News 2003年6月5日 07:55 PM 更新

販売戦略とシンクロするPanasonicのブランド統一

「光る光る」のは東芝。「あっかるい」のはナショナル。30歳を過ぎた日本人なら、誰でもすぐに連想できるメーカーブランド。松下電器産業は企業ブランド名を「Panasonic」に統一すると発表したが、そこにはさらなる「V字回復」を目指す販売戦略がからんでいた

 松下電器産業は、先日発表した「Panasonicブランドへの統一」に関連した当社ブランド戦略のプレス向けセミナーを、6月5日パナソニックセンターで開催した。

 これまで松下電器産業は、メインブランドとして、家電(白物)系の「ナショナル」(National)と、 AV、デジタル系の「パナソニック」(Panasonic)を併用してきた。

 ここにきて、全世界的に「Panasonic」ブランドに統一し、グローバルブランドスローガン「ideas for life」を発表するなど、全世界で統一されたブランドイメージを積極的に展開する理由はどこにあるのか。


松下電器産業 代表取締役専務 戸田一雄氏。「全松下ブランド委員会」委員長として、ブランド戦略の指揮をとる

 一つは、PanasonicとNationalの二つに分散していたブランド(とそれに伴なう広告展開)コストを集中するため。「これからの企業資産は、製品などの有形資産のほかに無形資産の価値が向上していく。製品に強い商品力を持たせ、マーケティングを強力に展開できるブランド資産は、無形資産の中核として重要になる」(戸田氏)。

 ただし、日本国内ではNationalブランドを継続していく。これは、国内白物家電業界では、依然として圧倒的な認知力を持ち、ユーザーに多大なる信頼を与えているため。その位置付けは、Panasonicブランドの下に展開する「国内家電限定ブランド」。ハイエンドオーディオ機器限定ブランド「Technics」などと同じ扱いになる。


松下電器産業のロゴ変遷。Panasonicの採用でも昭和30年と、元号で表記すると意外と古くから使われているのが実感できる。ちなみにPanasonicの語源は「あまねく」の意味のPanと「音」のsonicの造語。そのこころは「松下電器産業の音を、あまねく世界中に」

 もう一つの理由が、「全世界同時発売・垂直立ち上げ」という新しいマーケティング戦略だ。従来の地域ごとに出荷スケジュールをずらして展開する手法では、後追いして登場する競合製品によって、売り上げと収益が奪われてしまう。この損失を防ぐために、競合製品が現れる前に、全世界で製品を出荷してしまうのが、垂直立ち上げの最も大きな目的だ。



従来のように段階的な出荷開始と比べ(上)、世界で同時に出荷を開始できれば、その累積売り上げはかなり拡大できる(下)。最近のように製品寿命が短い状況では、出荷時期を早められるメリットは大きい


世界同時出荷に対応した製品の開発スケジュール。準備は5か月前からスタート。製品の開発とともにマーケティング作業もスタートする。そのため、評価用サンプルの完成時期は出荷の4か月前に設定されている。撮影画像のチューニングにぎりぎりまで取られるデジカメにとって、このスケジュールは非常に苦しいだろう。全世界同時出荷によって初期不良リスクも大きくなるが「それを踏まえても、同時出荷の優位性は大きい」(戸田氏)

 今回の、ブランド戦略説明会では、松下電器産業が2003年に展開する販売戦略「V-II商品」も紹介された。  V商品活動は2002年度から「V-I商品」として行われているもの。ユニークな特徴、価格、デザインを重視し「技術がビジュアル化された」(戸田氏)製品を投入してきた。この活動は「88製品を投入し、シェアはPanasonicで3.3%、Nationalで1.7%伸びた」(戸田氏)と、昨年度の業績回復に貢献している。


Panasonicブランドで展開している製品の市場シェア推移を金額ベースで表したもの。DVカメラ、ステレオ、DVD関連機器の伸び率が目立つ。Panasonic全体としての伸び率は前年度比120%。ちなみに業界全体は103%


Nationalブランドで展開している製品の金額ベースの市場シェア推移。こちらも高いシェアを持つ製品があるが、その伸び率は前年度比で104%。業界全体が96%と下がっているのと比べたらまだ良い状態だが、それでもPanasonicと比べ、その伸びは鈍くなっている


製品シェア率の伸びを示す例として出てきた「SDカードのシェア推移」。昨年末から急激な伸びを示し、現在CFカードと並んでメモリカードのトップシェアを占めるまでに成長している、と松下電器産業は主張する

 松下電器産業は、2003年でもこの活動を「V-II商品」として継続していく。V-II商品の主要コンセプトは「ユビキタスネットワーク化の加速」「省エネなど、地球環境対応の促進」「デザインアイデンティティの確立」の3点。

 今回の説明で最も力を入れていたのが、デザインに関する部分。「商品特徴がひと目でわかるデザイン」(戸田氏)が「V-II商品」で最も重要視されている。デザインテイストもV-II商品で共通になるように、パナソニックデザイン社を中心に行われている。

 2003年度にV-II商品として投入されるのは約90製品。この活動で製品シェア率25%を目指すとしている。

 新しいブランド戦略に基づいた製品展開は今年の後半から本格的に開始、2004年の3月には全ラインアップで新しいPanasonicブランドの製品が投入される予定だ。

 なお、松下電器産業も参画している、他業種コラボレーションブランド「Will」については、これまでどおり製品展開を継続。松下電器産業からも新製品を投入する考えてあることを明らかにした。

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[長浜和也, ITmedia]

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