News 2003年6月10日 08:32 PM 更新

SARSの影響などで2003年PC市場はさらなる下方修正

IDCは2003年の全世界のPC出荷予想を再度下方修正した。台数ベースでは前年よりも伸びているが、金額ベースでは減少する。日本では台数ベースでも前年比マイナスだ。

 市場調査会社のIDCは、2003年のPC出荷の成長率を6月10日、再び下方修正した。景気の復調が遅いことと、アジア地域におけるSARSの影響を、その理由として挙げている。

 IDCによれば、2003年の全世界のPC出荷台数は1億4520万台で、6.3%の伸び。3月時点での予測では、6.9%だった。昨年12月には8.3%の伸びが予測されていたが、公共分野の需要落ち込みにより下方修正されていた

 「回復はしているが、あまりしっかりしたものではない」とIDCのクライアントコンピューティング担当副社長であるロジャー・ケイ氏。

 米国では公共分野が弱含みだが、コンシューマーの需要が上向いてきており、2003年の米国コンシューマー市場は10.8%の伸びが見込まれ、全世界の6.5%を上回る。一方、IDCでは2003年の後半には全世界の企業需要が伸びて6.2%になると予想しているが、米国での出荷の伸びは2.3%にとどまる見込みだ。

 企業向けPCの伸びは、企業が財務状況を心配して引き伸ばしてきたPCのアップグレードサイクルがようやくめぐってくるからだ。1990年代には、プロセッサや部品の技術が向上しユーザーの生産性を上げるため、3年ごとにPCインフラストラクチャをアップグレードをすべきだというのが一般的な考えだった。しかし、PCアップグレードサイクルの最後の大きなものはY2Kバグの時で、多くのビジネスマンは1999年か2000年に購入したPCで我慢している。

 「アップグレードしないという選択にはいくつかの理由がある。お金がかかること、いまあるPCでもけっこう動くことだ」とケイ氏。しかし、増大する従業員の生産性、上昇するメンテナンス費用などにより、企業も古いPCを永遠に使い続けるわけにはいかないと気づいてきた」と同氏。

 PCの入れ換えサイクルが言われなくなった理由としては、企業にPC購入を決意させるだけの、Y2Kのように大きなイベントがないことも挙げられる。このため、回復したとしてもそれは複数の四半期にわたって分散し、数字として現れにくくなるとケイ氏は推測する。

 世界規模で見ると、出荷台数は2000年に始まった経済不況の影響で被った失地を回復しようとしている。IDCの調べでは2000年には1億4010万台が出荷されたが、2001年には1億3460万台にまで落ち込んでいた。

 中国のSARSの影響は緩和されつつあるが、人々が家に閉じこもりがちになるので、コンシューマーの購入を減退させる要因となるとケイ氏は指摘する。SARS発生の副作用として、中国では店舗での購入からインターネット経由でのPC購入に動いているとケイ氏。

 西ヨーロッパの企業向けPCの出荷は2002年第4四半期の横ばい状況から、3.9%の伸びに転じているとIDCは述べている。しかし日本においてはPCのコンシューマー市場は低迷しており、日本のPC出荷台数は1.2%の減少となっていると同社は報告している。

 台数ベースでは弾みがつきつつあるが、売上高でみると、2003年は前年比マイナスであるとケイ氏。2003年に出荷されるPCの総売上高は前年から2.4%のマイナスと予測される。これは、PCの価格が引き続き下落しているからだとケイ氏は指摘する。

[Tom Krazit, IDG News Service]