News 2003年6月18日 06:10 AM 更新

通信会社はIP電話のことをもっと理解すべきだ

IP電話の利用が急増し、このビジネスに参入する企業も増えている。だが、この波にうまく同調できていないのが当の通信事業者だ。彼らのやるべきことはたくさんある。

 IP電話の前途の有望さについては、長年に渡って甘美な誘惑の歌声が聞かれてきた。米サンノゼのとあるネットワーク機器ベンダーからは、とりわけ熱狂的な賛美の声が聞こえていたが……。

 だが今や、この歌に和す声はますます増えている。そのうちの1社がMicrosoftだ。同社は来月、VoIPに対応したWindows CEをリリース(4月3日の記事参照)。また、同社内ではVoIPに関連した多数の取り組みが進められている。

 その上、興味深いことに、大企業におけるIP電話の採用は、拡大傾向にあるようだ。米Nemertes Researchが最近、約50人のIT管理者を対象に調査を行ったところ、IP電話の採用が進んでいるという明白な結果が得られた。IP電話を利用していると答えた回答者は80%以上、うち本格的に導入しているのは64%、試験導入は20%だった。

 レッドモンド(Microsoft)の人々に脱帽したいのは、彼らがまさに取り組むべき問題に焦点を当てていることだ。それはフロントエンド部分と中央部分の問題――エンタープライズアプリケーション、それからモバイルとの統合だ。

 さて次は、こうした本当の問題にあまり同調できていない人々――サービスプロバイダー――について話をしよう。AT&T、Equant、Infonet、MCI、Sprintなど、IP電話のブームにぱっと飛びついたプロバイダーには、改善できる点が少なからずある。

  • ROI(投資回収率)向上のシナリオを作り出すこと。サービスプロバイダーはいまだに、IP電話が提案する真の価値は、利用料を払わずに済ませられることにあるという観念に固執している。だが、その「利用料」なるものが、自社の売るサービスにかかるものである場合、そんなことがうまくいくわけがない。

     「ROIを調べたら、AT&Tの(IP電話に関する)提案は価格的に引き合わなかった。それは同社が自身の電話サービスと競合しているからだ。それに、同社が売り上げを減らしたいと思うわけがない」とある大手メーカーの通信ディレクターは語る。

  • マネージドサービスを強調し、提供する。別の大手メーカーのグローバル通信マネジャーは「(企業向けIP電話を)サービスとして通信会社から購入する方がいい」と話している。このようなビジネスを獲得するために、通信会社は大手機器ベンダーと協力すべきだ。それにより、プロバイダーが管理するIP電話サービスへの道が開ける。AT&Tは既にCisco、Avayaと提携しており、MCIも同様の取り組みを進めていると話している。

     第2に、これら企業はIT管理者のIP電話導入を支援するべきだ。IT管理者の3分の1以上が、音質が低いため、IP電話のさらなる導入をためらっていると話している。しかし、音質が低いのはほとんど実装上の問題であり、経験が乏しいVAR(付加価値再販業者)やインテグレータのせいで起きることが多いのだ。IT管理者には、通信会社が提供するような適正な支援が必要だ。

  • 統合されたモバイルソリューションを提供する。IT管理者が指摘するIP電話の最も重要なコストメリットは、モバイル通信を強化できる点だ。ここには、ワイヤレス通信の統合だけでなく、企業の音声(特に音声メール)ネットワークに接続したまま、シームレスに移動できる機能も含まれる。人々は現在、携帯電話をメインの電話として使うことでこれを回避しているが、そのようなアプローチでは企業の携帯電話コストは上昇し、利用できる機能も制限される。多くの企業が、携帯電話コストを下げると同時に、モバイル接続性を向上させられるチャンスに飛びつくだろう。

※筆者ジョナ・ティル・ジョンソンは独立系IT調査会社Nemertes Researchの最高調査責任者。連絡先はjohna@nemertes.com。

[Johna Till Johnson, IDG News Service]