News | 2003年6月26日 10:01 PM 更新 |
日本シーゲイトは6月26日、先日発表したノートPC向けHDD新製品「Momentus」の製品説明会を東京の同社本社で行った。説明会では、代表取締役社長の小林剛氏が自ら、ノートPC向けHDDへ再参入する理由や、Momentusの優位性を説明。ただし、今後の具体的な予定や他社HDDベンダーの動向については終始“静音”だった。
小林氏の説明によると、SeagateがノートPC向けHDD市場に参入する理由は、ひとえにノートPCビジネスの成長性に注目しているため。IDCが2003年6月に発表したデータを基に「ノートPC市場は2003年に3300万台、2004年には5000万台の規模に成長する」と予測、その期待の高さのほどを明らかにした。
同氏はまた、SeagateのようなHDD専業メーカーがノートPC向けにHDDを供給することのメリットについても強調した。現在、ノートPC向け2.5インチHDDの大半は、ノートPCメーカーによって製造されている。このため、自社でHDDを生産していないノートPCメーカーでは「入手(の確実)性の点で問題があった」(同氏)からだ。実際、同社が参入したことは「特に米国や台湾などの海外ノートPCメーカーから歓迎されている」という。
とはいえ、市場への急速な浸透はさすがに難しいと考えているようで、初年度のビジネス目標はシェア10%と、控えめなラインを設定。発表リリースでは、Hewlett-PackardのノートPCに採用されることを明らかにしていたが、搭載製品の具体的な出荷時期についてはコメントしなかった。他メーカーの採用予定などについても「ほかのメーカーが関係することについては、この場ではお話できない」(小林氏)と、一切明らかにしなかった。
今回投入されるMomentusは、容量20Gバイトと40Gバイトの2製品。どちらも標準仕様で2Mバイトのキャッシュを実装しているが、キャッシュを8Mバイトにした拡張仕様の製品もラインアップされている。実装されているプラッタは1枚。20Gバイト製品は片面をヘッド1本、40Gバイトの製品は両面をヘッド2本でアクセスする。
Momentusの主な仕様
インタフェース | Ultra ATA/100 |
平均シーク時間 | 10ミリ秒 |
回転速度 | 5400rpm |
シーク時消費電力 | 2.4W |
読み出し書き込み時消費電力 | 2.4W |
アイドル時消費電力 | 0.97W |
スタンバイ時消費電力 | 0.36W |
製品型番 | 容量 | キャッシュ容量 |
ST94011A | 40GB | 2MB |
ST94811A | 40GB | 8MB |
ST92011A | 20GB | 2MB |
ST92811A | 40GB | 8MB |
最大の特徴は回転速度が5400rpmと、ノートPC向けHDDとしては高速でありながら、消費電力を4200rpmの製品並みに抑えたこと。まず高速になったことについては、Seagateが示した資料によると、OSの起動処理からアプリケーション起動までの時間、OS終了処理、大容量ファイルのコピーなどで、24〜47%程度の改善が見られたという。
一方、省電力性では、市場に出ている主なノートPC、8製品について、標準搭載の4200rpmのHDDを使った場合と、Momentusに換装した場合のバッテリー駆動時間で比較している。それによると、4機種において横ばい、もしくはむしろ持続時間が長くなり、4機種で短くなる結果となった。ただし、短くなった場合でも10分以内にとどまっているという。
省電力設計には発熱を抑える効果もある。Seagateの測定したデータによると、他社製4200rpmHDDと比べ、6℃も筐体内温度が下がったとしている。最近はCPU、チップセット、ビデオチップ、そしてメモリなど、パーツの発熱量は増加する一方。筐体サイズの制約から効果的な冷却が行えないノートPCでは、特に深刻な問題となっているだけに、これは大きな売り物になるだろう。
Momentusのもう一つの特徴としてSeagateがアピールするのが静音性だ。とくにヘッドの退避時に発生する衝撃音を抑えるために、「QuietStepランプモード」という新しく開発した技術を採用している。これは、HDDがアイドルモードになってヘッドが退避エリアに移動するとき、従来高速で退避していたために衝撃音が発生し、それがユーザーに対して不愉快な騒音となって認識されていた。QuiteStepランプモードでは、ヘッドの退避スピードをコントロールして問題の衝撃音を抑えている。
小林氏との質疑応答では、すでにノートPC向けHDDで登場している、他社製5400rpm対応製品や容量60Gバイト製品との差別化について質問が出たが、小林氏は「今回の説明会はMomentusの説明会であって他社製品については言及しない」と返答。Momentusの60Gバイト対応や、Serial ATA対応の予定についてもコメントを避けた。また、先日発表されたWestern DigitalのノートPC向けHDD市場への参入(6月23日の記事)についても「特に情報をもっていないので、現時点ではコメントできない」との返事だった。
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[長浜和也, ITmedia]
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