News:アンカーデスク 2003年6月6日 01:27 AM 更新

省エネとコンピュータのホットな関係
熱は部品寿命にも影響する(2/3)


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 これは、何もユーザーが読み書きするデータ部分だけに限らない。だから物理フォーマットしてから長時間を経た大容量ディスクでは超常磁気効果も意識し、あまり熱い状態で長時間ハードディスクを使うのは避けたほうがよさそうだ。

反強磁性結合メディアや垂直磁気記録で延命し、さらに高密度をめざす

 超常磁気効果問題は、物質の性質、すなわち物性に関わる問題であるだけに、どんな対策を講じてもなくなるわけではない。

 だが、記録層を多層化したAFC(Antiferromagnetically-Coupled:反強磁結合)メディアと呼ばれるディスクや、垂直磁気記録技術の導入によって、見かけ上の超常磁気限界サイズをさらに小さくすることは可能だ。

 最近の3.5インチハードディスクで120Gバイト以上の容量を持つものには、AFCメディアを使った製品も登場している。AFCメディアによって、400Gバイト程度(3.5インチドライブの場合)までは技術的にメドが立っているという。とはいえ、やはりハードディスクの温度には気を付けたほうが良いことは間違いない事実だ。

 PCの筐体内部の冷却では、CPUや電源だけでなく、エアフローをよく考えハードディスクの冷却にも効果があるように設計することが重要な要素なのだ。

システム全体の省エネが難しいわけ

 これまで見てきたように、PCの消費電力を下げる、つまり発熱を下げることは、性能の向上や信頼性という観点から、非常に重要なことだとわかったはずだ。もちろん、PCは環境負荷の低減という観点から、かなり早い段階から省エネについて具体的な製品作りが行われてはいた。

 その先鞭(せんべん)をつけたのが、1994年に日本アイ・ビー・エムから発表されたグリーンPCである。とはいえ、当時、省エネのために追加されたさまざまな仕組みのために、同じようなスペックの他のPCに比べ、価格が2倍ほどになってしまった。このことは、PCシステム全体の省エネには、特別な仕組みが必要なことを意味する。

 そこで、最初に提案されたのが、それぞれハードウェアメーカが独自に省エネ機能を搭載し、BIOSやOSを通じてその機能にアクセスするためのドライバソフトと専用の省エネ管理ソフトを用意するというAPM(Advanced Power Management)という仕組みだ。

 しかし、ハードウェアごとにドライバが異なるばかりか、省エネ管理ソフトによる効果の程度や機能(メニューなど)まで異なるため、必ずしも使い勝手の良いものではなかった。特に、サードパーティーの各種インタフェースカードや周辺装置などを組み合わせて使う際に問題を生じたり、省エネ効果が得られなくなったりという状況は、困った問題だったと言うしかない。

 例えば、システムをスタンバイ状態にして消費電力を下げるには、ハードディスクの回転を止め、液晶のバックライトを消灯するのはもちろん、CPU、メモリ、ビデオ回路なども省エネモードに切り替える。

 しかし、シリアルやパラレルポートなどレガシーな周辺インタフェースでは、電源をOFFにできない場合がある。プリンタがパラレルポートに接続されているとき、ポートの電源をOFFにするとAF(紙送り)やRST(初期化)の信号までもOFF(つまりゼロ)になってしまう。こうなるとプリンタによってはハードウェアタイミングの問題で、無駄な紙を1枚送ってしまうことがある。スタンバイからの復帰時に紙を送ってしまうプリンタもある。

 LANインタフェース(NIC)をスタンバイ状態のとき電源OFFにしてしまうと、サーバからのキープアライブなどの要求に応えなくなる。すると、セッションを切断したものとして処理されてしまうことがあるわけだ。

 回路的にも難しい問題がいくつも存在する。たとえば、ダイナミックメモリのように常に一定周期でリフレッシュ動作が必要なデバイスは、スタンバイ状態でもリフレッシュ動作を停止できない。そこで、メモリチップ内部で消費電力の少ないセルフリフレッシュ動作ができるメモリを使う必要がある。

システム全体の省エネを担うACPI

 東芝、Intel、Microsoftの3社が中心になって策定されたACPI(Advanced Configuration and Power Interface)は、APMの反省点を盛り込み、基本的にOSが統一的に電源管理を行えるようにした規格だ。

 OSが電源管理をすべて掌握するため、OSの知らないところでBIOS経由でアプリケーションが省エネモードを変更し、OSの設定と一致しない、といった不都合を生じない。OSがすべてを把握した上で、OSやすべてのアプリケーションの動作に対する適切な処置が可能になる。

 ACPIは単なる電源管理のための仕組みではない。なぜなら、省エネに必要なさまざまな仕組みをハードウェアで用意する必要があるため、かなり深いレベルでハードウェアの構成に関わってくる。

[宇野俊夫, ITmedia]

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