News 2003年5月27日 10:10 PM 更新

NVIDIA、nForce3戦略に自信――小型デバイス向けチップ進出も計画?

NVIDIA幹部はZDNetの取材に答え、nForce3の普及戦略について強気の見通しを示した。またGPUの需要はどこにでもあるとし、小型デバイス向けのチップ進出も視野に入れていることを示唆した

 NVIDIAは約1カ月前、AMDのOpteronプロセッサの発表と同時にOpteron対応チップセット「nForce3 Professional」をアナウンスをした。

 nForce3 ProfessionalはnForce2シリーズなどとは異なり、GeForce MX系のグラフィックコアを内蔵しない。だが、その代わりに、ATA133対応のIDEコントローラやイーサネットコントローラ、PCIブリッジなどのI/Oコントローラ部、AGP 8xなど、PCを構築するために必要なほぼすべての機能を1チップに集積している。

 先日、米国で行われたElectronic Entertainment Expo 2003(E3 2003)会場でnForceファミリーのシニアプロダクトマネージャー、Scott Baker氏に、nForceファミリーに関して話をうかがうことができた。その内容から、nForce3、そして今後のnForceファミリーがどのように展開していくのか、展望してみよう。

1チップソリューションの強み

 nForce、nForce2では、Athlon向けチップセットの主流になるまでには至らなかった。それはAthlon向けチップセットのベンダーとして、NVIDIAが後発ベンダーであったことも大きく影響しているだろう。

 また台湾のマザーボードベンダーは、VIAやALi、SiSとの協業に慣れていた。しかしnForce3に関しては、幅広いパートナーの強いコミットを得ることができたという。「19のパートナー企業から、95モデルのマザーボードがOpteron用として登場する」(Baker氏)。

 Baker氏によると、台湾のボードベンダーとグラフィックスカードの協業を進めてきたことが、密なコミュニケーションとパートナーシップの強化に繋がり、nForceの事業に良い影響を与えているという。

 同氏はnForce3のアドバンテージについて、「nForce3の大きな特徴は、1チップのソリューションであることだ。Opteronにはメモリコントローラが内蔵されているため、チップセット側の負担が小さくなる。そこでわれわれはOpteron向けのnForceを1チップソリューションとした。最初の製品となるnForce3 Professinal 150は6月から7月にリリースされる。この製品はワークステーション向けに設計されたものだ」と話す。

 「nForce3 Professinal 150」には、前述したようにATA133、オーディオ、USB 2.0、HyperTransport、AGP 8xが統合されている。ただし、nForce2のMCP(Media & Communications Processor)で提供されていた、ハイエンドのマルチチャンネルオーディオ機能はサポートされない。

 Baker氏によると、OpteronをターゲットとしたnForce3 Professinalとは別に、コンシューマーをターゲットとしたチップでマルチチャンネルオーディオをサポートする見込みという。

 Baker氏は「高いパフォーマンス、信頼性、互換性、スタビリティを備え、統合されているデバイスに対して適用できるワンパッケージのユニファイドドライバを提供する。ワークステーション向けのハイエンドチップセットの場合、信頼性のあるユニファイドドライバが提供可能かどうかは非常に重要なポイントだ。1つのドライバでPCに必要なすべてのデバイスをサポートでき、デバイスごとに別々の複雑なドライババージョン管理を行う必要がない。信頼性があるプラットフォームとするためには不可欠」と、信頼性の高いプラットフォームであることを強調する。

AMDプラットフォームの50%を狙う

 また、年末には上位バージョンとなるnForce3 Professinal 250の出荷する計画だ。上位版の250が150と異なる点は、4ポートのシリアルATAを備えること。もちろん、従来からのATA133も2チャネル分内蔵する。さらにハードウェアのRAIDソリューションも提供される。

 IntelもシリアルATAをサポートする最新のチップセットでRAIDをサポートするが、専用BIOSとWindows用ドライバを用いたソフトウェアによるソリューションだ。nForce3に関してもソフトウェアではないのか?と確認したところ、Baker氏は「いやハードウェアによるサポートだ。またIntelはRAID 0と1しかサポートしていないが、われわれのRAIDソリューションは0、1に加えて0+1も利用できる」と答えた。

 また、ギガビットイーサネットコントローラも内蔵。1チップソリューションのため、ギガビットイーサネットサポートで問題となるバス帯域の問題もない。

 内蔵ギガビットイーサネットコントローラは、IPv6をサポートするほか、システム側のワークロードを減らすため、チェックサムや、TCP/IPプロトコルの一部をハードウェア側で負担する機能を持つなど、高速ネットワークを生かすためのさまざまな機能が組み込まれる。

 Baker氏はワークステーション市場でのNVIDIAには、大きな強みがあるという。同社がワークステーション向けに提供しているQuadroシリーズとの最適化を進めているためだ。QuadroシリーズはPCベースのワークステーション市場で80%近いシェアを誇っている。AMDプラットフォームでのシェア予想も強気だ。「AMDプラットフォームの50%を取れると考えている」(Baker氏)。

 他のAMD向けチップセットの多くは2チップソリューションであるため、コスト的にも実装面積の面でもnForce3は有利だが、その背景にはNVIDIAのAMDプラットフォームに対する強いコミットがある。

 他社はAMD以外のプラットフォームもサポートするため、I/Oコントローラ部を独立させ各チップセットで共用させる。すべてを1チップに統合して開発するのはコスト的に見て不利なからだ。しかしNVIDIAはIntelのバスライセンスを持たないこともあり、AMDのみにフォーカスすることができた。プラットフォームを1つに絞れるため、1チップソリューションを提供できたわけだ。

 さらに先の製品に関して、Baker氏は具体的な話はしなかったが、「Opteronはマルチプロセッサのサポートが非常に容易」と話しており、デュアルプロセッサ以上の製品も検討されているようだ。

 なおAthlon 64向けのコンシューマー向けnForce3も9月に投入する。こちらも具体的な機能については話さなかったが「MCPがサポートしていたサウンド関連の機能は入れなければならないと考えている。Dolby AC3やDTSのアクセラレーション、高解像のサウンドフォーマット対応などのニーズが存在することは十分に承知している」(Baker氏)。

 もっとも、nForce3シリーズの展開がOpteron向け、Athlon 64向けに一通りの製品をリリースして終わりというわけではないようだ。Baker氏は「来年のいつになるかはわからないが、Athlon 64がデスクトップPC市場でメインストリームの価格帯に降りてくれば、マーケットニーズとして統合グラフィックが必要になる。当然、われわれはそこでのマーケットリーダーを狙っている」と述べている。

将来はあらゆるデバイスに展開する?

 NVIDIAがnForce3にグラフィックコアを統合することができれば、当然ながらその先、モバイル向けの1チップソリューションという目も出てくるはずだ。Baker氏はnForce3のモバイル向けグラフィック統合型nForce3について次のように話す。

 「nForce3はフレキシブルに、さまざまなフォームファクタのPCに対応できる。しかし、モバイルPCはわれわれにとってまだ小さな市場だ。もちろん、考えていないわけではないが、今すぐというわけではない」(同氏)。

 nForce3だけでなく、今後のnForceファミリーの展開も気になるところだが、まずは6月中にnForce2のちょっとしたアップデートを計画しているという。

 またロングスパンでのnForceファミリーの展開について「今の世の中はデジタルデバイスであふれている。今後、PDAや携帯電話、あるいはもっと小さな腕時計のようなデバイスも含め、省電力性とパフォーマンススループットが必要なデバイスがどんどん増えてくるだろう。そして、ここがポイントだが、それらのデバイスすべての画面にピクセルが存在する。プログラマブルなピクセル処理を行えるGPUは、PC上の3Dレンダリングだけでなく、あらゆるデバイス上でさまざまな処理を行わせることが可能だ。われわれは5年、あるいは10年といった長期にわたるさまざまな計画がある。その中には省電力化、それにともなう小型化という方向も存在する」。Baker氏は同社のチップセット戦略におけるビジョンを、こう話した。



関連記事
▼ GPUがコンピューティングの主役になる?
NVIDIAの社長兼CEOのJen-Hsun Huang氏がWinHECで講演、今後10年でグラフィックプロセッサ(GPU)がCPUと並ぶコンピューティングの主役になるとブチ上げた

▼ NVIDIA、「NV35」に大きな期待
NVIDIAは5月12日の週に新グラフィックスチップの「NV35」を発表する。同社はこの新製品により今四半期12−18%の売上増を見込んでいる(ロイター)

▼ NVIDIA対ATI、GPU対決の勝者は“コンシューマー”
ATIとNVIDIAのGPUスピード競争は、今のところATIが1世代分リードしているが、NVIDIAにとってはさほどの痛手ではない。しかし真の勝者は革新を手に入れられるコンシューマーだ

▼ NVIDIA、「Quadro FX 500」発表

[本田雅一, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.