News 2003年7月23日 09:02 PM 更新

デジタル写真の新たな表現方法――ハイパーフォトを実現するPhotoWalker登場(1/3)

デジカメやカメラ付き携帯電話の普及により、日々大量に生み出され続けるデジタル写真。それらにストーリー性やテーマ性、空間性を与えて再編することにより、新たな写真表現として昇華できるのがハイパーフォトの概念だ。ハイパーフォトを実現するユニークなフリーデジタル写真ソフト「PhotoWalker」を紹介しよう。

記憶の中を歩いている感覚

 かつて写真は、しばしば決定的な瞬間を記録するものと考えられてきた。しかしその一方で、真に決定的な瞬間にカメラを構えることなどできないものであり、実はそこに写されているものは、決定的な瞬間を再現したもの(ヤラセ)か、作り込んだ決定瞬間(アート)か、あるいは決定的になり得たかもしれない写真(ポートレート)でしかない、という考え方もできる。

 誰もいないところで石が落ちたときに落ちた石の音はするのか、という古典的な問いがあるが、写真にも似たところがある。写真に撮られなかった瞬間は、本当にあったことなのかどうか。写真が強烈な印象を与えれば与えるほど、撮られなかった瞬間が忘れ去られていく可能性もある。

 記憶の起爆剤という位置付けであらためて写真を見てみると、写真は記憶を想起させる“きっかけ”となっていることがわかる。思い出の写真を見ると、そのときに見た周りの風景や話した会話の内容が蘇ってくる。しかしそれは、実際にあったこととは微妙に異なる、再構成された新しい世界だ。記憶はいつも新しく作られる。


古いアルバムの写真は、思い出を作り出すきっかけとなる

 「PhotoWalker」という、これまでのデジタル写真ではあまり見かけることのない表現方法を採用したソフトがフリーソフトとして配布されている。写真の表示・閲覧ソフトではスライドショー系が多いが、PhotoWalkerは独特だ。

 PhotoWalkerは、写真自体をリンクする「ハイパーフォト」という概念に基づいている。リンクをたどりながら写真を見ていくことができるほか、空間を移動しているかのようなウォークスルー表現が可能だ。写真間の透明度を調整することにより、次の写真をぼおーっと半透明で浮かび上がらせることもできる。

 あらゆる意味で、デジタル写真の表現方法は萌芽期にある。PhotoWalkerとハイパーフォトは、コラージュや時間的・空間的な要素を取り入れた新たな楽しみ方をデジタル写真に付加するだろう。それは、例えて言えば、記憶の中を歩いているような感覚である。


思い出の写真を取り込むことで、新たな記憶を作り出す作品ができていく

STAMPからPhotoWalkerへ

 PhotoWalkerの原型である「STAMP」は、2001年末にWISSというインタフェースの学会で公開され、発表賞を受賞している。作者は、京都大学COE研究員の田中浩也工学博士、東京大学空間情報科学研究センターの有川正俊助教授、東京大学大学院工学系研究科の柴崎亮介教授のグループだ。

 PhotoWalkerは、同じ被写体が写っている写真と写真をモーフィングでつなぐことによって、あたかも空間を歩いているかのような感覚にさせる新しい写真表現のツールである。動画は不要な要素をたくさんもっている(逆にリッチだとも言えるが)のに対し、PhotoWalkerでは決定的な1シーン1シーンをモーフィングでつなぐため、まるで記憶を再現しているような、あるいは夢を見ているかような、不思議な感覚になる。事実、実際に歩いているときも、周りの風景はこんな風に流れていくものである。じっくりと見ているとき以外は。

 田中博士は、「デビッド・ホックニーの『Moving Focus』などのフォトコラージュがSTAMPの発想の原点にあった」と話す。Moving Focusは、冬と秋に撮影した同じ場所の写真をコラージュにすることで、右から左に時間が流れるように空間と時間を同時に表現した作品である。また、田中博士は建築系の空間情報を専攻していたため、建築物の空間をSTAMPで表現することも狙っていたという。

 デジタルの世界全体で見ても、写真と写真を直接リンクするのはこれまでにない表現であった。正確に言えば、表現としてはすでにあったが、それを簡単に作り出すことは難しかった。SF映画などでよく使われる、写真の一部がクローズアップして関連する写真が出てくるという未来的なイメージをよりリアルに表現できるのが、このSTAMP/PhotoWalkerなのだ。


WISS2001でのSTAMPのプレゼンテーション。写真と写真をつないでいく過程がデモされた


写真と写真は奥行きを持つようにつながれる

[美崎薫, ITmedia]

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