News 2003年7月8日 09:05 PM 更新

まずは経験者から普及を目指すWeb会議システム

台湾で終息宣言が出されてSARS騒ぎも一段落。この騒動で一躍注目を集めたのがWeb会議システムだ。でも、画面に向かって話し掛けるのがとっても恥ずかしい日本人にどうやって広めたらいいのか、米国のトップベンダーもずいぶん頭を痛めているようだ。

 NTT-MEは7月8日、遠隔地間Web会議に利用できるASPサービスの新バージョン「TOCSR」Ver.5.0を発表した。サービスの提供は7月10日から開始する。

 利用料金には定額課金制と従量課金制の二種類が用意されている。定額課金制では初期費用19万5000円、利用料金としてWeb会議利用料が1万6600円/月(スタンダードタイプ・1ライセンス)、インターネット電話利用料金が利用者1人ごとに1分あたり5円。

 従量課金制では初期費用1万円、利用料金としてWeb会議利用料が利用者1人ごとに1分あたり38円、インターネット電話利用料金が利用者1人ごとに1分あたり5円かかる(従量制では利用の有無に限らず月額ミニマムチャージ料金3000円が必要になる)。

 TOCSRは、NTT-MEが進めているブランド戦略「ME Global WAVE」を構成するサービスの一つだ。ME Global WAVEとは、同社の国際マルチメディアシステム事業を「CTI&リッチメディアコミュニケーションシステム」「インターネット&セキュリティシステム」「光ブロードバンド&超高速光IPネットワークシステム」「オプト・ナノエレクトロニクス」といった4種類の基幹技術を融合利用して開発した製品によって市場に展開していくビジネス戦略である。

 TOCSRを開発したWebExは、WorldWideにおけるWeb会議システムシェアの60%を占め、米国では標準的なソフトウェアとして認識されている。日本では2年前よりNTT-MEと提携して販売を開始した。今回の発表にあわせて来日した、Webexの開発責任者であるDan Gielda氏は、今後、日本におけるビジネスを拡大するために、人員を拡張する予定であることを明らかにした。


WebexのBusiness Development Telecom Director Dan Gielda氏

 従来、販売されてきたTOCSR Ver.4.0から、Web会議システムにリッチメディアコンテンツを利用できる機能が追加されたのが、Ver.5.0の最も大きな変更点だ。リッチメディアコンテンツとして対応するのは、MPEG-4形式のビデオストリーミングやShockWaveで作成したアニメーションムービー、3Dオブジェクトなど。これらのデータをMicrosoftのPowerPointに貼り付けた「UCFフォーマット」(Universal Communications Format)として、Web会議参加者の間で共有する。


TOCSR Ver.5.0のWeb会議画面。左に大きく表示されているのがPowerPointで作成された共有ドキュメント画面。このデータはUCFフォーマットというWebexの独自ファイル形式になっており、ShockWaveアニメや、サウンド、動画を添付できる。Ver.5.0では、共有ドキュメント画面にタグがつけられ、複数のデータを切り替えて利用できるようになった

 リッチコンテンツへの対応以外にも、Ver.5.0で新たに加えられた機能として、Microsoft Outlookと連動したスケジュールデータの共有化や、対応OSとしてLinixとPalm OSが追加されたことが挙げられる。Palm OSに対応したことで、PDAでもWeb会議に参加できるようになる。ただし、テキストベースでミーティングが可能であるものの、ドキュメント共有機能はほとんどサポートされていないなど、サポートされる機能はかなり限定されるので注意が必要だ。


発表会では、NTT-MEの土元洋一郎氏(NTT-ME グローバルソリューションASPサービスカンパニー カンパニー長)によって、Webex社のメルボルン事業所と東京にあるNTT-ME事業所を結んだWeb会議のデモンストレーションが行われた。画面右にはメルボルンからライブカメラの画像が表示され、ドキュメント共有画面ではホワイトボード機能で記入されたマーカーが見える

 TOCSRのネットワーク構成は、会議の参加者がインターネットを介してWebExとNTT-MEが設置したミーティングセンターサーバにアクセスして、データを共有するようになる。自前で会議システム用のインフラを構築する必要がないので、簡単に導入できるメリットがある。また、インターネットにアクセスできる環境さえ用意できれば、どこからでもWeb会議に参加することも可能だ。


TOCSRのネットワーク構成。動画など比較的重いデータが使えるTOCSRだが、米国では穴六モデルを使ってアクセスするユーザーが多いため、56Kbps程度のスループットでも実用的なパフォーマンスが出せるようになっている

 先行してテレビ/電話会議システムが普及している欧米では、それほど抵抗なく利用されているが、日本では、会議にPCを持ち込んでドキュメントを共有することすら一般的とは言えない状況だ。画面に向かって話し掛けることに心理的抵抗を感じるユーザーも少なくない。このような日本において、リッチコンテンツを使ったWeb会議システムの市場は受け入れられるのだろうか。

 この疑問に対して、WebexのDan氏もNTT-MEの土元氏も、この問題が日本におけるビジネスにおいて、一番の障害であることを認めた上で、「米国でWeb会議システムを経験したユーザーは、そのメリットを知っているので日本でも導入しようとする」(Dan氏)「まずは、今年度中にNTTグループとその周辺ユーザーに普及させていくことを目指していく」(土元氏)と、Web会議をすでに体験していて、抵抗を感じないユーザー層から徐々に拡大していく方針を明らかにした。

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[長浜和也, ITmedia]

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