News 2003年7月4日 01:42 AM 更新

任天堂が求める“次期ゲームボーイ”向けFPDの性能

ロングセラーを続けるゲームボーイシリーズ。人気を下支えしているのが優秀で安価なハードウェアだ。それだけに、携帯ゲーム機のキーパーツであるフラットパネルディスプレイ(FPD)に対する任天堂の目は厳しい。同社開発者が、携帯ゲーム機向けFPDの同社採用基準と、次世代機に求めるFPDの性能について語った。

 東京ビッグサイトで開催している「フラットパネルディスプレイ製造技術展」の技術セミナーで、任天堂開発技術部の喜友名毅氏が、同社における携帯ゲーム機向けFPDの採用基準と、次世代機に求めるFPDの性能について語った。同社の開発者がセミナーなど表舞台に立つことは非常に珍しいことだけに、今回のセミナーには多くのFPD関係者が集まった。

 1989年4月に初代モデルが登場したゲームボーイシリーズは、低価格なハードウェアと良質なソフトウェア群がファミコン世代の心をつかみ、子供だけでなく大人にもファン層を広げるなど幅広いユーザーが支持。2002年末には、全世界の累計出荷台数が1億5000万台を突破するなど“携帯ゲーム機のスタンダード”としての確固たる地位を築き上げた。


初代ゲームボーイ(左)と、最新のゲームボーイアドバンスSP(右)

 これまで携帯ゲーム機市場には、さまざまなメーカーが挑戦してきたが、いずれも任天堂の牙城を崩すことはできず、撤退を余儀なくされていた。ゲームボーイシリーズがこれほどのヒット商品になった理由はいろいろあるだろうが、その大きな要因の1つに「優秀で安価なハードウェア」があるのは間違いない。

 ハードウェアのなかでもキーとなるパーツが、携帯ゲーム機で快適にゲームを楽しむのに欠かせない「フラットパネルディスプレイ(FPD)」だ。ゲームボーイシリーズのハードウェアは、圧倒的なシェアに慢心することなく、下位互換性をしっかりと確保しながら小型化、カラー化、高機能化など進化を続けてきた。そして本体のリニューアルとともに、FPDも着実に機能アップを図っている。

 ゲームボーイシリーズに採用されたFPDの変遷は以下の通りだ。

ゲーム機本体ゲームボーイゲームボーイポケットゲームボーイカラーゲームボーイアドバンスゲームボーイアドバンスSP
発売時期1989年4月1996年7月1998年10月2001年3月2003年2月
価格1万2500円6800円8900円9800円1万2500円
特徴パッシブマトリックスSTNパッシブマトリックスFSTNアクティブマトリックス反射型カラーTFTアクティブマトリックス反射型カラーTFTアクティブマトリックス反射型カラーTFT(フロントライト)
画面解像度160×144(2万3040画素)160(RGB)×144(6万9120画素)240(RGB)×160(11万5200画素)
画面サイズ2.45インチ2.51インチ2.3インチ2.9インチ
階調/色数モノクロ4階調モノクロ4階調カラー3万2000色(26万色)
FPD消費電力typ.66mWtyp.64mWtyp.26mWtyp.43→14mWtyp.71mW

 「STNを使った初代機では黄色がかった画面表示だったが、二代目ではFSTNの採用で白黒がくっきり表示できるようになった。1998年10月に発売したゲームボーイカラー以降のカラー対応機は、VRAM性能の上限からスペック上では3万2000色となっているが、FPDの性能自体は26万色を表示可能なものを採用している」(喜友名氏)

 家の中でプレイする家庭用ゲーム機と違い、さまざまな場所に持ち歩く携帯ゲーム機では、FPDの採用基準も独特のものがあるようだ。

 喜友名氏は、携帯ゲーム機向けFPDへの要求事項として「表示性能(明るくきれいに)」「電気的性能」「信頼性(壊れにくい)」「柔軟な生産対応」「価格」の5項目を挙げる。

 「子供は、ゲーム機を精密機器としてではなく、オモチャとして扱うため、PDAなどでは考えられない状態になっていることが多い。例えば信頼性では、大人が立った高さからコンクリート上のプラスチックタイルに合計10回落とす耐落下衝撃テストや、大人が誤って踏みつけたケースを想定した耐荷重テストを実施。また、85度前後の場所に24時間放置しても動作に異常がないこと、自転車の前カゴや荷台に置いて砂利道や段差を走行しても支障がないことなどをFPDの要求事項に挙げている」(喜友名氏)。

携帯ゲーム機に高解像度FPDはマイナス要素

 同社携帯ゲーム機の画面解像度は、初代ゲームボーイシリーズが160×144ピクセル、ゲームボーイアドバンス(GBA)が240×160ピクセルと、あまり高解像度なパネルを採用していない。その理由について喜友名氏は「数値上のスペックよりも、携帯ゲーム機の表示デバイスとしての“見た目”を重視した。現行機種(GBA)の解像度は、携帯ゲーム機としてのサイズとコスト面を考慮した上での最適解」と語る。

 子供の手で持てる携帯性を考えると、FPDサイズは2.5〜3インチ前後にしなければいけない。このサイズでQVGA(320×200ピクセル)などの高解像度パネルはコスト高につながってしまう。GBAでは表示ドライバも専用設計ではなく汎用品を使用してコスト削減を行っている。喜友名氏によると、GBAの240×160ピクセルという解像度は、家庭用TVゲームとのデータ互換性を考慮しただけでなく、入手しやすかった表示ドライバが88ドット対応だったために、解像度も80の倍数になったという。

 「解像度に関しては、フォントの視認性も重視した。やみくもに解像度を上げても、FPDサイズが大きくならなければ文字が見づらくなるだけ。一方、フォントを大きくするとデータ量も増えてしまう。また、高解像度のゲームソフトは開発にかかる手間も大きい。グラフィックエンジンも高い性能が要求されるほか、画素数が増えると消費電力も増える。高解像度化は携帯ゲーム機にはマイナス面が多い」(喜友名氏)

表示性能は“見た目”重視

 コントラスト、輝度、色再現性など解像度以外でも、同社規定のスペックは存在するが、喜友名氏は「要求仕様上の数値は参考程度。携帯ゲーム機向けのFPDは“見た目”がすべて」と語る。

 「数値よりも、むしろ“黒がしっかり沈んだ”コントラストとか“鮮やかな”色再現性といった、人間の目で実際に見た状態を重視している。逆に低いスペックでも、見た目で問題がなければかまわない。例えば、現行機種のFPDの色再現性はNTSC比で10%と低い数値だが、ユーザーからの不満の声はない」(喜友名氏)

 ライティングの輝度に関しても、さまざまな明るさの環境下でも暗いと感じないことが重視され、導光板の輝度むらなども気にならない範囲であれば採用していくなど、あくまでも見た目を重視。現行機種でも、トーンカーブは人間の視覚特性上でリニアに感じるようにセッティングされており、実際の数値上ではリニアになっていないという。

次世代ゲームボーイは300×200ピクセルで26万色表示?

 このような判断基準から、次期ゲームボーイに求める表示性能を以下のように定義しているという。

次期ゲームボーイFPD
画面解像度300×(RGB)×200(18万画素)程度
色数カラー26万色以上
コントラスト20以上
色再現性NTSC比20%以上
ライティング輝度(フロントライト型)20カンデラ/平方メートル以上
ライティング輝度(バックライト型)30カンデラ/平方メートル以上
FPD消費電力typ.70mW前後

 だが、この数値も「あくまで参考程度」(喜友名氏)で、見た目重視という方針は、次世代機のFPDでも変わらないという。

有機EL搭載ゲームボーイの可能性は?

 FPDの種類は、同社が求める性能やコスト面から当面は液晶ディスプレイが採用される見込みだが、次世代ディスプレイとして話題の「有機EL」の動向にも注目しているようだ。

 「自発光でライティングの必要がなく、高画質という点を評価している。薄型で軽量なのも携帯ゲーム向き。寿命の問題も解決されつつあるほか、将来的にはコスト面でもLCDと同程度になるだろう。問題は、外光に弱い点。太陽下で見れるだけの十分な輝度を求めると、消費電力と寿命に影響するのではというのが懸念材料。また、生産性でも不安が残る。現時点では採用できる段階ではないが、動向には注視していきたい」(喜友名氏)

関連リンク
▼ 任天堂
▼ フラットパネルディスプレイ製造技術展

[西坂真人, ITmedia]

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