販売されている。


小型オーバーヘッドながらもノイズキャンセル機能を持つPXC 250

 Sennheiser独自のNoiseGardという技術によるキャンセリングは、効き具合も独特だ。周りの音すべてをカットするのではなく、人の話し声などはそこそこの音量で入ってくる。ノイズは消したいが人の呼びかけには反応したい、というような用途には便利だし、何よりもヘッドフォンとして音質的に満足できる点は大きい。

 難点を上げるならば、中間にある電池ボックスが大きすぎて、ケーブルの取り回しがめんどくさいことだろうか。

耳を守るための手段

 筆者は仕事で集中したいときの便利な道具として、ノイズキャンセリングヘッドフォンを利用しているが、本質的には電車の中で音楽を聴くような用途が想定されている。

 騒音の中で音楽を聴こうとすると、ついついボリュームを上げがちだが、音楽を大きくしたからといってノイズが消えるわけではない。それらは音楽に押されて知覚できなくなっただけで、音楽の音圧にプラスされているのである。

 電車内での音漏れは、他人に迷惑だとして語られることが多い。しかし筆者としては、本人が難聴になることのほうが心配だ。特に10代から20代の人たちは、多少感度が落ちてもしばらく時間をおけば回復するので、それほど大げさに考えていないかもしれない。

 しかし慢性的に大音量で聞き続けていると、次第に高音域の方から感度が落ちてくる。人の話を何度も聞き返したり、イコライザがあれば必ず高音域を持ち上げないと気が済まないという人は、既にその傾向があるかもしれない。

 心当たりのある人は、今からでも音量に気を付けた方がいい。今は楽しくとも、40代、50代になったときに好きな音楽が綺麗に聞こえなくなるのは、悲しいだろう。

 電車内しかゆっくり音楽を聴く暇がないという人は、ちょっと見た目が大げさになるが密閉型のヘッドフォンを使うか、もしくはノイズキャンセリングヘッドフォンをお勧めしたい。交通機関の場合、外側に対する騒音対策は住民運動などによって行なわれることもあるが、車内の方は利用者が団結して組織的な運動ができないということもあって、ほとんど顧みられることがない。皆さんがいつも利用する通勤路線でも、高架下や橋、トンネルなど、ここはうるさいよなぁというポイントが少なからずあるのではないだろうか。

 しかしノイズキャンセリングヘッドフォンなら、そんな環境でも小ボリュームで十分音楽が楽しめるのだ。普通のヘッドフォンよりも若干値は張るが、一度使ってみれば、世の中ってのはこんなににうるさいものだったんだと実感することだろう。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。



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[小寺信良, ITmedia]

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