News 2003年7月15日 09:39 PM 更新

L3キャッシュXeonでワークステーションセグメントを強化するインテル

Pentium 4の性能向上、Itanium 2の本格普及でなんとなく印象が薄くなりつつあるXeon。4wayサポートのXeon MPはいいとして、正式サポートがデュアルのみのXeonはどこに行くのか。インテルの回答は「キャッシュ増強で既存ワークステーションの延命」にあるようだ。

 インテルは7月15日、Xeonの最高クロックとなるXeon/3.06GHzに1MバイトのL3キャッシュを拡張した製品を発表した。すでに出荷は開始されており、価格は1000個ロット出荷時で8万1470円。

 インテルのワークステーション/サーバ向けCPUには、Itanium 2、Xeon MP、Xeonと3つのラインナップが用意されており、現在でもいささか混乱気味であるが、加えてFSB 800MHzを実現したPentium 4など、パフォーマンスデスクトップPC向けCPUの高性能化や、まもなく発表される予定の低電圧版Itanium 2も加わるなど、それぞれのポジショニングが非常に分かりにくい状況だ。

 インテルもこの状況をよく理解しているらしく、今回の発表会では、Xeon/3.06GHzそのものの説明に先立って、エンタープライズ・プラットホーム向けCPUのポジショニングについて、改めて説明が行われた。それによると、今回発表されるXeon/3.06GHzとこれから発表される低電圧版Itanium 2は、ともに「フロンド・エンド」というカテゴリーに含まれることになっている。


ワークステーション/サーバ向けCPUの市場であるエンタープライズプラットフォームのセグメント。L3キャッシュ1Mバイト版Xeon/3.06GHzはワークステーション向けハイエンドCPUという位置付けになる

 フロンド・エンドカテゴリーは、主にHPCなどの高性能ワークステーション、もしくは低負荷のWebサーバとして使われることを想定している。そのなかで、低電圧版Itanium 2は64ビットコンピューティングを求めるユーザーを、Xeon/3.06GHzは従来のワークステーションシステムでさらにパフォーマンスを向上させたいユーザーをそれぞれターゲットにするのが、インテルの考えである。

 発表会の説明の中では、はっきりと名称を述べなかったものの、「ほかのベンダーのように、一つのプロダクツで、すべてのターゲットをカバーするのではなく、このようにセグメントを明確に分けて、それぞれに最も適したCPUを用意している」のがインテルCPU戦略の特徴であることを強調していた。

 既存ワークステーションのパワーアップも想定しているXeon/3.06GHzは、1MバイトのL3が追加されたほかは、ハイパースレッディング・テクノロジーやFSB 533MHzのサポートなど、従来のXeon/2.80GHzとほとんど同じ仕様になっている。対応するチップセットもE7501とE7505と、こちらもFSB 533MHzのXeon/2.80GHzと同じだ。


L3キャッシュ1Mバイト版Xeon/3.06GHzの主な仕様。FSBクロックも対応チップセットもサポートする拡張命令もXeon/2.80GHzとほとんど同じ。ただし、TDPは87Wと512KバイトL2キャッシュ版Xeon/3.06GHzと比べやや高めになっている

 一方で従来製品と最も異なるのが1MバイトのL3キャッシュの存在だ。インテルの評価では512KバイトのL2キャッシュのみを実装した同クロックXeonと比較して、10〜15%程度のパフォーマンス向上が見られたとしている。


ワークステーションとしてのパフォーマンスを比較するため、Ansys 7.0とLinpack、Lightwave3D 7.5でベンチを測定。数値はXeon/2GHzとの相対値。紫のバーはL2キャッシュ512Kバイト版Xeon/3.06GHz、緑のバーはL3キャッシュ1Mバイト版Xeon/3.06GHz。L3キャッシュのおかげで10〜30%の性能向上が見られる


こちらはWebサーバとしてのパフォーマンスをJavaアプリの動作で測定するSPECjbb2000と、サーバスループットを測定するWebBenchで比較する。値は相対値だが基準になっているのはXeon/2.80GHzであるのに注意。こちらの結果も10〜15%の性能向上が見られる

 フロンド・エンドセグメントにおいて、よりパフォーマンスの高いCPUを求めるユーザーの声に応えるべく登場した今回のXeon/3.06GHzであるが、当然、Pentium 4ですでに実現しているFSB 800MHz対応、さらにDDR 400をサポートするXeon対応チップセットの登場という組み合わせも考えられる。インテルはこの質問に対して、もちろん準備はしているものの、その登場時期は現時点では明らかにできないと回答した。


発表会会場には、Xeon/3.06GHzをデュアル構成にしたデモマシンが用意されていた。起動画面にはL2キャッシュ512Kバイトに続いてL3キャッシュが1Mバイト認識されている


きょうの発表に合わせてPCベンダーからL3キャッシュ1Mバイト版Xeon/3.06GHzを搭載した製品がリリースされている。会場には日本コンピューティングシステム、ぷらっとホーム、プロサイドのデモ機が展示された。インテルが配布した資料にも国内でリリースした11社が名を連ねていたが、ショップ系ベンダーがほとんどだったあたり、Optironの発表会とよく似ていると思ってしまったが、考えすぎだろうか

関連記事
▼ Xeon/3.06GHz、1Mキャッシュ追加で16%性能向上
▼ 米Intel、1Mバイトの3次キャッシュを搭載したXeonを発表

関連リンク
▼ インテル

[長浜和也, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.